3.―4歳―今後の方針
翌日から三日ほど、アデレードは、熱を出して寝込んでいた。
前世の記憶を思い出した事が、余程ショックだったのだろう。
死の瞬間を思い出したのだから、無理もない。
全身から力が抜け落ち、意識も消え失せていく………その死の瞬間………。
大人の私だって、その瞬間の光景を思い出すのだって嫌な物だ。ましてや、今のアデレードは、僅か四歳。
………………無理もない。
だけど、それでも私は、小さなアデレードと話さなくてはならないことがある。
今後についてだ。
意思の疎通は、叶った。
彼女自身も、前世について思い出す素因が、確認された。
それならお互いに、統一見解と方針を導き出さないと成らない。
幼い彼女には、酷だと言うのは、理解しているけど………それでも、今決めなくては成らない。
∝∽∝∽∝∽
『アディー、私とお話しできるかな?』
見ると、顔を隠したまま、泣きじゃくっていた。
「なっ……にっ……?おねえ……ぢゃん」
途切れ途切れに答えるアディーが、振り返り答える。
こんな時、この二人の間を仕切るガラス
あの子に駆け寄って、抱き締めて慰めたい………なのにこれは、幼子と大人を切り分けるモノ。
何の為に存在しているのか、今は何となく分かるものの、やはり邪魔だ。
『あのね、貴女が思い出した事で、私達のこの先の事を決めなくてはならないの』
「この先の…こと…?」
べしょべしょの顔で、それでも何か思う所があったのか、アデレードは、顔を
「わ…私、死にたくない!……あんな、あのぐらいの年で……死ぬのは、イヤ!!」
それもそうだ。アデレードが、今回思い出したのは、17歳で死んでしまったエイジスの最後……。
アールスハインドが、巨大な魔法の暴走で崩壊し、エターナルハインド…今のこの世界を築き上げた事で、力尽きて死んでしまった……エイジスの最後の瞬間を思い出したのだ。
アールスハインドの時は、あらゆる生き物が一緒くたに存在していた為、そこかしこで争いが絶えなかった。
ついでに言うなら、魔素と言う魔法の元も無造作に溢れ返っていたせいで、扱う魔法も極端に大きすぎたのだ。
人間ですら、放つ魔法で山一つを吹き飛ばす位には……。
だからこそ、エターナルハインドでは、種毎の振り分けを行った。
基本は、人間の暮らす世界だが、そこに紐付けて、他の種の世界が存在する。
神界・精霊界・妖精界・妖魔界・魔界……等にね。
魔素についても、それぞれが能力や適性に応じて、振り分け・管理することになり、今のエターナルハインドには、自然界の運用に必要な分だけを残す形にしている。
人間の使える魔法に限界を与えたのだ。
管理された魔素についても、運用の仕方にルールを設けた。
その辺りは、長くなりすぎたから、今は省く。
『そうね、死にたくないわよね。エイジスの死は、若すぎるもの』
「私、も、死んじゃう…の?」
泣きじゃくっていた、アデレードも、少し落ち着いてきた様子で、話が出来るようになった。
『それは分からないわ。だけど、今、何もしないでいたら、その可能性は高くなるかもしれないの』
「……!!どっ、どうし、たらっ……良いっ、のっ!?」
再び、アデレードが嗚咽混じりになった。
『辛いことだけど、貴女が赤ちゃんの時の事を話すけど、良いかしら?』
コクンッと、頷いたので私は、アデレードが赤ちゃんの時に起こった事と、私の見解を話してみた。
「なら!聖女じゃ無ければ死なずに済むの?全属性も、そうね?」
『そうなのかも知れないわね。少なくとも、『聖女』で無ければ、魔力の枯渇での死を……。
全属性持ちで無ければ、魔物討伐による死を回避する確率は、上がるでしょうね』
「それなら、5歳の魔力検定までに、属性を減らして聖女を消せば良いのね!!」
こうして、小さなアデレードと、共通の認識を得ることが可能となった。
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