第11話 レッツクッキング
『……』
「……」
『……』
「……」
え、なにこの沈黙。
どうしてゴンちゃんはそんなに困ったような顔をしているのかな?
いつもの無表情はどうしたの??
『.......主、何を拾い食いした?』
「え、なんで?
特に何も食べてないけど」
『いきなり変なことを言い出すから、おかしなきのこでも食ったのかと。
拾い食いじゃないのなら.......』
ゴンちゃんが私の額にぶに、と肉球を押し付けた。
うーん、少し犬の肉球より硬い気がする。
『.......熱もないな。
いいか、主。森には色々なものが生えている。毒を持ったものも少なくない。食う前に必ず私に確認をとること。わかったな』
「ちょっと待って。
なんで私が何でも拾い食いする食いしん坊さんみたいになってるの!?」
『自分の先程のおかしな台詞を思い出せ。
主の頭が狂ったのかと思ったぞ』
「おかしな台詞じゃないよ!
ご〇ぎつねの有名なラストシーンだよ!
衝撃の結末に全日本人が涙する名作の名場面だよ!
ゴンちゃんにも関係ありありのお話だよ!」
なんてこった!
まさかゴンちゃんにご〇ぎつねが通じないなんて!
私は地面に手を打ち付けた。全く痛くなかった。
『.......主の奇行に少しでも早く慣れるよう精進しよう』
「ごめんなさい、私が悪うございました」
薄々気づいてたよ。
ゲームの世界にご〇ぎつねネタは通じないんじゃないか、って。
でもね、そう思ったのあの台詞言った後だったんだよ!
ドヤ顔で言った手前引き返せないじゃん!!
「うぅぅ.......ゴンちゃんのばかあ.......」
『何故私が馬鹿と言われなければならんのだ。
もう肉取ってきてやらんぞ』
「冗談です。ゴンちゃん様流石です。ひたすら尊敬しております」
『手のひらを返したように態度が変わったな。
それで、これからどうするんだ?』
「【料理】スキルをあげようかなと。
他のプレーヤーの迷惑にならないよう、なるべく人がいないところがいいんだけど」
『それなら向こうだな』
歩くことおおよそ5分。澄んだ水が流れる川のほとりに着いた。
水面が太陽の光を反射してキラキラと輝いている。水は透き通り、のびのび泳ぐ魚が見えた。
「空気が綺麗だねぇ」
『そうだな』
私の隣に座ったゴンちゃんが気持ちよさそうに尻尾を揺らす。
平和だなあ。
「よし、ご飯にしよう!」
アイテムボックスから、バーベキューコンロと折りたたみ式のテーブルやイスなどを出す。
いやあ、ついついキャンプ用品揃えたくなって気づいたら残金231Gになってしまいました。
虹色の角レイちゃんに売りつけよう。
ゴンちゃんが取ってきた肉を次々と焼いていく。いい具合で焼けてきたら街で買った塩胡椒を振りかける。
ハーブ類は高くて買えませんでした。
他の街から運んでくる分高くなるんだって。
《ウサギ肉の丸焼き
RANK E スタミナ10%回復 》
ふぉ!紙皿に置いたお肉の上にウィンドウが出てきた!
《ウサギ肉の丸焼き
RANK E スタミナ10%回復》
《ウサギ肉の丸焼き
RANK E スタミナ10%回復》
《ウサギ肉の丸焼き
RANK E スタミナ10%回復》
《ウサギ肉の丸焼き
RANK D スタミナ20%回復》
《ウサギ肉の丸焼き
RANK E スタミナ10%回復》
目が目がああああああ
ウィンドウ次々に出てきて目がチカチカなするよう!
『主、大丈夫か?』
違うんだ、ゴンちゃん。
私が求めていた反応はそれじゃないんだ.......!
「な、何でもないよ!
それよりもご飯食べよっか」
手を繋いで呪文を唱える少年少女を頭から追い出し、食事の準備を進める。
焼いた肉の他にレイちゃんに貰ったサラダもお皿に盛り付け、テーブルの上に置く。
少し値段は高かったけれど、脚が伸縮自在のものを買ったから、ゴンちゃんがキツネ型でも人型になったときも一緒に食べられるよ。
「いただきます!」
『?いただきます』
地面に座ったゴンちゃんが私の真似をして前足を合わせたのには笑ってしまった。
食べた感想はと言いますと.......なんか微妙。
不味くはないけど特別美味しくもないという、表現し難い味だった。
RANK Dの方が少し美味しく感じたから、RANKが上がるほど美味しいんだと思う。
早くレベルを上げて、上手に作れるようになりたいな。
買ったサラダは十分美味しかったです。
RANK Dのを食べた時よりもスタミナの回復量が多かったから、既製品の方がRANKは高いとみた。
2人にしてはちょっと量が多いかなと思っていたお肉はゴンちゃんの胃の中に見事に収まりました。本人曰く、まだ入るそうです。
ゴンちゃんの胃袋ブラックホール。
そう言えば、現実もお昼過ぎなんだよなあ。ここにいたら時間感覚が狂いそう。
1回ログアウトしてご飯食べなきゃ。
ゲームで食べたばっかりなのに変な感じ。
あれ?今更だけど私がログアウトしたらゴンちゃんはどうなるんだろう。
困った時はメニュー画面のヘルプを見ろ、ってカイが言ってたっけ。
ウィンドウを開いてヘルプのアイコンをタップすれば、項目ごとに質問と答えが並んでいた。
その中から『テイムについて』をタップする。
あ、これだ。
『Q ログアウトした場合テイムモンスターはどうなりますか?
A 別空間に移動されます。また、プレーヤーがログインした5秒後に現れます』
私がログイン出来ない間、1人でこの場所に留まるわけじゃないんだ。これなら安心だね。
ウィンドウを閉じようとした時、プロフィール上のレベルが上がっているのが見えたので、×を押す指を止めて、ステータスを開く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ソラ
種族 鬼っ娘
Lv 10
HP 1000/1000
MP 1000/1000
攻撃 0
防御 0(+100)
速さ 0(+100)
知力 0(+100)
運 20
スキル【羅刹化 lv2 5min】【雷魔法lv2】【打撃 lv3】【料理 lv2】【テイムlv1】【ヒール(小)※】
AP 90
SP 20
装備:狐神の加護を受けた巫女服一式
アクセサリー:身代わりの指輪、白狐の御守り
ーーーーーーーーーーーーーー
ー【雷魔法】がlv2になりました。これより【サンダーアロー】が解放されます。ー
おぉ!レベルが10に到達した!
とりあえず、レイちゃんに言われた通り【鑑定】を取ろう。
他は、またいる時取ればいいかな。
レベルが10になってAPがどちゃっと入ってきたから、そろそろ振り分けよう。
巫女服の最強補正があるからAPは全部運でいいよね!運補正のアイテム持ってないし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ソラ
種族 鬼っ娘
Lv 10
HP 1000/1000
MP 1000/1000
攻撃 0
防御 0(+100)
速さ 0(+100)
知力 0(+100)
運 110
スキル【羅刹化 lv2 5min】【雷魔法lv2】【打撃 lv3】【料理 lv2】【テイムlv1】【ヒール(小)※】【鑑定】
AP 0
SP 17
装備:狐神の加護を受けた巫女服一式
アクセサリー:身代わりの指輪、白狐の御守り
ーーーーーーーーーーーーーー
【鑑定:ものの詳細を見ることが出来る。尚、プレーヤーやその仲魔のステータスの閲覧は不可】
【鑑定】にはレベルはないみたい。
さっそく近くに生えている草をちぎって【鑑定】をかける。
《草》
う、うーん。確かに草だけど。
続いてゴンちゃんに向けて【鑑定】をかける。
《白狐:プレーヤーソラの仲魔》
私の仲魔って出るんだ。
なんか嬉しいね。
ゴンちゃんのステータスも確認しようっと。どれだけレベルが上がったかな?
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ゴン
種族 白狐
Lv 6
HP 750/750
MP 730/750
攻撃 54
防御 32
速さ 48
知力 40
運 10
スキル【狐火】【紅牙】
AP 25
ーーーーーーーーーーーーーーー
うん、HPとMPがえげつないね。
「ゴンちゃん。
APどれに振り分けたい?」
ゴンちゃんを膝に乗せて一緒にウィンドウを眺める。
『攻撃に10、速さに15だな』
「りょーかい」
決定のアイコンはゴンちゃんと一緒に押しました。
えへへ、共同作業でーす!
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ゴン
種族 白狐
Lv 6
HP 750/750
MP 730/750
攻撃 64
防御 32
速さ 63
知力 40
運 10
スキル【狐火】【紅牙】
ーーーーーーーーーーーーーーー
ゴンちゃんが満足そうに頷いた。
「今から私はログアウトするね。
また来るからいい子で待ってるんだよ」
『私は子供じゃない。
言われなくてもわかっているぞ』
「それじゃあまた後でね、ゴンちゃん」
ちゅっ、とゴンちゃんの頭にキスを落として私はログアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます