第5話


 一晩礼二は製作を続け、朝方にはそれなりのものが仕上がった。


 「おお、色が黒だからか、なんかかっこいい!」


 一人ではしゃぎながら、礼二は出来上がったスライムスーツを振った。


 (・・・気のせいか、深夜テンションになってきたかもしれない)


 「とりあえず、着てみよう」


 礼二はブレザーとかの制服を脱ぎ捨て、スーツを着てみた。


 (腕も足も問題なく動く。これなら使えるな)


 礼二はまた構え、シャドウボクシングを始める。拳打は古流空手。蹴りはキックボクシング。関節技及び受け流しは合気道。


 達人級の猛者達に鍛えられたからこそ出来上がった礼二特有の拳法だ。


 1時間ほど汗を流すと、上の方で扉が開く音がした。

 

 (やべ、)


 礼二は手早くシャツを着て、ズボンをはく。そして手と足先の装甲を細工して引っ込めた。


 「おい、めしだぞ」


 「ありがとう。・・・名前聞いてもいい?」


 朝食のトレーを運んできたのは、40歳ぐらいの男だった。どうやら牢番らしい。


 「・・・・・」


 「俺は眞城礼二。レイジか、レイと呼んでくれ。これからよろしく」


 「・・・何か注文があるなら聞いてやる」


 「注文?」


 「ああ、メシでも服でも。それなりのものは与えろと言われている」


 「そりゃありがたい。まずは朝食をくれ」


 「ほれ」


 鉄格子の間から出された食事は、簡素ながらもそれなりに健康的だった。


 「あと、常識がわかる本をくれ。できれば、周辺の地図も欲しい」


 「・・地図は無理だと思うぞ。脱獄を疑われるから」


 「じゃ、いいや。常識本だけ頼む」


 「わかった」


 それだけ言って、彼は出ていった。


 (名前くらいは教えてくれよ・・・)


 礼二はもらった朝食をもそもそと食べた。


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 それから数週間が立ち、礼二はまた2匹の黒スライムを捕獲した。1つは鞭に、もう一つは読書用の机にした。


 ちなみに捕獲せずに飼いならそうとしたこともあったが、いかんせん意思疎通ができないので結局殴ってしまった。


 ヒュン、ヒュン、ヒュン、


 礼二は鞭を振るいながら、ボーっと考え込む。


 (これも慣れてきたな。実践で使えるかはわからないが。というか、実践あるのか?)


 やることもないからこういうことをやっているが、特に意味はない。


 (常識も身に着けたけど、これも意味があったかどうか・・・)


 礼二の牢屋での生活は読書と食事と鍛錬。1日の終わりに水で濡らしたタオルをもらって体を拭く。それだけだった。


 (相変わらず牢番の名前分からないし)


 彼は朝、昼、夜の3回、決まった時間にくる。彼だけが外界とのパイプであった。


 ※次回更新 4月5日 0:00

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