第3話

また死んでみた。次は凍死だ。


自殺サイトに書いてあったスキー場で、事故に見せかけた自殺をしてみた。

凍死はとてもきれいに死ねるとコメントされていたから、わざわざ遠出をしてきたのだ。


信憑性など、欠片も無い情報に踊らされる姿は見れたもんじゃないな。


生粋のインドア派な私には、遠出なんて面倒で仕方ない。

何でこんなことしているのか、時々わからなく……ならないな、うん。

常に死にたいと思っているじゃないか、何を考えているんだ私は。

寒いから思考がまとまらなくなって来ているのかもしれない。


まぁ、死んでみた感想としては期待以上にきれいに死ねたということだ。

準備万端で来たから当たり前なのだが、不確かな情報ほど怖いものは無いな。


場所は決めたが、さて、どう死のうか。

楽しい悩みに頭を捻らせていると、テレビを見ていた父が「気持ち悪いな」と嫌悪の声を上げた。


ミイラの特集なんてものを見るなんて、父らしくないな。どこのターゲットを狙っているのか知らないが、迷走しているじゃないか。


しかし、その迷走に私は助けられた。

薬漬けにして雪山に放置すると言う、人身御供の儀式なんてものがあるとは知らなかった。


これは……私の死が、何千年と持つということか。

千年も未来の人間に労われ同情されるなんて、私はこんなに幸せでいいのだろうか?


特につらい過去があったわけでもないし、人に自慢できるような頑張りもしてきていない。

ほどほどの幸せを享受してきたこの私が、巨大な幸福を掴めるなんて夢のようだ。

しかし、その幸せが私を殺すのだろう。


葬式がまた始まった。次はだれだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る