第21話


 「こちらがお部屋になります」


 アルカード王子と別れた後、3人はメイドに部屋まで案内してもらっていた。


 「では、私はこれで」


 「お疲れ様」


 メッシーナが声をかけると、メイドは軽く会釈して去っていった。


 「さ、入りましょ」


 「あ、ちょっとまって」


 「え?」


 入ろうとしたメッシーナを、礼二は止めた。


 (どうもここでは油断できないっぽいしな)


 「先に入って見てくるから、メッシーナたちはここにいてくれ」


 「う、うん。わかった」

 

 礼二は部屋に入ると、やけにきらびやかな装飾が施されていた。ベットからテーブルに至るまですべて金。


 (目がチカチカする・・。それにしても、なんでベット2つしかないんだ?)


 礼二はベットの下や、シンクの裏、テーブルの裏などを隅々まで調べ上げ、異常がないことを確認した。


 (てっきり盗聴器の類があるかと思ったが、そこまでぶしつけではないらしい)


 「入ってもいいぞ」


 礼二は、扉の前に待機している2人に声をかけた。

 

 「ありがとう。変なものなかった?」


 「ああ、なかったよ。問題ない。・・・いや、一つだけ問題がある」


 「なに? ・・・・・ああ、そうね。どうしましょうか」


 メッシーナも気づいたようだ。ベットが2つしかないことに。


 「幸いソファがあるし、俺はそこで寝るよ」


 「いや、お前は誕生会があるだろう? 体を休めておいたほうがいいのではないのか」


 礼二がそういうと、ヘレナが反論した。


 「立ちでもしない限り休めるよ。それにこの中じゃ、俺が一番体力あるだろ」


 「・・・それもそうだな」


 「せっかくレイが気を使ってくれたんだし、今回はヘレナも甘えなさい」


 「はい。そう致します」


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 「さて、準備しよっと」


 「なんの?」


 「これよ」


 そういって、メッシーナは紙袋を叩いた。


 「なんなんだ?、それ」


 「誕生会の出席者名簿よ。さっきメイドからもらったの。今からこれを覚えるのよ」


 「はい?」


 「当たり前でしょう? 話すときに名前がわからないと不便じゃない」


 (え~、めんどくさい・・・)


 「なら話さなければ・・」


 「そうはいかないの! 仮にも国王代理なんだから、話しかけられることも多いのよ。・・・私だって好きでこんなことやらないわよ~」


 テーブルに突っ伏して、メッシーナはうなった。


 「姫様、がんばってください」


 ヘレナが慰めているが、メッシーナは突っ伏したままだ。


 「・・・俺も覚えるよ」


 「え?」


 「役割分担しよう。そうすれば覚える人数が半分に減るだろう? 全員に会うわけではないんだし、会ったら耳打ちすればいい」


 「・・・いいの?」


 「・・エスコートする約束だしな。これくらいは」


 「ありがとう!、レイ!」


 ※次回更新 4月22日 0:00

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