第11話


 「私は反対です‼」


 中に入ると、いきなり怒鳴り声が聞こえた。


 「そんな大きな声出さないで、ヘレナ。それにこれは決定事項です!」


 (なんか、不穏な会話が聞こえてくるんですけど)


 すると奥からメッシーナともう一人、金髪がまぶしい、きつそうな女性が出てきた。


 「お前が護衛か?」


 「はい」


 礼二は満面の笑みで答える。


 (なんだ、もういるじゃん、護衛。これならもっと楽できそうだな)


 「私と手合わせしろ!」


 「・・・はい?」


 「お前が姫様の護衛にふさわしいか、私が見極めてやる」


 (なんでこうなるかなあ~)


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 礼二にとって2度目の模擬戦である。


 (・・・正直めんどくさい)


 「さっさと準備しろ!」


 「はいはい」


 ストレッチを始めたヘレナを礼二は嫌そうに眺め、靴を脱ぐ。


 「ごめんね、シンジョウくん。彼女、心配性で、」


 「いえ。それと僕のことはレイジか、レイでいいですよ」


 「う、うん。わかった」


 「姫様! 危のうございます、お下がりください」


 「わかったわよ」


 メッシーナが下がったのをみて、ヘレナは剣を抜く。


 「準備できたか?」


 「ああ、いいぞ」


 (才記の時とは違う。おそらく実践経験では俺よりも上だ。今回、手は抜かん!)


 礼二は構え、ステップを踏み始める。スーツの手甲と足先はまだ展開していない。


 ターン、ターン、ターン


 「はああああ‼」


 雄たけびを上げながら、ヘレナは突っ込んできた。礼二もそれに合わせて、踏み込む。


 「ギガスラッシュ!!」


 詠唱とともにヘレナの剣が赤く光り、遠距離斬撃が無数に飛んできた。礼二は流水のような体捌きでかわしていく。


 「もらったあ!!!!」


 斬撃をかわして体勢がくずれた礼二にヘレナは剣を振り下ろした。


 (甘い!)


 礼二は右手の装甲を展開する。


 バキキィ!


 ヘレナの剣は空を切り、カウンターを合わせた礼二の拳がヘレナの胸板に食い込んでいた。


 魔法で強化されていたであろう、その鎧版は粉砕されていた。


 「ぐは⁉」


 ヘレナは後ずさりする。そこに礼二は追撃をかけた。


 ドガッ!


 下を向いたヘレナの側頭部に礼二の蹴りが炸裂した。ヘレナはその場で崩れ落ちてしまう。


 「ふう、」


 (あれぐらいの速さなら避けれるかな。ばあちゃんの棒術のほうがよっぽど速いや)


 「ヘレナ!」


 見れば、メッシーナがヘレナに駆け寄っていた。そこで礼二は、はたと気づいた。


 (・・・もしかしなくてもやりすぎだった、かな?)


 「す、すみません」


 礼二は一応、メッシーナに謝った。


 「いいえ。これは彼女の自業自得よ。あなたは気にしないで」


 メッシーナはきっぱりと言い放った。


 ※次回更新 4月12日 0:00

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