第5話
服毒死。
テレビでよく泡を吹いて死んでいくイメージがあって忌避していたが、ふと気づいた。
一番楽に偽装自殺ができるんじゃないか?
混ぜるな危険!の文字を見たことがある人は多いはずだ。
私はその文字が目に入らず混ぜて飲んでしまっただけ。
不運な事故だった。そう人は判断するはず。
だから自殺と思われないよう、私生活では明るい普通の子でいたのだ。
綿糸で締め付けるような苦痛だった。
普通は嫌いだし、明るい子でいるのも心が死ぬ。
身体的な死に逃げ出したいほどに、私は弱いのだと思い知らされた気がする。
暗い思考が殿としてたまるのはもう慣れたはずなのに、私はずっと息がしずらい。
そんなことより、服毒死の話に思考を戻そう。
猫をかぶっていたおかげで自殺とは疑われずにすんだはずだ。
そろそろ葬式の時間だ、いかなくては。
次は彼女だろうか。
*
お姉ちゃんが死んでしまった。
正直言ってあまり実感がわかなかった。
もう家族のムードメーカーに会うことが出来ないなんて。母も父もずっと泣き通しで家はあかりが消えたかのようにくらい。
同じ腹から生まれたのに、葬式の時しか泣けなかった私は淡泊なのだろうか。
けど、もういなくなった人間を思うのに重い感情は疲れるし、鬱々とした気分になる。
元々、人に感情を揺さぶられるのは苦手だ。
自分のことしか考えていたくないのに、わざわざ他のことに思考を割くのは勿体ないと思うのだ。
そんなことより、自分を魅力的にアピールする方法を考える方が身になる。
この状況を利用して私は薄幸の美少女になってしまおうか。
しかし、さすがにあの人の死を利用するのは気が引けるし、倫理的にも、自分の情も許さない。
だからもっと自分の内面が溢れ出るような振る舞いをしよう、魅力的大全を作っているのだ。
『私の美しい魅せ方』~第百一条~
右足に少し体重をかけ、腰をしならせ、右手を上にして腕を組み首は……。
死美感 ArY @meizen
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