第20話


 次の日、朝食後に礼二が筋トレをしていると、ヘレナが近づいてきた。


 「なあ、なんでそんなに腕が細いんだ?」


 逆立ちして腕立てをしていた礼二は起き上がり、ヘレナに向き直った。


 「う~ん、筋肉への負担を軽くしてるからかな」


 「? それ、筋トレにならなくないか?」


 「1回の負担を小さくして、回数を多くすると筋肉の膨張が抑えられるんだ。試してみたら?」


 「ああ、ありがとう。やってみるよ」


 2人で筋トレをしていると、メッシーナが起きてきた。


 「ふあ、おはよう~」


 「おう、おはよう」


 「おはようございます」


 「朝食、ある?」


 「あるぞ。すぐに出すよ」


 朝に弱いメッシーナの支度が終わってから、3人は出発した。


 「誕生会はいつになるんだ?」


 馬車の中で礼二はメッシーナに聞いた。


 「えっと、着いてから2日後ね。それまでに英気を養っておいて乗り切りましょう」


 「わかった。・・貴族のパーティーってどんな感じなんだ?」


 「そうね。まず、ホールに集まってホスト、主賓あいさつ。その後は来賓にあいさつして談笑って感じかな」

 

 「俺の役目は?」


 「堂々としていてくれればいいわ。ちゃんとエスコートしてね?」


 「・・・善処する」


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 それから馬車を走らせ、ヘルス王国に着いた。高い城壁に囲まれた城下町の門には旅人の行列ができていた。

 

 「あちゃ~、やっぱりぶつかっちゃったか」


 メッシーナは馬車の中で、愚痴をこぼした。


 「この行列のこと?」


 「うん。時間帯によってこうなるんだけど、こう多いと王族特権も使えないしね。気長に待ちましょう」


 数時間後、やっと順番が回ってきた。


 「身分証は?」


 「はい。これよ」


 メッシーナが身分証を門番に手渡すと、門番の顔色がみるみる蒼くなっていった。


 「こ、これは失礼いたしました! どうぞ、お通りください!」


 「ええ、ありがとう」


 ヘレナはゆっくりと馬車を進めていく。


 「ヘレナ、王城まで進んでちょうだい」


 「わかりました」


 「王城に泊るのか?」


 礼二はメッシーナに尋ねた。


 「ええ、一応グロッグ王国代表だからね」


 城に着くと、大勢の使用人が整列していた。


 「ようこそ、わが王国へ!」


 馬車から降りたとたんに、太った金髪の青年が近づいてきた。


 「これはこれはアルカード王子自らお出迎えとは、恐縮です」


 「堅苦しいことはなしだ。私とあなたの仲ではないか」


 「いえ。そういうわけにもいきません」


 きっぱりと突き放したメッシーナを王子、アルカードはつまらなそうにながめた。


 (こいつ、ストレスたまりそうだな・・・)


 ※次回更新 4月21日 0:00

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