1-2 説話集における空海 『今昔物語集』の空海まとめ
さて、『今昔物語集』の成立年代については、平安後期と言われている。
収録説話にて前九年の役(1051~1062年)・後三年の役(1083~1087年)の説話を収録(内容丸々欠があるからあるいはその予定)している一方、その後の保元の乱(1156年)をはじめとする源平がらみの合戦はタイトルすら挙げられていないことから、後三年の役以降から保元の乱までの間の成立が有力視されている。
ただし、他文献への記載状況から、一定期間死蔵状態であったことがうかがえる。
また、その収録話の大半が仏教説話であり、他仏教説話集(『日本霊異記』や『本朝法華験記』等)を典拠とする話が収録されているため、少なくとも作者は仏教に対して何かしらの志を抱いていたと推測されている説話集である。
具体的には全三十一巻、内欠三巻、一~五が天竺、六~十が震旦=中国、十一~三十一が日本となっている。
加えて天竺は全編仏教説話で構成され、震旦は一巻欠けているが、四分の二は仏教説話であり、日本における話では巻十一~二十(内巻十八のみ欠巻)が仏教説話である。
空海さん各話をざっくりまとめると
巻十一
九
→空海の出自から唐への留学を含めた空海が仏教を学んだ遍歴とその周囲のエピソードをまとめた総集編である。
「幼い頃は神童で、唐に渡っても、戻って来てもいろいろと霊験あらたかやったんやで」というエピソード盛り合わせのお話。並々ならぬ仏教への学習欲だったり、唐で菩薩に試されたり、夢枕のおかげで無事に師匠ができたり、いろいろが過ぎて文字数的に困る。困る。
ちなみにここで、文字通り投げっぱになっている
巻十四
四十
→空海さんが修円という僧にちょっかい出したとこから始まる、「死ね死ね死ね!」という呪詛合戦(小学生かな)で策を弄して勝利を得た話である。一言で言うと、大人げない。おまけにちょっかい出したの空海さんやんけ。
ただ、その修円という存在は空海さんの将来の悪行を未然に防ぐための菩薩の思し召しだったよ☆という話でもある。
巻十四
四十一
→空海さんが雨乞いしたら、凡人には見えない霊験あらたかな竜が現れて、無事雨が降ったよという話。雨乞いが神泉苑で行われる起源についての話でもある。
各話の収録巻を考えると、さすがの空海さん。
見事に全部仏教説話扱いなんだな、これが。
いや、個人的に巻十四の四十が他よりもずっと俗っぽくて、もやっとを抱きはするけど。するけど。
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