第9話


 「今より待遇が良くなるのなら、それで構わない」


 「では、よろしくお願いいたします」


 そういってミリナは


 「洗脳魔法-ザ・ブレインウォッシュ!」


 杖から甘い香りが立ち上り、礼二の鼻腔をくすぐった。しかし、


 「・・・・何言ってんの?」


 「え?」


 「そういう催眠術もどきは俺には利かないと思うよ」


 礼二は平然とミリナを眺めていた。その視線からは哀れみさえうかがえる。


 「な、なんで・・」


 「催眠術ってのは相手を信用してなきゃかからないんだ。覚えておくといい」


 「・・・・・・・」


 黙ってしまったミリナに礼二は話を続ける。


 「それで、王女のところにはいつ行けばいいんだい?」


 「・・・・手続きをするので1週間お待ちください。その間は別部屋をご用意します」


 ミリナは拳を握り締めながら、そう絞り出した。


 「そりゃどうも」


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 新たな部屋に通された礼二には贅沢な食事と服が与えられた。


 (ここまで好待遇になると、逆に慣れないな・・)


 早速食事に手をつけ、服を脱いだ。さっきの左肩を確認するためだ。


 (これ、なんの紋章だ? ・・・サソリに見えないこともないけど)


 紋章に指を這わせると、素材情報の時のように新たなスキルが頭に浮かんできた。


 (毒爪ってのが出せるらしいけど、それだけだな・・・)


 一応、さそり座スコーピオンの能力らしい。礼二は毒爪とやらを出してみた。


 すると爪が黒くなり、3㎝ほど伸びた。


 (これに毒が仕込んであるってことか。これならスライムスーツの手甲に穴を開ければ使えるな)


 「護衛、か・・・・」


 礼二は毒爪をしまいながらつぶやいた。


 (あのクラスメイトたちと離れられるのは助かるが、できるかなあ。やったことがないからわからないや)


 部屋の柔らかいベットに寝そべると、礼二は目をつぶった。


 (やべえ。これ、気持ちいいな・・・)


 コンコン

 

 礼二がウトウトとし始めた時だった。扉がノックされた。

 

 その瞬間に礼二は飛び起き、つま先だけで着地する。そのまま扉に近づく。


 「誰だ」


 「眞城君? あの、小栗美空おぐりみくだけど、開けてくれない?」


 「何の用?」


 礼二は扉を開けずに、話を進める。


 「さっきの才記くんとのことで話があって」


 「・・なぜ?」


 礼二はそれでも扉を開けない。


 「え、えっと、これからの魔王攻略に支障がでるかもだから」


 「俺は魔王攻略からは外されてる。だからそんな心配をする必要はない」


 「・・・・・わかった」


 そういって、彼女は去っていった。


 (あの子、確か才記のこと好きだとかいう噂があったしな。おおかた仇でも取りに来たんだろう)


 ※次回更新 4月10日 0:00

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