第4話


 礼二がスライムに触れていると、頭にスライムの素材情報が浮かんできた。


 (物理耐性はほとんどない代わりに、魔法耐性が恐ろしく高い。スライムって雑魚モンスターなんじゃないの?)


 スライムは通常、核を刃物でつけばその辺の子供でも倒せる。しかし、魔法で攻撃するものなどいないから知られていないのだろう。


 (これ、いいなあ。近接戦闘なら合気道で受け流せるし物理装甲なんて邪魔になるだけだが、遠距離の魔法は防げないからな。・・魔法、見たことないけど)


 それを考え始めると、クラスメイトが気になってきた。


 「ま、俺のことなんか気にせずに頑張ってくれよな。・・・ていうか、このスライムでなに作っても意味なくないか?」


 ここは地下牢。それも1部屋しかない、おそらく特別製の牢屋だ。出ようがない。


 「でもなあ、することもないし、これで鎧でも作ってみるか。・・・でも俺、鎧の構造とか知らない・・・」


 スライムを枕にして礼二は床に寝そべった。


 「かといって胴着みたいにしちゃ、カバーしきれないし。・・・・・・そっか、タイツにするか」


 (タイツなら全身をカバーできるし。構造も簡単だ。よし、これでいこう!)


 礼二は体を起こし、早速制作に取り掛かった。


 -------------------------------次の日


 「彼を、眞城礼二くんをどこにやったんですか⁉」


 担任教師の仮屋園芽久かりやぞのめぐは、ミリナを問い詰めていた。朝、昨日の教室に集合してみると、彼の姿がなかったのだ。


 「そのことについては皆さま全員にお話いたしますので、座ってください」


 「・・・わかりました」


 しぶしぶ席につく芽久をミリナはめんどくさそうに見送った。


 「では、ご説明しましょう」


 ミリナは杖を振りながら、話し始めた。否、唱え始めた。


 「洗脳魔法-ザ・ブレインウォッシュ!」


 その詠唱とともに杖から甘い香りが立ち上り、生徒たちの視線が泳ぎ始める。もちろん芽久も同様だ。


 「力なきものに価値はない」


 「「「「「力なきものに価値はない」」」」」


 全員が呼吸すら合わせて復唱する。


 「眞城礼二は虐げられて当然の弱者である」


 「「「「「眞城礼二は虐げられて当然の弱者である」」」」


 パン!


 ミリナが手をたたくと、全員の視線が正常に戻る。


 「ふふ、それでは今日の訓練についてご説明いたします。今日は・・・・」


 このとき、芽久とって礼二がいないことはであった。全員が礼二は弱いから区別されたのだと、無意識に受け入れていた。


 (まだ環境に慣れていない、非戦闘民を洗脳するなんてたやすいことね。せいぜい私の踏み台になってちょうだい)


 ※次回更新 4月5日 0:00

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