第7話
「なんでしょう、才記さま」
「彼の処分についてです」
才記が指さした方向で、人垣が2つに分かれた。その先には痛みが治まった礼二がいた。
(・・・・え、今さら?)
「彼は貢献もしていないのに、ただ牢内にいるだけで衣食住を保証されているのでしょう? それはおかしい」
「・・・そうですね。それで、どうしたいですか? 才記さま」
「もちろん、王城から追放すべきです」
(俺、そんなに嫌われてたのかあ。なんかショック。人畜無害を突き通してたのに・・・)
「では、そうしましょう」
「待ってください。それでは数の暴力になってしまう。それは僕の良心が許しません。なので、彼にチャンスを与えてあげてください」
「かまいませんよ。どのような?」
「僕と彼とで戦いましょう。僕は聖剣の能力を使いません。それで僕に一撃でも当てられたら、ここにおいてやるというのはどうでしょう?」
「・・・・わかりました」
ミリナは一瞬、不安そうな顔をしたが、結局それを承諾した。
(俺をいたぶりたいって聞こえたのは気のせいだろうか・・・・・)
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その場で急遽、礼二と才記の模擬戦が行われることになった。才記は黄金の鎧を着こみ、聖剣を携えている。
ちなみに礼二は何も持っていない。まるっきりの素手だ。これでどうやって戦えというのだろうか。
(まあ、鞭はあるんだけどね)
礼二は一応靴を脱ぎ、裸足になる。パーカーの袖を軽くまくり、構える。
「準備はいいかな? 礼二君」
「ああ、いつでもいいよ」
「じゃ、行くよ!」
才記は礼二の返事を聞くと、一気に襲い掛かってきた。その剣筋はそれなりに洗練されていて、訓練の後がうかがえる。
しかし礼二はそれに合わせて肘をとり、合気道の要領で投げ飛ばした。
(遅いなあ。もっと強いのかと思った)
ドサ!
「・・へ?」
才記は信じられないといったような顔で茫然としている。周りの生徒たちも同じようになっている。
「・・・これ、一撃に入る?」
「!、ち、違う!」
そういうなり、才記は飛び起きて礼二から距離を取った。
「一撃は僕にそれなりのダメージが入らないと意味がないだろう? だから、」
「わかったわかった。それでいいから」
早口でまくしたて始めた才記を礼二は遮った。そして、ボクシングのステップを踏み始める。
「・・・・今度は仕掛けてこないの?」
「弱者が、調子に乗るなよ」
「はいはい」
礼二は予備動作なしで、走り始めた。ステップを踏んでいるからこそできる芸当だ。
※次回更新 4月8日 0:00
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