第13話
「お前、ホントに大丈夫なのか?」
「何がですか?」
ヘレナは礼二と武具屋を目指す途中で、そう尋ねた。
「いや、魔王攻略から外されたことだよ。悔しくないのか?」
「いえ、別に。それに、死ぬ確率が下がっただけで俺はうれしいですけど」
ヘレナは心底意外そうに眼を見開いた。
「お前、魔王攻略の報酬を知らないのか? なんでも望みが叶うというものだぞ!」
「へえ~、そうだったんですか」
「・・・あっさりしてるなあ、お前は」
(命を懸けてまで叶えたい願いなんてないし、帰ったら帰ったで、親父たちにどやされそうだ)
「なんで、そんな合法的に戦える世界から帰ってきた!」って。
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武具屋につくと、ヘレナはすぐに店長を呼んだ。
「おい、いるかあ? ガイル」
「ああん? なんだ、ヘレナか。どうした?」
(鎧系がほとんどだな。邪魔くさい・・・・)
礼二が周りを眺めていると、ヘレナに肘で小突かれた。
「いや、今回はこいつのだ。相談に乗ってやってくれ」
「誰だ、それ」
「姫様の新しい護衛役だ」
「よろしく」
店長、ガイルは隅々まで礼二の体を眺めた。
「魔法師なら防具要らなくないか?」
「いえ、俺は魔法使えませんから。・・適当に見てていいですか?」
「は? その細っこい体で魔法師じゃないのか? おい、ヘレナ。こいつはどこのお坊ちゃんだ?」
(言いたい放題言ってくれる・・・)
「口の利き方に気をつけろ。そいつは私よりも強いぞ?」
「なにいってんだ、お前」
ガイルは馬鹿馬鹿しいといった様子で、首を横に振った。その間に狭い店内を一周した礼二はカウンターに行った。
「あの、」
「なんだ、坊ちゃん。悪いことは言わねえ。とっとと家帰りな」
「鎖帷子3着と、この店で一番軽い足当てと胸当てをくれ」
「・・・そんなのどうするつもりだ」
(こいつ、めんどくせえな・・・)
「売ってくれないのか?」
「ああ、あんたには売るだけ無駄だってもんだな」
礼二は困り果てて、ヘレナのほうに振り返るが、彼女は首を振った。
「このじじいはいつも言い出したら聞かないんだ。日を改めよう」
「それじゃ、困るんだよなあ」
礼二はカウンターから離れ、棚から一番安い鎧を持ち出した。
「何する気だ、坊ちゃん」
ガイルがいぶかしげに礼二の様子を眺めている。礼二はカウンターの上に鎧を置き、拳を振り上げる。
「あんたが悪いんだぜ」
ドガシャ‼
振り下ろされた拳が鎧を粉々に粉砕した。破片が飛び散り、カウンターに刺さる。
「・・・・・」
(この世界の金属なら、コンクリートくらいの硬さだし、楽なもんだな)
※次回更新 4月14日 0:00
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