終章

老人との会話

桃華は、光の中に立っていた。目の前には老人が立っている。最初に、夢の中で彼女に質問をしてきた老人。そして葵たちの家にやってきて再度質問をしてきた老人だった。


 老人は、にこやかに微笑むと桃華を見つめる。


「ありがとう、桃華さん。お前さんのおかげでようやくこの役目から解放される」

「終わったんですか」


 桃華の言葉に、老人は静かに頷く。桃華は笑う。


「しかし、お前さんの人生の旅は、まだ始まったばかり。これからもまだまだずーっと続いていく」


 老人の言葉に、桃華は静かに頷く。


「そうですね。人生まだまだこれからです」


「これから、蒼真にも新たな人生が立ち現れてくるはず。お前さんたちが彼の支えになってくれることを願うよ」


 老人が少し寂し気に笑う。桃華はその言葉にはっとする。


「あなたは……、もしかして……っ」


 老人はただほほ笑むばかりである。


「お前さんや元の世界に戻った者たち、そして新たに現代の日本にやってきた者たち。その全ての人生が幸せなものになるよう、祈っておるよ」


 そう言って、老人は光の粒となって消えた。桃華は、老人が消えた場所を見つめ、独り言のように言った。


「あなたのおかげで、私は変わることができました。あなたが私をあの世界に送り込んでくれたこと、絶対に忘れません」


 そこで桃華の記憶は途切れた。

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