5 外の権威の例とその継承性について
さて、「外の権威」を
まあ、「内」が「われわれ」であるならば、それは主観であり、その反対である「外」、「かれら」は客観であると考えられるので、当然といえば当然。
……ミステリが好きな人は、「内」は「身内の証言するアリバイ」で、「外」は「他人が証言するアリバイ」と置き換えるとわかりやすいかもしれない。
そして、これは世界的に普遍的な考え方である。
端的に言えば、
ギリシャ神話においては、神の血――特に主神ゼウスの――を引くことがそうなる。
結果、みんなゼウスの子孫を主張するあまり、ゼウスはギリシャ神話きってのプレイボーイと化したわけである。そのせいで怒ってばっかなイメージがついてしまったヘーラーさんが可哀想だけど、「ヒーロー(hero)」という言葉はこのヘーラー('Ηρα)さんが起源とされるので、ヘーラーさん自身もまた外の権威の一種なのである、うん。
『古事記』においては、
・「天」の
・「山」の
・「海」の
・「根の国」の
これら「異界」からの権威を天皇の王権の根拠として語っている。
がっちがちに固めに来ている感がすごい。
神に限らず、外=異界であることが重要とわかる例で言えば、フィジーの酋長はわかりやすく、酋長を指す呼び名自体が「よそ者」であるという。
というのも、初代酋長は島の外からやって来た若者とされるからだ。
何も単純な権威だけではない。
異能・性能においても異界という属性は影響を持ち、その権威に保証されたものは次第にその権威の元との同一視が行われるようになる。つまりは継承性がある。
例えば
・『遠野物語』の「迷い家」において、後から流れてきた椀はそのもともとの所属が山=異界であるが故に、その椀からは雑穀が尽きない。
・「浦島太郎」における玉手箱は、海の底の竜宮=異界から齎された箱であるが故に、竜宮と地上の時間の差分を閉じ込めていた。
・仏教における僧は、仏陀と同じ解脱という高み=異界に向かうための修行を行うため、その権威と紐づくと同時に、救済を語る「異界」である仏教に反する他者を害する「異界」である妖怪や魔を祓うと考えられる。
・同じく『グリム童話』の「青いランプ」で井戸の底=異界にあった青い火のランプは、その火をパイプに受けさせることにより魔法のランプの精のような黒いこびとを呼び出すことができた。
特にキリスト教における聖遺物は、権威の継承性の例として最適である。
何故なら、「キリストの名の元に起きた奇跡」などの「キリストによる権威」を受けた「聖人」が現世に「遺した物」、それが「聖遺物」であり、大元が「キリストの権威」ではあるが、実際には「聖人」そのものにも一定の権威があり、「聖遺物」それ自体にも権威性がある。
更には「キリストの権威」それ自体もまた、本来的には「唯一神の権威」である。
……これを「権威のタコ足配線」と身も蓋もなく表現したのが、大学時代の私です(真顔)
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