第4話
涙が止まらない。年甲斐もなく、しかも人前で泣くなんて恥ずかしい、普段ならそう思ってしまうけれど、今日だけは普段の私も許してくれるはず。
死んでしまった、私のたった一人の子が。
スキー旅行の誘いを断っていれば、この結末は知らずに済んだのに。
なんでもっと強く拒否をしなかったの、いつものように仕事を入れればよかった、無意味な後悔が胸をつく。
これだけでも悲劇なのに、あの子の死体は見つかっていないらしい。
私はいつまであの子が帰ってくる希望を背負って生きればいいの?
しかも、家に帰るなり旦那が離婚などと喚いている!
お前があの子を殺したんだ!
旦那は理解できない言葉を吐いた。
このスキー旅行も最初はあなたも誘われていたのに。
なんで人のせいばかりするの!
もともと、子供たちがいなければ会話もなかった間柄だったが、離婚まで行かなくてもいいじゃない!
いつもそうだ、なぜ私だけがこんな目に遭わないといけないの?
*
これはダメだな。
私を思って泣いたのは、数分じゃないか。
悲劇の主人公は私で、父ではないのをわかっているのだろうか。
この計画は、焼却炉に捨ててこよう。
しかし父も父だ、亡くなった人間を使い念願の離婚にこぎつけるなど、前から考えていたことを私は知っているぞ。
全く、なんたる仕打ちだろうか。
私じゃなくとも、深夜にトイレにいったとき、便器に顔を押し付けるために化けて出る。
母に最後に合うのも駄目だ、美しくない。
私の考える美しい死とは、万人にどうしてあの人がなくなってしまったのだろう!
なんて悲劇なんだろうか!
しかし、後ろばかり見てられない、あの子が悲しんでしまう。
そういうお決まりの展開を、美しい死だと思っている。
私はそうありたい。
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