第18話【緊急開頭血腫除去術】
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「ちゃんとした処置をすればこの人は必ず目を覚ます筈だ……!!」
『ちょっテラバヤシ! なんで勝手に!!』
俺の発言によりその場になんか不思議な空気が流れ始めた。
『ハァ……空気感からして明らかに今僕が出たら不味い事になりそうだ……こうして変わったってことは何か策があるんだよね?』
(あぁ、勿論だ。)
するとロクス……だっけ? この人が俺に話しかけてくる
「……もしかしてアロビを助けてくれた時みたいに、こういう時の対処方法を知っているの……?」
「前頭部の受傷後、数分間意識がしっかりしていた……つまり清明期があったことからこの症状は間違いなく
「…………? それは一体……?」
「頭蓋骨にヒビが入り、そこから血液が硬膜と頭蓋骨との間にしみ出し、血腫が出来ることによって発症するモノに間違いない。」
「???」
聞いた事の無い言葉なのか、病院で患者さんや両親の方に病気を説明する時のような既視感のような物を感じた。
「あんちゃん! エドラを助けてれるんだったら助けてやってくれ!!」
「ああ! その為の処置をする為、此処に居る人はロクスさん以外出て行ってくれ!」
『ハァ……ちょっと僕の立場が凄い気まずくなりそうだよ……』とベイリスが言うが、知らんな。
ベイリスの運んできたリュックから清潔な服と、調合用の殺菌されたゴム手袋を取り出す。
「ちょっと君!! 間に訳の分からない事を言っているんだ! そんな事出来る筈が―――」
さっき二度と目を覚まさないなんて言った
するとある人物により遮られる。
「少しでも命を救えるか知れないのなら僕はこの子にに掛けてみる。今から起こる全責任はこのロクス=トレビジスが負う! 取り敢えずみんなこの治療場から出て行ってくれ!」
その場に居た全員の空気に一瞬にして変化が起きる。
『初めて見た……こんなに気迫が凄いロクス兄さん。』
その場に居た人はロクスさんの言葉を聞いて少し不安げながらもこの部屋を出て行った。
………にしても、理解が凄く早すぎる気がするな……
『………それは多分ロクス兄さんはこの前、僕が胸腔穿刺した時の話を聞いたからじゃない?』
(確かにそうなのかもな。)
『………頼むよ。』
(勿論だ、任せろ。)
「さて、ここから僕は何をすればいいのかな?」
「ロクスさんは取り敢えず今来ている服を新しいものに変えて来てください。」
「………分かった。」
出口とは別の個室で二人は新しい服に素早く着替え始める。
「何をするのか想像もつかないけど麻酔っている?」
「勿論必要です、出来れば意識を失わず、痛みだけを取り除けるモノがあったらそれでお願いします。」
「じゃあ、丁度良いモノがある。」
そういうと
渡された小瓶を見ると何やら視界にその薬についての説明が現れた。
一瞬驚いたが、その薬の説明を見るとどうやら俺の居た世界で使われていた
つまり手術をする準備が大体整う。
ベイリスが調合の時に使う新しい清潔なマスクを取出し、頭を手拭いで剣道で面を付ける時のように髪の毛を覆いゴム手袋をつける。
受け取った麻酔薬を適量、注射器で吸引し、傷のあったところ周辺に注射を打つ。
「その道具は一体……?」
ロクスさんが注射器を見て不思議そうに呟いてくる。
やはり注射器はこの世界には無かったのか……
後から聞いた話なんだが、この麻酔の使い方は傷が開いている所に直接かけて痛みを除き、回復魔法を掛けている時に暴れないようにするために使う物なのだとか。
そんな良くそんな使い方していた物だな。
そんな使い方、下手すれば危険だぞ………
麻酔を注射し終わり、メスを握る。
「スゥ――………此れから緊急開頭血腫除去術を始める………」
この人がスキンヘッドで良かった。
髪の毛を剃る工程が無いから直ぐにでも始められそうだ。
ベイリスがエイテ親父さんに作らせたメスを薄っすらと傷跡の残る所へ入れ、三角形を描くように二本線を引く……
完全に切り取らず三角形で言う所の一辺を残すようにメスを入れ、ロクスさんの魔法で細目に止血をして貰い、皮をコッヘル・ぺアンを数本使い、なるべく固定すると皮の下にある頭蓋骨が露わになる。
こちらも薄っすらとだが再生痕が直ぐに見つかる。
『うっ………生々しい……』
しょうがない、我慢してくれ。
「…………っ!?」
『ロクス兄さんだってあまりにもアレすぎて絶句してるじゃないか!!』
…………しょうがない、この世界には魔法なんてあるんだ、今までに無い
そしてここで一番重要な道具ともいえる物…………
消毒済みの”穿頭ドリル”と言う、頭蓋骨に穴をあける道具を取り出す。
そして穿頭ドリルで穴をあけるところを良く確認し、穿頭ドリルを回し始める。
回し始めて少しするとロクスさんが話しかけて来た。
「うっ……それは一体何をしているの………?」
「頭蓋骨に穴をあけています。恐らくヒビのあったところの下に……」
頭蓋骨に穴が開く。
すると下にやはり………
「あった………血腫だ!」
受傷してから少し時間がたってしまっている。
なるべく早くしなければ…………
直ぐに血腫を取り除く作業に進む。
幸い、合併症などは引き起こしていないようだ。
手術を初めて一体どの位の時間が経っただろう、血腫をすべて取り除き終ると本来は手術糸で結合するのだが……
まぁ、そこは魔法に頼り、手術時間をなるべく短くする事に成功した。
魔法により、頭蓋骨の穴まで綺麗に再生され、穴は跡形もなくなり、その上の皮膚もかなり薄い傷跡が残る程度に一瞬にしてなる。
回復魔法……これがもし俺の居た世界に存在していたのならば、もっと医学が進歩していてもおかしくない代物だ……
「これで処置は終了? 頭に穴を開けて本当にこれで助けられるの?」
「協力してくださってありがとうございます、後は経過を様子見しましょう。」
いつもは電気メスを使って止血しながら進めていた手術を電気メスの代わりに回復魔法と言う物で止血する。
それに通常は術後二~三日経過を見て安静にしなければならない筈だが……これはもう完全に治ってしまっている。
こんな事は初めての経験だからどの位で回復し、どの位で意識が戻るかなんて想像もつかないな……
『あ、テラバヤシ、エドラさんの目が開いたよ。』
まさか! 魔法と言う物を使うと此処まで回復が早いのか!?
直ぐに振り返り、意識はしっかりしているのかを確認する
「う………ここは……?」
「大丈夫ですか? 自分の名前を言えますか?」
「あん……ちゃん? ここは?」
名前は言ってないが俺の事を認識することが出来た時点で意識はしっかりしていると判断していいだろう。
「…………!! ほ、本当に意識が戻った!?」
ロクスさんが驚いている。
(ベイリス、そろそろ変わってくれ。大体見ていたんだ、話を合わせる事ぐらい出来るだろ? 説明しろとか言われたら補助位はしてやるから。)
『あ、あぁ。分かった、お疲れ様………”変われ”。』
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そして体の主導権が僕に戻る。
すると丁度エドラさんが治療台から起き上った。
「あ~~なんか寝起きみたいな感じがするな……あんちゃん達がここまで運んでくれたのか? ところで他の奴らは何処に?」
「エドラさんの仲間と僕の仲間は外で待機して貰っています。もう動いても大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫そうだ。……人型の魔物はどうなったんだ?」
「直ぐにギルドの送迎の方に事情を話し、緊急クエストに指定された筈です。」
「そうか………」
テラバヤシの
そして念の為ロクス兄さんとエドラさんを支えながら治療場から出て行ったのであった。
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