第10話
(ミリナがあの魔法で彼らに何かをしたっぽいな。俺には関係ないけどね)
魔法的に何かされていたとしても、投獄されている自分を助けに来なかった時点で、礼二のクラスメイトたちに対する信頼はほぼなくなっていた。
そして、黄道宮でのあの態度。礼二にとって彼らは限りなく敵に近い存在になっていた。
それから数日が立ち、部屋にミリナが訪ねてきた。
「王女様に許可をいただきましたので、お引き合わせします」
「よろしく~」
礼二がミリナについていくと、王城の外に出た。外には馬車が待機している。
「王女ってのは城の外で暮らしてるのかい?」
ミリナに尋ねると、ミリナはおびえたように肩を震わせた。
「は、はい。今回の護衛は第八王女殿下になります」
「・・・ちなみに末っ子?」
「そうですけど、ご不満ですか?」
「いや、願ったり叶ったりだ」
(末っ子なら、王位継承争いとかもないだろう。楽できそうだ)
「では、行きましょう」
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馬車に揺られること数時間、それなりに豪華な屋敷に着いた。豪華と言ってもあまり大きくはなく、どちらかというとこじんまりとしていた。
中に入ると、6人程度の使用人が出迎えてくれた。その先には白いドレスに身を包んだ女性がいる。
「ようこそ、わが屋敷へ」
「メッシーナ様。ご無沙汰しております。例の護衛役をお連れしました」
「あなたが、レイジ・シンジョウ?」
彼女は20代半ばだろうか。日本ではめったに見れない青い髪が印象的な、大人の女性といった雰囲気をまとっていた。
「はい。これからよろしくお願いいたします」
そういって礼二はその場で片膝をつく。本には王族相手にはこうするのが礼儀だと書かれていた。
ミリナはその様子を驚きの表情で見つめている。
「ええ、こちらこそよろしく。さ、立って立って」
「はい」
(気さくそうな人で良かった~。ずいぶんと気が楽になったよ)
「では、ミリナ。ご苦労様。あんたはもう帰っていいわよ」
「・・・かしこまりました」
ミリナはそういうと、一度も振り返らずに帰っていった。
「ふ~ん、」
気づくと、メッシーナが礼二の体を上から下まで眺めまわしていた。
「結構細いのね。魔法師?」
「いえ、俺に魔法は使えません」
「でも、剣士にも見えないけど」
「そうですね、強いて言うのなら拳闘士、でしょうか」
「へえ~。初めて見たわ。・・・立ち話もなんだからついてきて」
「はい」
こうして、礼二の護衛生活が始まった。
※次回更新 4月11日 0:00
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