3 不当な扱いと成功の因果
次はいわゆる異世界系の追放モノで考えてみる。
これまでも発端は私のカンなので、何も問題はない。
さて、
ギリシャならオデュッセウス、日本だったら
昔話でだと
『グリム童話』
KHM9「十二人兄弟(Die zwölf Brüder)」
KHM22「なぞなぞ(Das Rätsel)」
KHM52「つぐみひげの王様(König Drosselbart)」
KHM65「千枚皮(Allerleirauh)」
KHM67「十二人の狩人(Die zwölf Jäger)」
KHM76「なでしこ(Die Nelke)」
KHM88「歌ってはねるひばり(Das singende springende Löweneckerchen)」
KHM89「鵞鳥番の娘(Die Gänsemagd)」
KHM127「鉄のストーブ(Der Eisenofen)」
KHM198「マレーン姫(Jungfrau Maleen)」
イギリス
「
イタリア
「塩みたいに好き(Bene come il sale)」
「最初に通りかかった男に嫁いだ王女たち(Le Principesse mariate al primo che passa)」
「蛇の王さま(Il Re serpente)」
ロシア
「銅、銀、金の三つの国(Три царства --- медное, серебрйаное И золотое)」
「不死身のコシチェイ(Кощей Бессмертный)」
スペイン
「食べ物にかける塩のように(Como la vianda quiere a la sal)」
「世界の三つの不思議(Las tres maravillas del mundo)」
「黒い狼(La loba negra)」
などである。
……KHM88「歌ってはねるひばり(Das singende springende Löweneckerchen)」を考えるとギリシャ神話派生の『黄金のろば』のプシューケーの話もそうだな。
あと、異世界転生・転移は単純にこの系譜の延長線の果てなんじゃないかとかも言われる。
『グリム童話』
KHM5「狼と七匹の子ヤギ(Der Wolf und die sieben jungen Geißlein)」
KHM46「フィッチャーの鳥(Fitchers Vogel)」
KHM57「黄金の鳥(Der goldene Vogel)」
日本
『古事記』の大国主と八十神の八上比売への求婚
「なら梨とり」
「蛇婿入り」
ブルガリア
「カメのお嫁さん」
ロシア
「蛇婿」
「勇士と若返りのりんごと命の水の話(Сказка о молодце-удальце, молодильных йаблоках И живой воде)」
「水晶の山(Хрустальнайа гора)」
「暁、夕べ、夜更け(Зорька, Вечорка И Полуночка)」
「
「イワンのばか(Иванушка-дурачок)」(「イワンのばか」というのはロシア民話でよく出てくる名前であって、今回はトルストイのを指しているわけではない)
イギリス
「ノロウェイの黒い牛(Black Bull of Norroway)」
「赤い毛むくじゃらの男(The Little Red Hairy Man)」
フランス
「ビアニックと人食い鬼(Bihanic et l’Ogre)」
イタリア
「
「地獄に堕ちた女王の館(Il palazzo della Regina dannata)」
「銀の鼻(Il naso d'argento)」
ドイツ
「命の水とハリネズミ」
伝説だと、スキタイの始祖スキュテスも末子だが父親であるヘラクレスの弓を引けたのがスキュテスのみだったために末子でありながら、王位についたという。
ロシアの「
最後の
これも読んで字の如し。
『グリム童話』
KHM13「森の中の三人の小人(Die drei Männlein im Walde)」
KHM21「灰かぶり(Aschenputtel)」
KHM24「ホレおばさん(Frau Holle)」
KHM47「ネズの木の話(Von dem Machandelboom)」
KHM135「白い花嫁黒い花嫁(Die weiße und die schwarze Braut)」
日本
「
「朝日長者と夕日長者」
『落窪物語』
ブルガリア
「月になった金の娘」
中国
「葉限」
「
「賢い
イギリス
「この世の果ての井戸(The Well of the World's End)」
「ちっちゃな小鳥(The Little Bird)」
イタリア
「カナリア王子(Il Principe canarino)」
「鋤を取らねば笛ばかり吹いていたジュゼッペ・チューフォロ(Giuseppe Ciufolo che se non zappava suonava lo zufolo)」
「ガット・マンミオーネと猫たち(Il Gatto Mammone)」
フランス
「猫とふたりの魔女(Le Chat et les Deux Sorcières)」
「フロリーヌ」
スペイン
「ロザリオのマリア(Maria del Rosario)」
ロシア
「寒の太郎(Морозко)」
「雌馬の頭(Кобилйача голова)」
「ヤガーばあさん(Баба-яга)」
「知らん坊(Незнайко)」
……などなど、掘れば掘るだけ出てくる、神話というより、昔話に特に顕著に現れる型である。
また、この辺りは親和性が高く、例えば日本なら「鉢かづき」は
KHM57「黄金の鳥(Der goldene Vogel)」や類話のロシアの「命の水と若返りのリンゴ」は
言い換えれば、「栄光を掴むための困難のベースが周囲からの【不当な扱い】である」。
……
また、
それらと比べれば、
なお、
さて、いわゆる昨今の追放モノは「その実力や才能の真の価値を認められず、不当に扱われた末に追放されるが、真価を発揮して成り上がったり、報復する(或いは追放した側はいつの間にか報いを受けてる)」という一つの型である。
……言葉尽くして比べるまでもなくね? と言ってしまうと、わざわざ書いてる意味がなくなってしまうのだけど、
ただし、あくまで傾向の話ではあるが、
そもそも、
つまり、悪意の有無でここは大きく左右される。
一方、
グリム童話のKHM21「灰かぶり(Aschenputtel)」は姉達は一人は足のつま先、もう一人は踵を失い、加えて二人とも両の目を失う。足は継母と揃って欲かいた結果なんだけど、両の目は鳩が抉ってる段階で、キリスト教の世界観に照らし合わせれば、三位一体の一角である聖霊の象徴によって
KHM24「ホレおばさん(Frau Holle)」、イタリアの「ガット・マンミオーネと猫たち(Il Gatto Mammone)」、ブルガリアの「月になった金の娘」は似たような形で、親切で働き者だった
フランスの「フロリーヌ」、ロシアの「寒の太郎(Морозко)」、ロシアの「雌馬の頭(Кобилйача голова)」も同じような形だが、最終的に実子に与えられる罰は死であり、「雌馬の頭(Кобилйача голова)」では食われて骨にされている。
唯一、ブルガリアの「月になった金の娘」では、実子が罰を与えられたことにキレたしぶとい
ロシアの「知らん坊(Незнайко)」、イタリアの「カナリア王子(Il Principe canarino)」、フランスの「猫とふたりの魔女(Le Chat et les Deux Sorcières)」では、追い出された
KHM13「森の中の三人の小人(Die drei Männlein im Walde)」、KHM135「白い花嫁黒い花嫁(Die weiße und die schwarze Braut)」だと、美しく王様と結婚する
王様は
KHM47「ネズの木の話(Von dem Machandelboom)」、イギリスの「ちっちゃな小鳥(The Little Bird)」では、
ロシアの「ヤガーばあさん(Баба-яга)」では、ヤガーばあさん(=ロシアの
「葉限」の
「
日本の「朝日長者と夕日長者」、イギリスの「この世の果ての井戸(The Well of the World's End)」、イタリアの「鋤を取らねば笛ばかり吹いていたジュゼッペ・チューフォロ(Giuseppe Ciufolo che se non zappava suonava lo zufolo)」、中国の「賢い
そもそも、継子のその後を認識してるのはこれらの中だと、イギリスの「この世の果ての井戸(The Well of the World's End)」、中国の「賢い
知ってるパターンの二話における
というわけで、大なり小なり、報復があることの方が多いのである。
……道徳的に理屈が通っているから、勧善懲悪は文句もつけにくいのよね。
というわけで、物語の類型からの異世界系の追放モノへの影響をまとめるとこうなる。
① 「特殊で貴重な生まれでありながら、困難と対峙させられる」点は
② 「不当な扱いという困難を乗り越えて成功を納めた」点では
③ さらに②の後に「その上で、報いを受けさせる」のは
④ ①~③の影響を
よって、結果として、物語枠組みとしてのおきまりというコンテクスト上では、もともと存在している型を複合的に流用した形となるため、そもそもが意外と受け入れられやすいタイプの話であると考えれられるのである。
ハーレムと
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