第8話


 礼二のスピードはさっきの才記よりも格段に速かった。


 (シッ!)


 バキ―ン


 礼二の左拳がかすむ。それと同時に黄金の鎧が衝撃を受けて、甲高い音が鳴った。


 「くっ⁉」


 (さすがに硬いな、)


 今度は掌底で才記の顎を撃ち上げる。それと同時に足をかけ、押し倒す。


 「や、やめろ!」


 「なに言ってんだ、お前」


 礼二は押し倒した才記の両腕を押さえ込み、右拳を引き絞る。


 「、入れないといけないんだろ?」


 「!、お、お前!」


 「はっ!!」


 そのまま礼二は慈悲のかけらもなく、下段突きを才記の顔面にぶち込む。


 バギャキ!!!!


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 動かなくなった才記からゆっくりと拳を引いた礼二は、離れたところに立っているミリナをにらみつけた。


 (あの野郎、インパクトの寸前で防壁張りやがった。一瞬だけ中指にスライムを展開したから破れたけど、下手したらこっちの拳が折れてた)


 「・・・・・」


 ミリナは平然としている礼二を見て、驚愕の表情を浮かべている。


 (うそでしょ⁉ なんで私の防壁を生身で壊せるの? しかも、ケガをした様子はまったくない・・・)


 「俺は合格かな? 王国魔法師師長さん」


 「!、ええ。あなたを王城にとどめておくことにします。・・・ついてきてくれますか?」


 「・・・わかった」


 礼二はまた素直にミリナについていった。礼二が宮を出るときにちらっと見ると、才記の周りに人だかりができていて、どうやら治療しているようだった。


 礼二がついていくと、応接間のようなところに着いた。


 「座ってくれる?」


 「ああ、」


 礼二が腰かけると、ミリナが話し始めた。


 「聞きたいことがあるんだけど、」


 「どうぞ」


 「あなた、神槍ゲイボルグ持ってるのね」


 神槍。それは聖剣などと同じ神聖武器の一つで、魔法耐性が特徴である。これを身に宿しているものはあらゆる魔法を貫くことができる。


 しかし、神聖武器のなかでは最下位層の威力で、他の神聖武器には利かない。


 (・・・そういうことにしておくか)


 否定してもめんどくさいだろうし、礼二は無難に答えることにした。


 「ご想像に任せますよ。それより、俺の待遇は以前と同じってことですか?」


 「い、いえ。他の天使様方と同じような待遇を約束します。ですが、神槍では魔王は倒せません。なので、特別任務をお願いしたいのです」


 (また勝手なことを・・・)


 「なんですか?」


 「王女の護衛です。他の天使様にも後日お願いするつもりですが、あなたはもう訓練の必要もないでしょうし」

 

 ※次回更新 4月9日 0:00

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