おまけ 余談あるいは何本かの蛇足
今回、今まで積ん読してた民話・説話系の本をやや斜め読みとは言え、目を通したわけだけど。
訳してあるのもあるだろうけど、国によって、やっぱりこう色が出ますな。
イギリスはちょっと「つん」とした感じがして、イタリアはあけすけな明るさがあって、スペインはイタリアより少し湿った明るさで、ロシアはこう……重量がある鉛色。
……岩波文庫の民話系、コンプリートしたいなとは思うけど、フランス、ハンガリー、シベリア復刻してくれないかな。ロシア最近復刻だし。
あとちくま文庫のペンタメローネも復刻して欲しいなあ、Amazonとかプレミアついちゃってるんだもん。
あとあと平凡社ライブラリーを量置いてる書店増えねーかなあ……。
そして何故近現代ばかりライトな文学研究の本がでるのだろう……うーん古文だとそんなにハードル高いの? でも研究本ならふっつーに解釈もつくで。
ぐぎぎ、でも私自身もライトに書けてるかというと、ぱっと見行けそうな生クリームたっぷりケーキを食べて後悔するぐらいの重さはあるかもしれぬ……。
と言いながらエクストラステージを考えているので、いつか公開したいですね。これでも普通に会社員(SE)やってるただの日文卒なんだぜ。
などなど思うところはいろいろあるわけですが、以下、読んでツッコミせざるを得なかったお話。
・「メボウキの株(La mata de albahaca)」(スペイン民話集)
男女が互いにからかい合う話。「花薄荷の鉢(Il vaso di maggiorana)」(イタリア民話集)とは類話。
ただこっちにしかないのが、治療と称して男のケツの穴に、
・「謎王女(El acertijo)」(スペイン民話集)
『グリム童話』のKHM22「なぞなぞ(Das Rätsel)」とかトゥーランドットの類話。
「私の解けない謎を出した男と結婚するわ! 私が解けたら死刑ね」な王女様への求婚に向かう道すがらに起きたことをなぞなぞにして出題した結果、王女様がどうしても解けない謎に仕上がり、でも結婚が嫌な王女様はこっそり答えを聞きに来る。でも抜け目ない主人公はそのカンニングの証拠をしっかり取っといて、王女様は結婚しなきゃいけなくなる。
KHM22「なぞなぞ」では王女様はマントを奪われて、それを証拠として提示される。が、この「謎王女」では、答えの見返りとして、王女は一晩の共寝と名前入りの指輪と下着を差し出す羽目になる。
ここまではまだいいんだ。奪われないようにってことだとは思うけど、その下着を身につけるのはどういう了見かなー主人公……
・「姦淫の木(Xuan, Marica y el cura)」(スペイン民話集)
司祭と浮気してる妻が夫を騙して、夫がいちじくの木に登って実を取ってる間、目の前でやらかす話。
うん、いちじくの木ってのがね、もう、ね……いちじくってそういうモチーフでもあるものね、フィグサイン然り……
というかですねー、奥さんのですねー、騙すために言った内容がですねー、R18BLじゃねーかおめーなんですよねぇ。
・「花薄荷の鉢(Il vaso di maggiorana)」(イタリア民話集)
先述の通り「メボウキの株(La mata de albahaca)」(スペイン民話集)とは類話。同本収録の「籠のなかの王様(Il Re nel paniere)」とも類話。
「メボウキの株(La mata de albahaca)」と違う点で「籠のなかの王様(Il Re nel paniere)」と共通の点がびっくりポイント。
嫌がらせの応酬を繰り返して、最終的に男がキレて、娘に結婚を申し込み、初夜の段でナイフで娘をぶっ刺す。が、娘はそれを読んでいて、心臓部分に生クリームやらはちみつやらを入れたパン生地で作った人形を身代わりにする。
返り血(生クリーム・はちみつ)が口に入った男が「お前は血まで甘いなんて、なんて女を殺してしまったんだ!」と嘆いたところで娘が飛び出して、ネタばらしからのめでたしめでたし。
ちょっとですね、ラテンのノリ……?って困惑したんですよね。
・「プレッツェモリーナ(Prezzemolina)」(イタリア民話集)
『グリム童話』のKHM12「ラプンツェル(Rapunzel)」の類話(このタイプはさかのぼると『ペンタメローネ』の「ペトロシネッラ(Petrosinella)」に行き着くらしい、あくまで記述されたものは)
同名の民話も数種類あるらしいが、そのルーツ含め、多くは呪的逃走(「三枚の御札」やイザナギの黄泉からの逃走みたいなやつ)を後半に持つ。のだが、このお話はそうではない。
その代わりに名付け親の隣家の魔女(または妖精)たちに難題を押し付けられて食われそうになる少女プレッツェモリーナを助けるのは、この魔女(または妖精)たちの
このメメ、最終的に4回助けてくれるのだが、内2回は「キスしてくれたら助けるよ」などとのたまう。
なお、プレッツェモリーナはこれに対して、「お前にキスするぐらいなら魔女に食われた方がマシ!」と答える、2回とも。メメはそれを「いい返事だから」と言って、結局助けてくれる、2回とも。
最後の最後に魔女(または妖精)たちをすべて殺したところで、プレッツェモリーナはメメにキスをして、晴れて二人は結ばれる……のだが、最初読んだ時は断られるたびに「メメぇ、お前それでええのん?」と思った。二回目読んだら、「メメからかすかにヤンデレの匂いを感じる……」となった。翻案してゲームにしてみたいね(願望)
・「金の剛毛の豚、金の羽根の鴨、金の角の鹿、金のたてがみの馬(Свинка золотайа щетинка, утка золотые перышки, золоторогий олень и золотогривый конь)」(ロシア民話集)
長い。タイトルが長い。死ぬほど長い。でもこれたぶん原文忠実訳なので、原文タイトルも長い。
岩波文庫で左ページ上の章タイトルが略されるの初めて見た。結果豚と馬しかいない。
・「知らん坊(Незнайко)」(ロシア民話集)
継子いじめ。主人公の知らん坊を継母が毒で殺そうとして、三回全部、知らん坊の助言者の馬の忠告によって失敗するのだが……
一回目、敷居に毒をセットするも、馬は先に犬が敷居をまたぐように知らん坊に忠告する。敷居をまたいだ犬はこなごなに飛び散る。
二回目、飲み物に毒をセットするも、馬は窓の外に捨てるように忠告。捨てた途端地面が破裂。
三回目、シャツに毒を仕込み、蒸し風呂に行かせて着替えさせようとするが、馬はシャツを持って来た小僧に着せるよう忠告。着せられた小僧は息絶えるが、即座にシャツをひっぺがして暖炉に放り込むと、小僧は息を吹き返した代わりに暖炉はこっぱみじん。
……流石に小僧はそこまでじゃなかったけど、なんで、この毒、物理的なの?
・「愚かな娘」(イソップ寓話集)
完全によいこにきかせられないイソップ寓話。
日本語訳がめちゃくちゃ頑張ってるが、文脈上どう足掻いても男がロバといたしているとしか読み取れない。この男、通りすがりなんだけどいきなり何なの……え、なんで人目につくところで……それ以外の内容も「えぇ……」なんだけど……
イソップ寓話集もいろいろ底本があるっぽく、その内の一つにしか載ってないっぽいんだけど、ちょっと頭が追いつきませんね。
・「首無し太守」(『捜神記』巻十一の五)
神術を心得ていた太守が賊に殺されたけど、首がないまま馬に乗って戻ってきた話。
そんな状況での最期の言葉が「首がないのもいいもんだ」はないと思う。
・「羽衣の人」(『捜神記』巻十四の十)
ある人が畑仕事してたら目の前に唐突に羽衣を着た男が降りてきて、からの突然R18BLが展開された上に男性妊娠とか、これも頭が追いつかない。
しかも帝王切開で腹から蛇が回収された挙げ句、この
・「脳の中の蛇」(『捜神記』巻十七の十三)
とある男の鼻の穴から入って頭の中を住処にしてしまった蛇の話。
「脳の中で何かを食べている音が聞こえる」とかめちゃくちゃホラーなのに、「病気にかかったりはせず、頭がうっとうしいだけ」で済むっていうのがこう、スケールが、違う……。
西行のところでも書いたけど、古事談の一話目も相当なのよねー。
とはいえ、さらっと事実だけ書いてあるんだけどね……でもね、つっこまずにはいられなかったよね……
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