第2話

涙も出ないということはこういう事か。

知りたくもなかったが、葬式を進行しなければならない状況では都合がよかった。


無意識に俯いていた頭を上に向けると、遺影が目に入る。

ぼうっと眺めていると、可哀想だった娘との思い出が溢れてきた。


あの子は不幸な子だった。

その言葉を引き金に、俺の思考は最初の不幸を再生し始めた。

曖昧だが、確か学校内でのいじめが不幸の始まりだったはず。


俺達から生まれた子ならやり返してやればよかったのに、なぜそうできない子に育ててしまったんだ?

周りからも教育の仕方が悪いと、俺達ばかり責められて。


だけど二人三脚でやっと、五年の時を経てやっと!未来への希望が見え始めたのに!


どうして今なんだ、どうして海へ行くといったのを止めなかったんだろうか。

あの時、最後の話をしたのは俺だった。


こんな死に方、知り合いに知られたらまた俺が悪いなどと言われる。


不幸な一家とも思われてしまう。

また親失格なのだろうか、また俺のせいなのだろうか。



これはだめだな、うん絶対に駄目だ。

溺死で死んだ場合のイメージトレーニングをしたが、この結末は私しか幸せになれない。


最後の話し相手が父の場合、鬱になる結末にしかならないのかもしれない。

それは私の本望ではないし、少しは悲しんでくれたかもしれないが、私が死んでもなお人目を気にしている。


それは、あまり美しくない。


死に方は悪くはなかったが、死んだ後のおきみやげが大きすぎたのかもしれない。

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