第24話


 「かまわんじゃろう? なあ、レイとやら」


 「・・・わかりました」


 「レイ⁉」


 驚くメッシーナに礼二は去り際、耳打ちする。


 「危ないと思ったら、左手で指をならせ」


 「・・・わかったわ」


 「ああ、気をつけてな」


 礼二は2人から離れ、飲み物をとると、ベランダに向かった。ベランダの端に寄りかかりながら、飲み物を揺らした。


 (よし、ここからならぎりぎり直線で見える)


 ガラスに阻まれているものの、かすかな隙間から礼二にはメッシーナとバン・アレン卿が見えていた。


 (これまでの鍛錬で見つけたスコーピオンの能力が使えるな)


 礼二が見つけた能力は二つ。一つは作れる毒の効果は大体指定できること。もう一つは、毒爪は飛ばせるということだ。


 (合図があったら、筋肉を膠着させる毒爪を飛ばして、打ち込む。そうすれば死んだ弁慶みたいなもんだ)


 礼二が左手の人差し指にだけ、毒爪を展開する。と、同時に3人ほどの貴婦人が近づいてきた。3人とも金をちりばめた服装に厚化粧だ。


 「ねえ、あなたひとり?」


 「いえ、人を待っておりまして」

 

 礼二は視界からメッシーナをはずさないように答えた。全員似たような顔立ちをおしている。近づかれると、香水の匂いがきつく漂った。


 「なら、私たちとお話ししてくださらない?」


 「お話、ですか?」


 「ええ、あなたすごく好みよ。ねえ、2人とも」


 「「はい。姉さま」」


 「恐縮でございます」


 よくよく見てみると、アルカードの妹たちだった。恰幅がいいところなんかはそっくりだ。


 (めんどくさいやつらに囲まれたな。さて、どうしたんものか)


 --------------------------その頃、ホール内


 「それでお話とはなんですか、バン・アレン卿」


 「甥のアルカードのことじゃよ。聞けばお主、プロポーズを断ったそうじゃな」


 アレン卿の目が細くなる。メッシーナは不気味に思いながらも、しっかり目を見ながら答えた。

 

 「はい。私にその意思はございませんから」


 「ほっほっほっほっほ、正直じゃのう。しかしそれではあまりにあの子が不憫でな」


 メッシーナは不気味さが増したアレン卿から後ずさり、左手を持ち上げた。


 「何をするつもりかな、殿下。私はこの王国の魔法師団において監督を務めるほどの魔法師じゃぞ? お主に何ができるのかな?」


 「あなたこそ、何をしようとなさっているのですか」


 「そんなに警戒せずともよかろう。ちと、洗脳するだけじゃて」


 パチン!


 その瞬間、メッシーナの指が鳴った。


 ※次回更新 4月25日 0:00

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