第23話


 「緊張する?」


 「そりゃ、初めての体験だからな。立食会で良かったよ。マナーは重視されない」


 「そうね。私もこっちのほうが好みだわ」


 ホールにはすでに大勢の貴族が勢ぞろいしていた。皆、派手な服ばかり着ている。


 ちなみに礼二は、黒を基調としたスーツにネクタイをしている。カフスやネクタイピンのおかげか、学生感は消えていた。褐色の髪は一応よくわからない整髪料でセットしてある。


 対して、メッシーナは白を基調としたドレスで、飾りも控えめだ。背中にまで届く青い髪を編み込んでいる。


 (確かに、惚れるのもうなずける・・・)


 すると、ステージ上に国王らしき人物が現れた。


 「皆さん、ようこそおいでくださいました。ヘルス王国国王、シラ・ド・ヘルスです。今宵はわが第一王子、アルカードの誕生会でございます。どうぞ、心ゆくまでお楽しみください」

 

 (なんだ、結構いい人っぽいじゃないか)


 「なあ、メッシーナ。あの人、本当にあの王子の父親か?」


 礼二がメッシーナに耳打ちすると、メッシーナが残念そうにうなずいた。


 「そうなのよ。父親が立派すぎると、子供は悪くなるとはよく言ったものだわ」


 「確かに」


 挨拶はまだ続くらしく、今度はアルカードが出てきた。茶色のスーツに青いネクタイをしめている。


 「なんか、イメージと違うな」


 「ああ、前回は全身金ぴかだったから、似合わないって言ってやったのよ」


 礼二は少し、アルカードに同情した。


 (惚れた相手にそれを言われるのはきつすぎる・・・)


 アルカードのガチガチのあいさつの後、立食会が始まった。予想通り、メッシーナの周りには、入れ代わり立ち代わり人が来る。


 ご飯を食べる暇などない。2人とも記憶力を総動員して、受け答えしていた。


 「お久しぶりですな、メッシーナ・フォン・グロッグ殿下」


 白いひげを生やした、老人が近づいてきた。


 「ええ、お久しぶりです」


 (バン・アレン卿だ。アルカードの叔父にあたる人)


 礼二が耳打ちする。


 「バン・アレン卿。アルカードさまはご立派になられましたね」


 「ええ、ええ。それはもう。ところで後ろの御仁はどなたかな?」


 老人の目が荒んだものになる。礼二はその目を無表情に見返した。


 「はい。私のパートナーのレイです。護衛役でもあります」

 

 「なるほど、なるほど。護衛の方でしたか。いや、アルカードが気にしておったものでな」


 「そうでしたか」


 「ついては2人で話がしたいのじゃが、よろしいかな?」


 「・・・彼をそばから放せと?」


 ※次回更新 4月24日 0:00

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