第12話 ぬいぐるみが欲しいです(切実)

「んんーっ」


ベットから起きてぐーっ、と身体を伸ばせば、きゅぅとお腹が空腹を訴えた。

やっぱりゲームの世界でお腹いっぱいになってもこっちのお腹は膨れないか。


「なんか寂しい.......」


さっきまでゴンちゃんと一緒にいたせいか、1人がすごく寂しく感じる。

チベットスナギツネのぬいぐるみ買おうかな.......

売ってるかなそんなマイナーなぬいぐるみ。


調べてみよう、とスマホを手に取った瞬間、着信を知らせる音楽が流れ出した。

画面には『大海』の文字。


「もしもし?」


『もしもし。

今大丈夫?』


大海は電話をくれる時必ずそう尋ねるけれど、タイミングが悪かったことは1度もない。

こういう時双子の神秘を感じる。なーんて。


「大丈夫だよ。

ちょうどログアウトしたところ」


『そっか。

どう、楽しい?』


「うん、とっても!

さっきねレベルが10になったの!」


『おめでとう。

ちゃんと【鑑定】は取ったかって怜が言ってるけど。』


「ふふ、相変わらず一緒にいるんだね。

今日もそれで他の人にも迷惑かけちゃったから、1番に取りました」


『怜が俺についてくるんだよ。

そっか、大空がエリアボスを倒すのもすぐかもね』


「エリアボス?」


『次の町に行くために倒さないといけないボスのことだよ。

『始まりの町』のボスはだいたいレベル15あれば倒せるようになってる。

もし1人で大変だったら助太刀するから、いつでも呼んで』


「そうなんだ。どうもありがとう。

少し気になったんだけど、普通の人の初期HPとMPってどれぐらいなの?」


『ヒューマンはHP100、MP50からスタートだったよ。

獣人はHPが少し多くてMPが少し少ない。

エルフの場合はその逆。

レア種族だとその値が大きくなるよ。

怜の場合HP150、MP100からのスタートだったから』


「そうなんだ。ありがとう」


ユニーク種族の私も十分高いと思うけど、聞く限りゴンちゃんは飛び抜けてるね。


『お昼はちゃんと食べた?

ゲームもいいけど没頭して食事を疎かにしちゃダメだよ』


「今から作るところ。

さっきまで【料理】スキルのlv上げるために作った料理をもぐもぐ食べてたから変な感じだよ」


『そういえば、琉もそんなこと言ってた。

現実もだけど、ゲームの中でも大空の料理を食べられるの楽しみにしてるね』


「うん!

美味しく作れるようになったらご馳走するよ」


『ありがとう。

怜が仕事しろってうるさいからもう切るよ。

それじゃあ、またね』


「怜ちゃんにあんまり迷惑かけたらダメだよ!

バイバイ」


通話を切って、キッチンに立つ。

さてと。何を作ろうかな。

以前作ったミートソースが冷凍庫に入っているから、麺を湯がいてスパゲティでも食べようかな。

冷蔵庫を開けると、中身がすっからかんだった。こりゃあ、晩御飯の分の材料がないな。

しょうがない、ご飯食べたら買い物に行こう。


パッパと食べて、戸締りをして家を出る。

少し遠いけどデパートの方に行ってみようかな。ぬいぐるみあるかもしれないし。

自転車に跨り、いざ出発。


結果、チベットスナギツネのぬいぐるみはありませんでした。

一応狐のぬいぐるみは買ったんだけど、溢れ出るこれじゃない感。なんか悟り度が違う。ゴンちゃんはこんな愛くるしい目はしてないよ。


いいもんいいもん。今からすぐゴンちゃんに会えるんだから!


買ったものを冷蔵庫に入れ、いざAWOの世界へ!



パチリ。

目を覚ますと、先程の河原だった。

ここは安全地帯と見なされたのかな?

キョロキョロと辺りを見渡していると、光の粒子が集まって目の前で輪郭を象っていく。


「ゴンちゃん!」


うはっ。もふもふ!!

ゴンちゃんの毛並み最高!


『苦しいのだが.......』


ギュウギュウ抱きついていると、ゴンちゃんの前足がてしっ、と私の頬に当てられた。

肉球ぶにぶにー。


「えへへへ。会いたかったよ、ゴンちゃん!」


『そこまで長い時間離れていたわけでもあるまい』


「それでも私は寂しかったんだよ」


『そうか』


ゴンちゃんの尻尾がファサ、っと揺れた。

ふっふっふ。

ぶっきらぼうな言い草だけど、本当は嬉しいんだな。


「ゴンちゃんのレベルが10まで上がったら、エリアボスに挑戦しようと思うんだけどどうかな?」


『いいんじゃないか?

狐神様から頂いた武器もある。そう易々とやられまい』


そうなんだよ。私たちにはあの反則武器がある。多少レベルが足らなくても服と武器とゴンちゃんで補えるのだ。


「そうと決まれば早速魔物退治だ!

目指すは、オーク肉!」


『御意。

オークはこっちだな』


てくてく歩くゴンちゃんについて行けば、オーク発見。近くにはゴブリンが3匹いる。

オークの姿は二足歩行のイノシシ。ただし、緑色!


「どう、ゴンちゃんいける?」


『問題ない。

いってくる』


ゴンちゃんは1番近くにいたゴブリンに噛みつき、それをオークに投げつけた。オークがバランスを立て直す時間を与えずに、そのまま【紅牙】で噛み殺し、【狐火】でゴブリン達を撃退。

ゴンちゃん、かっこいい!


「お疲れ様!早かったねぇ」


『せめて【紅爪】が使えればもう少し楽に仕留められるんだがな』


ゴンちゃんが持って帰ってきたドロップアイテムをアイテムボックスに入れながら、その頭を撫でる。

レベルは7に上がっていた。

よし、このままじゃんじゃん行こう!


そして、オークとゴブリン時々コボルトを倒してゴンちゃんのレベルは10になった。

オーク肉が沢山手に入ったので私もホクホクです。


ーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ゴン

種族 白狐

Lv 10

HP 950/950

MP 780/950

攻撃 64

防御 32

速さ 63(+20)

知力 40

運 5


スキル【狐火】【紅牙】【紅爪】

AP 0

ーーーーーーーーーーーーーーー


【紅爪:炎に包まれた爪で相手を切り裂く】


ゴンちゃんの希望でAPは全部速さへ。

驚いたことに、レベル10になったことでゴンちゃんが言っていた【紅爪】がスキルに追加された。

レベルが上がることで本来の力が徐々に戻る仕組みになっているみたい。


「よし。

エリアボスに挑戦するぞー!

エイエイオー!」


『.......』


ゴンちゃんの前足を掲げたら、尻尾で顔を叩かれました。うぅ、痛い。

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