第15話


 屋敷そのものはさほど広くないので、巡回と言ってもすぐに終わってしまうが、庭やその他隠れやすい場所、遠くから監視できるような場所は腐るほどある。

 

 礼二はそれらを少しずつ巡回していく。


 (これぐらいなら、俺にでもできそうだな・・・)


 一通り巡回し終わると、礼二は屋敷の屋根に上ってみた。窓枠に足をかければ簡単なことだ。


 「おお!、広いなあ」


 屋根からは夕日に照らされた城や城下町、それらを囲む城壁がはっきりと見えた。大体の建築物は2、3階建てで、高い建物と言えば城くらいだった。


 (あそこにはもう行きたくないな)


 礼二は心の中でつぶやくと、屋敷に戻った。


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 「おかえりなさい」


 中に入ると、ちょうど廊下を歩いていたメッシーナとヘレナに会った。


 「ただいま帰りました」

  

 「私たち、お茶にするんだけどあなたもどう?」

 

 「はい、いただきます」


 礼二が2人についていくと、メッシーナの部屋についた。


 「さ、座って座って」


 メッシーナはとてもうれしそうにお茶の準備をしている。ヘレナが何も言わないことから、どうやらメッシーナの趣味でお茶を入れているらしい。


 「巡回はどう? うまくやれそう?」


 てきぱきと手を動かしながら、メッシーナが聞いてきた。


 「はい。いくつか巡回ルートを決めましたので、それらをランダムにたどろうかと」


 「うんうん、よろしくね」


 洗練された動作でお茶を入れたメッシーナは、満足そうにうなずいた。


 「どうぞ」


 「「ありがとうございます」」


 ヘレナと同時に受け取る。紅茶のようだ。


 「・・・・これ、アールグレイですか?」


 「あら、正解。紅茶わかるの?」


 「まあ、向こうの世界での呼び方ですけど」


 「紅茶は天使様方がもたらされたものよ。名前も変わっていないと思うわ」


 「ぐぬぬぬ」


 見れば、ヘレナがうなっている。


 「ど、どうしたんですか、彼女は」


 「ヘレナには紅茶の味の違いがわからないんですって。飲むたびにうなってるわ」


 「な、なるほど。おいしく飲めればいい気もしますけど・・」


 「そ、そうだよな!」


 会話を聞いていたヘレナが食い気味に同意を求めてきた。


 「う、うん。それでいいと思うよ・・・」


 (なんか、必死だな・・・・)


 「あら、いつの間に敬語抜きで話すような仲になったのかしら?」


 メッシーナが意地悪気に微笑んだ。


 「い、いえ。姫様。別に他意はなく・・」


 「わかってるわよ、ヘレナ。でも、そしたら私も敬語なしがいいわ」


 「え、いいんですか?」


 礼二が確認をとると、メッシーナは軽く答えた。


 「ええ、そのほうが楽しくおしゃべりできるでしょう? ヘレナにはいつも言ってるのにしてくれなくて」


 「私は騎士ですから。主君に敬語抜きで話すなど!」


 「ヘレナは頭が固いのよ。レイは敬語なしね」


 「・・わかったよ、そうする」


 ※次回更新 4月16日 0:00

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