第2話
涙も出ないということはこういう事か。
知りたくもなかったが、葬式を進行しなければならない状況では都合がよかった。
無意識に俯いていた頭を上に向けると、遺影が目に入る。
ぼうっと眺めていると、可哀想だった娘との思い出が溢れてきた。
あの子は不幸な子だった。
その言葉を引き金に、俺の思考は最初の不幸を再生し始めた。
曖昧だが、確か学校内でのいじめが不幸の始まりだったはず。
俺達から生まれた子ならやり返してやればよかったのに、なぜそうできない子に育ててしまったんだ?
周りからも教育の仕方が悪いと、俺達ばかり責められて。
だけど二人三脚でやっと、五年の時を経てやっと!未来への希望が見え始めたのに!
どうして今なんだ、どうして海へ行くといったのを止めなかったんだろうか。
あの時、最後の話をしたのは俺だった。
こんな死に方、知り合いに知られたらまた俺が悪いなどと言われる。
不幸な一家とも思われてしまう。
また親失格なのだろうか、また俺のせいなのだろうか。
*
これはだめだな、うん絶対に駄目だ。
溺死で死んだ場合のイメージトレーニングをしたが、この結末は私しか幸せになれない。
最後の話し相手が父の場合、鬱になる結末にしかならないのかもしれない。
それは私の本望ではないし、少しは悲しんでくれたかもしれないが、私が死んでもなお人目を気にしている。
それは、あまり美しくない。
死に方は悪くはなかったが、死んだ後のおきみやげが大きすぎたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます