第8話【毒姫?】

 取り敢えず、集合場所にはまだ誰も来てないし、昼の料理の準備でもするか。


 近くにあった石を積んで簡易のかまど的なのを作って―――よし、こんなもんで良いか。


 次に川で不純物が混じらないように水を汲んで、一応家にあった小型過機でろ過して沸騰させる。


 毒の無い食用キノコかよく確認して、疑わしい物は全て毒キノコサイドに仕分ける。


 お湯を沸かしている間にキノコの下の堅いところ石突きを切り落とす。


 傘を4等分に切って……良し、こんなモンか。

 後は、山草とかを具として入れておこう。

 そして投入するのは――……


「あ、あったあった、味噌。」


 メアリとシグがどういう反応をするのか分からんが、謎汁みそしるを作ってみるか。

 別に不味いもんじゃないし。

 他にはさっきシレッと設置した魚を取る罠を引き上げて――


「おっ、かかってる、十五センチ代が5匹か……燻製肉を餌に使ったのが思ったよりも良かったみたいだな。」


 持って来た串に刺して焼けばいいか……

 だけど水を沸騰させるのに思ったよりもたきぎを使っちゃったな。


 と、水を入れた鍋に一時的に魚を入れようとして、薪を探しに行こうとした瞬間。

 丁度シグが薪を大量に持って戻ってきた。


「ベイリス、相変わらず早いな〜」

「丁度良かった、シグ、その薪くれ。」

「ほいよ。」

「……そう言えばシグ、その様子じゃ今年は一匹も釣れなかったの?」

「当たり。で、ずっと頼まれてた薬草と薪を集めてた。さて、俺もなにか料理を手伝うぞ。」

「じゃ魚の調理お願い。」

「うっし! 任せろ。」


 そしてその頃にメアリも丁度良いところで戻ってきた。


「あら? もうお昼ごはんを作り始めちゃったの?」

「ちょっと早かったかな?」

「そんな事ねぇだろ、早ければそれはそれで良いと俺は思うがな。」

「あ……そうそうメアリ、今年の収穫はどうだった?」

「勿論ばっちしよ! ほら、薬草とキノコに魚、今年は私がアタリだったみたい。」


 メアリが初めに僕の渡した竹で編まれた入れ物を見せてくる、1つ目にはキノコのが入っていた。

 僕はそれをそっと覗き込む。


 …………こっ、これは…………!!


「さすがメアリ、キノコは殆ど毒だね。だけど薬草の方はかなり品質がいいよ。」

「えっ! キノコは殆どが毒!?」

「あ、一個訂正。今年も全部毒だった。」

「えーー!!!」


 メアリはなんでか毎年、何処の地域に行っても何故か見つけられるのは毒系ばっかりなんだよなぁ〜〜


 この前はダンジョンで素材集めとかでメアリが手に入れてたのは、ほぼ魔物の毒の牙とかだったし……


 一人でダンジョンを少し先に進んじゃうと必ずと言っていいほど毒系の魔物引き連れて逃げて戻ってくるんだったな……


「HAHAHA! 今日も毒姫さんは絶好調だな!!」

「シグ!! 誰が毒姫よ! この毒舌王子!」

「あら、王子ってつけてくれるのか? 毒舌は自分で気づいてたことだからそう言われると嬉しい限りだねェ〜〜」

「むぅぅ〜〜……シぃ〜グぅ〜!!」

「うぉっ痛てぇ痛てぇ! メアリ! 身体強化の魔法を使うのはズルだろ!」

「このやろっ! このやろっ!」


 仲良しで何よりだな〜

 ………このやり取りなんかデジャヴしたな……

 何時だっけ?

 ……確か飛竜船の中だったっけな。


「ほらほら、二人とも、魚も焼けてきたよ〜」

「あっ、もう焼けて来たか!」

「さて、私もどんどん追加で焼いていくわよ。」


 相変わらず切り替えの早いメアリとシグ。


「ん? メアリ、その量なら幾つか保存用に加工して持ち帰っても良さそうだね。」

「今年は結構トラップが効果絶大だったのよ!」

「確かに僕の方もいつもよりも効果が凄かったよ。」


 ふっふっふっ……そろそろ本命みそしるができた所かな?


 蓋を取って様子を見る。


 うん。ちょうど良さそうだな。


「ん? ベイリス、何だそれ?」

謎汁みそしる。」

「何それ……なんかボコボコ動いてる……」


 と、メアリが若干、熱で混ざっている味噌を見て引いている。


「なぁ、入っているキノコって勿論大丈夫なやつだよな?」

「勿論しっかり何度も確認したやつだよ。安全は保証する。」

「ベイリス、もし毒キノコが入ってたらどうするの?」


 メアリは少し不安そうにそう聞いてくる。


「ああ、この森に生えている毒キノコは即効性でしかも微弱な物しかないから、最悪の事態になっても吐き出させれば大丈夫な筈。」


 エキスを抽出したりして毒性を濃縮させなければ大丈夫たと思うし……

 もし、食べて重度の症状とかが出ちゃったら胃の洗浄とかもやりたいところなんだけどなぁ。

 生憎ゴムチューブとか吸引機とかもないし……

 最悪一度吐かせて水飲ませてもう一回繰り返し吐かせる―――って地獄絵図になりそうだ………


 解毒は先ず胃の洗浄をし、毒を一刻も早く出す事から始めるのが手っ取り早い方法だしな。


 ――――って何で僕はこんな事を知っているのだろう?

 いきなり記憶が浮かんできた……というよりも思い出した……みたいな感覚だな。


 まぁ、一応即効性の毒の正反対の即効性解毒作用の薬草も採ってきてあるし……

 一応風味付としても入れてあるから安心して貰っていいんだけどな。


「なら大丈夫だな。じゃ、ベイリスを信じて―――」


 シグが謎汁みそしるを器に注ぎ、すぐ側の倒木に腰掛けて一気に謎汁を飲み干した。


「う゛ッ――――………」

「えっ!? シグ! 大丈夫!? ベイリス!すぐに吐き出させッ…………!」

「ゲホッ! ゲホッ! メアリ、焦りすぎだ、ただむせただけだからな!」

「シグ……今のは心臓に悪かったよ……」

「いやー、すまんベイリス。喉がすっげぇ乾いててよー、つーかコレうまいぜ。きのこに結構味がしみてるな。何か味付けしたのか?」


 結構味噌汁は好評みたいだな。

 メアリもはじめは恐る恐るだったけど普通に食べてたし。

 結果、取り敢えず何もなかった。

 取った魚は一部は捌いて開き、内蔵を撮って、日が出ているうちに日干ししたり、折りたたみ式の簡易燻製機で燻したりして色々と作っておく。


………………………………………………………………………


 そして帰郷二日目(いや、帰ってきた日も入れると三日目か?)が兎に角終わっていった。

 勿論、昨日の報酬のお金はメアリから返してもらった。

 半分忘れかけていたけど……

 心配は杞憂だったな……あんなに言い訳考えなくてよかったかも。

 明日はメアリもシグも家の手伝いをするらしい。

 と、言う事は――明日は一日中調合練習でもしてるか。

 今日シグとメアリが沢山、薬草を採ってきてくれたし。


「取り敢えず使わない分は地下室にでも保存しておくか。」


 居間の床にはマットが敷いてあり、そのマットをめくると鉄の板の面が現れる。

 その上蓋を上げると地下室へ続く階段があらわになった。


 この階段を明かりを灯した蝋燭と、薬草を持って降りていく。


 この地下室の温度はいつもヒンヤリしていて色々と生物が傷みにくいんだよな。

 何でこの家に地下室があるのかって?

 記憶の中では何時だかお父さんがワインとか薬草とかを保存するのに使っていたな。

 今でも片隅の棚にワインが何本かおいてある。

 そのうち薬の調合にでも使っちゃおうかな?

 薬草の入った袋を地下室に置き、ひんやりする地下室から上がって本棚の後ろの隠し棚に明日使う分の薬草を入れておく。


 あらかたやることが片付いたので夕飯を作る。


 夕飯は取り敢えず今日釣った魚の燻製を味噌汁に入れてみたら結構相性が良かったな。

 …………なんか、僕、最近味噌汁にハマってないか……?

 取り敢えず暇だし使ってない部屋の掃除でも何となくしとこうかな。


 その日は使ってない寝具を外で叩いたりしてから風呂に入り、その日は眠りについた。


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