少女の熱と花

あらすじが気になり一気読みさせていただきました。
 まず序盤から状況描写や人物の感情表現が丁寧で引き込まれました。
主に麻巳子中心の視点で描かれるのですが、中学生とは思えないほど達観してるというか大人びている子なので表現が細かく、これからどう考えや感情が揺れ動いていくのかが楽しみでした。
 途中で麻巳小と直光の二人の視点で書かれるところは、短い小説の中でうまく使っていると思います。互いに互いをどう思っているのかがタイミングよく変わるので認識のズレが生じずに読むことができました。
 結末が気になって最後まで一気にストレスなく読めたので、文章の流れがとても良いのだと思います。文章中の表現もとても綺麗でした。
 ただ、最後の結末はちょっと急ぎ足というか唐突だったのではないかと思います。麻巳子が展望台に直光を誘った理由や花のくだりが、自分の理解力がないからか、申し訳ありませんがよく理解できませんでした。
 タイトルにflowerとある通り、きっとこの作品の軸になる部分だと思うのですが、後半の麻巳子の心理がちょっとわからなかったので一体何だったのか、となってしまいました。
 最後は麻巳子と花島の二人で終わるのですが、結局直光はどうなったのかという方が気になってしまいます。読者としては花島よりも直光のほうが描写が多く、そちらの方に感情移入していた状態だったので、唐突な展開という気がしてなりませんでした。もちろんそれまでにも花島が麻巳子に対して好意を持っていそうな描写もあったので、自然な流れとは思うのですが、それで終わりというのはあまりにもあっけないような気がします。中盤まで丁寧な描写が続いていたので終盤が気になってしまいました。
 短いながらとても楽しませてもらいました。読んでいる間、この作品の世界観に浸ることができてよかったです。長々と失礼しました。