第10話 洞窟探検①

昨日ログアウトした後に気になったこととかをネットで調べてから、軽くシャワーを浴びて布団に入ると時計は二時半を回っていた。

次の目を覚まして時計を見ると、もうすでに9時を回っており、学校には二時限目から、盛大に遅刻してしまった。授業も話半分といった感じで、度々ウトウトして寝そうになってしまった。


―――昼休み―――


「よう陸斗。お前が寝坊とか珍しいな」


僕が机に突っ伏して仮眠を取っていると、隣から声を掛けられた。


「んん?なんだ、そらか」

「なんだってなんだよ。ってかほんとに眠そうだな。昨日そんなに寝るのが遅かったのか?」

「まあね」

「珍しいな、遅くまでなにやってたんだよ」

「ゲームだよ。ゲーム」

「え?陸斗がゲーム?ゲームボーイか何かか?」


宙は手でポータブルゲーム機を弄るジェスチャ―をする。


「違うよ」

「じゃあ何やってるんだよ」

「MAGIC&SWORD QUESTってやつだよ。知ってる?」

「ああ、知ってるよ。俺もやってるしね。ってか陸斗持ってたのかよ」

「この間福引で当たったんだよ」

「運のいいやつだな!今度一緒にやろうぜ」

「おう、おけ」


こんなに身近に同じゲームをやってる人がいるとは。まあ超人気ゲームだから不思議ではないけど。


「で、神座どこにした?」

「僕は木の神にしたよ」

「マジで?!俺も木の神だよ」


俺は驚きで机に突っ伏していた身体を起こす。


「俺はルシファーにしたけど、陸斗は?」

「僕はミカエルにしたよ」

「珍しいな」

「そうか?」


俺はカバンから弁当を取り出し、机の上に広げる。宙も自分の弁当箱を持ってきて、俺の正面に座り一緒に食べ始めた。


「~それでさ、なかなか『紫電華』が手に入らなくてさ」

「それなら持ってるよ。あげようか?」

「マジで?助かるわ」


それから昼休みが終わるまで『MSQ』の話に華を咲かせ、今度『MSQ』内で会う約束をして、午後の授業に臨んだ。


◆ ◆ ◆


『プレイヤー名:グリーンがログインしました』


僕がログインすると同時に視界端のログにそう表示された。


「リク?今どこにいる?」


グリーンさんからチャットが送られてきた。

『MSQ』でのチャットは思考での入力だから簡単で楽だな。


「僕はメイリーンの宿屋に居ますよ」

「じゃあ、噴水広場まで来て、私もすぐに向かうから」

「分かりました」


僕は宿屋から出て、噴水広場を目指した。まだ宙はログインしていないみたいだ。


◆ ◆ ◆


「お、きたきた。こっちだよ」

噴水広場の噴水に腰を掛け、手を振っているグリーンさんを見つけて、小走りで近づく。


「すみません。待ちました?」


宿屋からかなり急いできたんだけど、もしかしてグリーンさんここでログインしたんじゃ……。


「今日もレベリングする?」

「お願いします」

「じゃあ、行こうか」


僕とグリーンさんはポータルを目指して歩きだした。途中でグリーンさんのリアルでの面白話を聞いたりしていると、すぐにポータルに着いた。グリーンさんは学生らしい。


◆ ◆ ◆


僕はグリーンさんに新しいポータルに連れてきてもらった。場所は『ドーラの水源(上流)』の近くにある『ドーラの洞窟』だ。今更だけど『ドーラ』ってなんのことだろう?

『ドーラの洞窟』は虫系の魔物が多く、蜘蛛とか芋虫とか嫌がられる姿ばかりが出るとグリーンさんに教えてもらった。洞窟の最深部にもポータルがあるらしく、今日はそこを目指す。


かなりの時間歩いたが、なかなか魔物と遭遇エンカウントしない。


「そろそろ敵が出てきてもいいんだけど……」 


グリーンさんもこんな事態は初めて見たいで、かなり困惑している。


「上位レベルの人たちが狩りに来てるのかな?」

「少しここらへんで待ってみますか?」

「そうしようか」


僕とグリーンさんは洞窟の隅にある突出した岩に腰を掛け、僕はポーション作りを、グリーンさんは武器の手入れを始めた。

数分経っても中々敵がやってこないので、僕たちはすこしだけリアルの話をし始めた。


「え?グリーンさんって同じ高校だったんですか?!」


僕はグリーンさんの話を聞いていて、聞き覚えのある通りや地名が多く、もしやと思い聞いてみたら、案の定僕と同じ高校だったよ。学年は一つ上の二年生。やっぱり名前はみどりさんだった。


「でも、本当に出てきませんね。ね、みどりさん」

「ちょっと、そっちの名前で呼ばないでよ。私の名前はグリーンでいいの!分かった?陸斗?」

「ちょっと、僕もリクでいいですよ!」


互いに笑い合い、時間をつぶすが本当に敵が出てこない。


「もっと深くまで行ってみますか?」

「そうだね。ちょっと気になるし行ってみようか」


僕たちは重くなった腰を上げ、洞窟の奥へと進んでいった。

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