第14話


 黙ってしまったガイルに、礼二は話しかけた。


 「鎖帷子3着とこの店で一番軽い足当てと胸当て。注文は以上だ」


 「・・・あ、ああ。わかった。すぐに持ってくるよ」


 そういって、ガイルは店の奥に引っ込んでいった。


 「おい、レイ。やりすぎだぞ」


 「すんません。わかりやすいかと思って」


 「・・・ちなみにケガはないのか?」


 「? あれぐらいなら3枚くらい重ねても壊せますよ」


 カチャーン、


 店の奥から、何かを落としたような音が聞こえてきた。


 (・・・聞こえちゃったかな)


 すると、慌てたようにガイルが出てきた。


 「は、ははは。すまん、すまん。手間取ってしまった」


 「いや。・・手にとってもいいかい?」


 「え、えっと、それは・・」


 目に見えて動揺したガイルに、礼二は微笑みかける。


 「安心しろ。、壊しゃしないよ」


 「は、はははは。ど、どうぞ」


 乾いた笑いを上げたガイルを無視して、礼二は防具を手に取る。


 (ま、硬度はあまりないが、ないよかましだろう。鎖帷子はうまく使えそうだ)


 「ヘレナさん。これ買いたいんですけど、いいですか?」


 「・・・ああ、いいぞ」


 「ありがとうございます」


 「買ったら帰るぞ」


 「はい」


 2人は防具を買って、店を後にした。


 「鎖帷子3枚も買ってどうするんだ?」


 「ああ、防具に取り着けようかと。それぐらいならできますから」


 「なるほどな。お前のスタイルだと、重い鎧は着れないだろうからな」


 「はい、そういうことです」


 「あ、あとな。私との会話では敬語はいらんぞ。同じ護衛同士だしな」


 「・・わかった。そうさせてもらうよ」


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 礼二は屋敷に帰ると、あてがわれた部屋にこもり、製作を始めた。


 (といってもスーツの裏側に鎖帷子を仕込んで、胸当てと足当てを固定するだけなんだけどね)


 それらの工程を終わらせると、礼二はスライム製の靴を手に取った。


 (片方は鞭に変えるとして、もうひとつはっと)

 

 靴から形を変え、背骨と肩甲骨をカバーできるように細工する。


 (これでいざってときはパラシュートに細工しなおすか、ハンググライダーにでもするか。ショック吸収剤にもなるな)


 それを装着し、スライムスーツを着る。上からワイシャツを羽織り、ズボンをはく。もらった靴には足は通さず、足先の装甲を展開する。


 「これで、よしっと」


 礼二は部屋から出て、玄関に向かう。


 「お出かけですか?」


 執事らしき老人が尋ねてきた。


 「はい。聞かれたら巡回に出ているとお伝えください」


 「かしこまりました」

 

 ※次回更新 4月15日 0:00

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