4.―5歳―隠しましょう

 翌朝、アデレードは、ようやく目覚めた。


「アディー、良かった!起きたのね……」


 正味四日間、突然の発熱に寝込んでしまったのだ。

 母のマデリードは、安堵の笑みを浮かべて、泣いていた。


 愛娘が突然意識を失うほどの高熱を出し、漸く快方したのだ。

 それはそうだろうね。


 どうにも、アデレードの成長と共に、感情の起伏が激しいと、私も力が使えない……遣いづらくなるようだった。


 主権は、彼女の方にこそ有ると言うことか……。

 私の立場は、彼女が成長するまでの補佐役…なのだろう。


 前世の記憶……どれもこれも、良い死に方じゃないし、苦しい記憶ばかりだものね。

 一気に幼子に押し流したら、精神崩壊を起こし兼ねない。


 その為の、防波堤と言った所かしらね?


 その後、アデレードは、胃に優しい具だくさんスープを食し、寝台の上の住人を続けさせられていた。


「熱は下がったのにな~」


『仕方がないわよ。病み上がりは気を付けなくてはならないわ』


「お母様と同じことを言うのね?」


『ふふふっ、そうね。下手したら私の方が、お母様よりもずっと、年上よ?』


「えっ!!そうなの!?」


『そうね、一番長い生だと、お母様よりもう少しだけ長生きだった事もあったのよ?』


「そうなの!?ねぇ、その時は、どんなだったの!?」


『さぁ?どうだったかしらね?いずれアディーも、思い出すかもしれないから、その時のお楽しみね?』


「今、教えてくれないの?」


『何となくだけど、教えたらいけないんだと思うのよ。きっと、自分で思い出すから意味があるのだと思うよ』



「そうなの……?……なら、何も聞かない」




 ◇◇◇



 漸くベットから降りることを許されたある日のお茶の時間、今日のおやつはフルーツとクリームのクレープ包みだった。


 これを見ていたチビッ子アディーが、突然目をキラキラ輝かせて私に話しかけてきた。


『ねえ、お姉様!私見つけたかもしれない!!』


 この頃になるとチビッ子アディーは、私の事を『お姉様』と呼ぶようになっていた。


『なぁに?見つけたって………』


 首を傾げて、アディーに訊ねると今クレープを食べながら思い付いたことを私に話してくれた。


『あのね!何れかの属性で他の属性を全部被っちゃうの!このクレープみたいに!!』


 その発想は、年ばかり取ったような記憶媒体擬きの私にとっては、思いも付かない柔軟な発想だった。


 何れかの属性で全てを包み隠す………か。


 隠すなら、光か闇になる、


 光では、上位属性の聖属性までは隠せないだろう。


 ならば、聖属性で覆うか?


 ………とんでも無い!!


 聖女となることを回避するのに、聖属性なんて使えるわけがないわ!!


 ともすれば、だ。


 深く深く暗い、深淵の闇に全てを沈め覆い隠そう。


 全てを黒く染め上げて、アデレードの持つ属性を一つと定めよう………!!

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