第14話 母と娘と

ー往来できるエリアが増えました。

これよりMAP機能が開放されました。

チュートリアルを開始しますか?ー


足元の円が消えると共に現れた、透明なウィンドウ。

とりあえず、YESをタップする。

すると、騒がしかった周りの人が消えた。

チュートリアル用の特別空間に飛ばされたようだ。


ーMAP機能は、様々な場所にある転移石に触れることでその場所を登録し、簡単に登録先に転移できる機能です。尚、転移には2万Gかかります。

転移石は各街の神殿に置いてあります。

さっそく、神殿に向かいましょうー


地面に浮かぶ矢印を辿って、無事神殿に到着した。途中、何回かゴンちゃんに軌道修正された気がしなくもないけど、気にしない。

私は決して方向音痴じゃありませんからね!


着いた先は神殿というよりも、祠。

確かにこの街にギリシア様式の純白な建物は合わないと思うけど、想像していた以上に神殿感がなくて少し残念。

祠の前で手を合わせ、転移石に触れる。


《アークフォールをMAPに登録しました》


ー以上でチュートリアルを終了します。

冒険を続けますか?ー


現実時間を確認すれば、そろそろお母さんが帰ってくる時間だった。

街を見て回りたいけど、今日はお預けかな。晩御飯作らないと。


ステータスの確認をするために、画面の''以後表示しない''にチェックをつけ、冒険を続けるをタップした。


「ステータスオープン」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ソラ

種族 鬼っ娘

Lv 13

HP 1000/1300

MP 900/1300

攻撃 0

防御 130

速さ 130

知力 130

運 125


スキル【羅刹化 lv2 5min】【雷魔法lv3】【打撃 lv3】【料理 lv2】【テイムlv1】【ヒール(小)※】【鑑定】

AP 0

SP 17


装備:狐神の加護を受けた巫女服一式

アクセサリー:身代わりの指輪、白狐の御守り



ーーーーーーーーーーーーーー


ー【雷魔法】がlv3になりました。これより【雷鳴】が解放されます。ー


【雷鳴:一定の確率で相手を足止めする。低確率で気絶付与】


15入ったAPは全部運へ。レイちゃんにもレアアイテム期待されてるからね!

それにしても【羅刹化】のlvがなかなか上がらない。

やっぱりユニークスキルだからかな?


次はゴンちゃん。



ーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ゴン

種族 白狐

Lv 12

HP 1050/1050

MP 850/1050

攻撃 64

防御 32

速さ 83

知力 40

運 5


スキル【狐火】【紅牙】【紅爪】

AP 10

ーーーーーーーーーーーーーーー


「スキルの振り分けはどうする?」


『もう少し溜まってからまとめてするので良い』


「OK。

じゃあ、また明日ね。

今日はもう来られないと思うから」


『あぁ』


ゴンちゃんを1もふりして泣く泣くログアウトした。









さてさて、今日の晩御飯はカレーでございます。

何日も食べられるから、思いっきりゲームが楽しめるよ!

この際飽きることは考えないことにします。


鼻歌交じりで材料を次々に切っていく。

料理は全部お父さんに教えて貰った。

お母さんは料理が壊滅的に出来ないからね。

お母さんには絶対包丁を持たせないこと、って別々に暮らすことになった時お父さんに念を押して言われた。

どう頑張ったら、肉じゃが作ろうとして鍋がベコベコに凹むんだろうね。フシギダナー。


「ただいまー。

外暑すぎよ、まったくもう!」


噂をすればなんとやら。ちょうどお母さんが帰ってきた。

鍋の火を止め、玄関に向かう。


「おかえりなさい」


「私の可愛い愛娘!

お母さんにおかえりなさいのハグしてー!」


「ちょっ、汗びっしょりで抱きつかないで!

汗臭いよ!」


「失礼ねっ!お母さんはシャボン玉と玉子焼きの匂いしかしないのよ!

おとーさん、大空が反抗期!」


プンプン、と頬を膨らますお母さん。

いい歳したおばさんがやっても可愛くありません。


「お母さん玉子焼きすらつくれないでしょ!

お風呂湧いてるから先に入ってきて。その間にご飯が出来上がってるから」


「わーい!

今日はカレーだー!」


こんなアホっぽいお母さんだけど、仕事場ではバリバリのキャリアウーマンで、社員の憧れの的らしい。

ちょっと想像できないよね。


ご飯をよそって待っていると、お風呂から上がったお母さんがタオルで頭をワシャワシャと拭きながら部屋に入ってきた。


「美味しそうねえ。

さすが私とお父さんの子!」


「はいはい。

ほら、座って。食べよう」


「いっただきまーす!

んー美味しい!」


目の前でビール片手に黙々とカレーを食べているお母さんは、長い黒髪をタオルで上げて、コンタクトの代わりに眼鏡をしている。

お母さんは三児の子を育てたとは思えないほど若く見えるし、子供の私から見ても綺麗だと思う。


「そういえば、大海たちと同じゲーム始めたんでしょう?

どう、楽しい?」


「まだ始めたばかりだけど、とても楽しいよ。

今はね、チベットスナギツネのゴンちゃんと旅してるんだ」


「……その名前のセンスについてはもう何も言わないわ。

勉強に関しては心配していないけど、ゲームに夢中になってご飯を疎かにしないようにね」


「それ大海にも言われた。

お母さんこそ、仕事に集中してお昼抜かしたりしちゃダメだからね」


「大丈夫よ~。

愛娘が毎朝作ってくれているお弁当ですもの、残さず食べるわ。

同僚に見せたらすごく羨ましがられるのよ!

お母さん鼻が高いわ~」


「仕事場の人に見せびらかしてるの!?」


「当たり前じゃない!

毎回写真に撮ってお父さんにも送っているわ」


「やめてよ、恥ずかしい.......」


「うふふ。

ゲームばかりじゃなくて、たまには外で友達遊びなさいね。

来年は受験生で、今年しか思いっきり遊べる時がないんだから。

お祭り、花火、海、山、夏のお楽しみは沢山あるわ。そこできっと素敵な出会いもあるだろうし……ダメよ!大空に彼氏はまだ早いわ!!ずっとお母さんのそばに居て!せめて怜君辺りのお母さんの目の届く範囲に!」


テーブルに伏せて、わーん、と泣き出したお母さん。

これはだいぶ酔ってるねぇ。

なにか仕事で嫌なことでもあったのかな。


「わかった、わかった。

今週末お母さん仕事休みでしょう?

一緒にどこか出かけよう、ね」


「本当!?

大空とデートだ!お父さんに自慢しよーっと!

そうと決まれば仕事片付けないとだわ!

ごちそうさま、いつもありがとう」


お母さんはガバッと立ち上がって、鼻歌を歌いながら自室に戻って行った。

娘と出かけるぐらいでそこまで喜ばなくても…。

その時、ピロン♪とメールの受信を知らせる音が鳴った。

メールを確認すれば、



''お父さんは彼氏なんか許しません''



の文字。


いや、怖いわっ!

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