第9話 レベルアップ

「そっち行ったよ」

「了解!」


こちらに向かって草花を掻き分け、三体の一角兎ホーンラビットがグリーンさんに追われてこちらに向かってくる。


キュビピィッ


一角兎三体が三方向からこちらに向かって角を立てて迫ってくる。

僕の武器は両手剣。前と同じように上から叩き切る。まずは一体。ほかの二体の突進は一旦身を反らして躱す。

他の二体を確実に仕留めていく。


「もっかいお願いします」

「了解ー」


グリーンさんにもう一度、一角兎を追い立ててもらう。

これは僕のレベル上げのためだ。僕の今のレベルは3.それに比べてグリーンさんのレベルは12。レベルに差があるとコンビネーションが取りにくいらしいので、グリーンさんにはレベル上げを手伝ってもらっている。

もう一度、次は二体の一角兎がグリーンさんから逃げてこちらに突っ込んでくる。今度は二体同時に突っ込んできたため、横一列に並んだところで二体同時に切り上げる。一体は真っ二つになり、もう一体は空中に飛ばされ、落下のダメージで光の粒子に変わっていく。


ピロリンッ


電子音が聞こえる。


「お!レベルが上がったんじゃない?」


僕はステータスを開いてレベルアップを確認する。


――――――――

 ■STR【ストレングス】25(+11)


 ■VIT【バイタリティ】23(+11)


 ■INT【インテリジェンス】21(+9)


 ■MND【マインド】21(+9)


 ■AGI【アジリティ】23(+8)


 ■DEX【デクステリティ】25(+10)


 ■LUK【ラック】25(+1)

 ―――――――――

このゲームはレベルが上がるとステータスも一気に更新されるらしく、一角兎の突進で減っていたHPもレベルが上がることで完全回復している。


「おー、やっぱりミカエルだと横一列に上がるね。綺麗だね」

「ちょっと、勝手に人のステータス見ないでくださいよ」

「ごめん、ごめん」


っグリーンさんは軽く笑いながらレベルアップを祝ってくれる。


「これなら次の場所行っても大丈夫かな?」

「多分大丈夫だと思いますよ」

「じゃあ、行こうか」


そういって僕はグリーンさんの後を追った。


◆ ◆ ◆


僕はグリーンさんと一緒に以前目指していた「ドーラの草原」にやってきた。来る途中でマッドウルフにやられたことを話したら盛大に笑われた。

『ドーラの草原』にはポータルのすぐそばに花畑が広がっており、花畑には貴重な薬草などが群生している。もちろん誰でも採っていいらしい。もちろん常識の範疇で。少し花畑を見回すと、昨日『薬草図鑑』で見た『紫電花』というレア度の高い花も咲いていた。帰りにでも採って帰らないと。


「ここから少し歩くけど、レベル上げにもってこいの狩場があるんだ」


ポータルから少し歩いて、花畑を越え、だだっ広い草原にやってきた。辺りは草、草、草。広大な大地が見渡せる。

しかし、見えるのは草花ばかり。魔物の姿は一切見えない。


「もうちょっと待っててね」


グリーンさんにそう言われ数分待っていると、空中に薄い灰色の靄が集まりだし、一つの形を形成する。しばらくその光景を見守っていると、一体の灰色の毛を持った狼が姿を現した。


(鑑定!)


灰色狼グレイウルフ】 Lv:7

 ―――――――――――

 ■狼の姿をした魔物

 ドロップアイテム /??? ??? ??? ???

 ―――――――――――


「そいつは『グレイウルフ』。素早いから気を付けて」


灰色狼はすでにこちらに気づいているようで、体はそっぽを向いているが、顔はしっかりとこちらを向いて警戒している。

今回は僕一人で倒すため、グリーンさんは邪魔にならない場所に腰を下ろしこちらを眺めている。

僕は剣を中腰で構え、切っ先を灰色狼に向ける。灰色狼もこちらの意図を察し、喉を鳴らし、跳躍の構えをとる。

額を汗が滴り落ち、剣を握る掌に汗が滲む。

灰色狼は地面を力強く蹴ると、ジグザグに動きこちらを翻弄する。


ガキンッ


剣と牙が交差する。灰色狼は後ろに下がると、再び跳躍のためにかがみ込む。

今回はまぐれで受けられたが二度目はないだろう。

二度目の交差。灰色狼の爪が僕の体に触れ、赤紫色のパーティクルが飛び散る。視界端にあるHPバーが四分の一ほど削られた。

僕が再び剣を構えると、待っていましたとばかりに飛び込んでくる。僕は体を横に反らし、上段で剣を構える。剣を構えると、剣が淡い青色のエフェクトを放ち、持っている剣が少し軽くなったような気がした。

灰色狼は真っ直ぐ、体があった所に飛び込んでくる。そこを僕は剣で叩き来る。

剣を振り下ろすと、紅い衝撃波のエフェクトが発生し、灰色狼は真っ二つに両断され、光の粒子となり、消えた。

さっきのやつは『武技』と呼ばれる一種のスキルのようなものだ。さっき放った『武技』は『剣術の心得』スキルの『溜め斬り』だ。特定のモーションを取り、スキル発動を呼び掛けると、スキルが発動する。

僕はアイテムボックスからポーションを取り出し、胃の中に流し込む。うぇ


「結構強いですね」


グリーンさんと感想を言い合っていると、次は二つ、靄が集まり灰色狼が生まれる。


「じゃあ、リクは一体、私も一体倒すから」

「わかりました」


そういうとグリーンさんは一体の灰色狼に走っていった。流石はレベル12だ。両手に剣を構え、すれ違いざまに一閃。一撃で仕留めている。

僕はまた中腰で剣を構える。今回の灰色狼はちょっと行動パターンが違うみたいだ。僕の周りを牽制しながらグルグルと周っている。

先に痺れを切らしたのは僕だった。剣を下段で構え直し、灰色狼に向かって行く。下から斬り上げる算段だ。

灰色狼との距離は目前。その時、灰色狼が僕の足元を駆け抜けた。灰色狼は股下を抜けるとそのまま切り返し、僕の腰辺りに噛み付いて来た。徐々にHPバーが減っていき、レッドゾーンに突入した。

僕は身体を翻し、灰色狼を振り離す。そしてそのまま剣を中段で構えると、剣が紅いエフェクトを放ち、「一閃」を放つ。横薙ぎに放たれた剣筋が灰色狼の体をとらえ、真一文字に切り裂いた。


「いやー、結構苦戦してたね」

「さっきのより強かった気がします」

「たまにいるんだよね。さっきのはレベル9もあったからしょうがないよ」


それは先に言っといて欲しかったな。


それからも四時間ほど『ドーラの草原』で灰色狼の討伐を続け、レベルが8まで上がった。


「そろそろ私リアルで用事があるから落ちるね」

「分かりました」

「明日もログインする?もしよかったらログインしたら一声かけてほしいな。じゃ、またね」

「はい、ありがとうございました」


じゃ!と言ってグリーンさんはログアウトしていった。

グリーンさんが帰った後も少しだけ『ドーラの草原』でレベル上げを続けた。今回はマッドウルフが出ることもなく、死に戻りすることなく「メイリーン」に帰ることができた。


◆ ◆ ◆


「メイリーン」に着くと、宿屋に戻り一部屋借りる。

一時間ほどポーションを作ると、また強制ログアウトした。一時間の成果は『ポーション』5本、『ハイポーション』3本、『痺れ薬』2本だった。


─────────────────


 ■STR【ストレングス】91


 ■VIT【バイタリティ】88


 ■INT【インテリジェンス】75


 ■MND【マインド】75


 ■AGI【アジリティ】80


 ■DEX【デクステリティ】68


 ■LUK【ラック】27


 ■リク レベル:10

【木天使ミカエル】


 ■称号;

【始まりの若者】【初心者ビギナー


 ■装備

 ・武器

 鉄の剣

 ・防具

 皮の服(上下)

 皮の靴

 ・アクセサリー

 なし


 ■使用スキル(10/10)

【早熟】【剣術の心得(Lv2)】

【俊敏力UP(Lv2)】

【紙一重(Lv1)】【気配察知(Lv1)】

【調合(Lv4)】【鑑定】

【跳躍上昇】【万物の創造】

【体力UP(Lv1)】

 ■予備スキル

【探求心(Lv1)】


 ■アイテムボック(14/30)

【ポーション】×15

【ハイポーション】×4

【マナポーション】×2

【痺れ薬】×2

【水差し(6ℓ)】

【薬草図鑑】

【調合セット(中級)】

一角兎ホーンラビットの角】×23

一角兎ホーンラビットの毛皮】×6

一角兎ホーンラビットの肉】×20

【マッドウルフの爪】×1

灰色狼グレイウルフの牙】×23

灰色狼グレイウルフの爪】×32

灰色狼グレイウルフの毛皮】×12

 ■所持金

 36821G

 ─────────────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る