第8話 パーティー
ログインすると昨日ログアウトした宿の一室から始まった。手にはまだ『カサブランカの霊薬』を持ったままだ。
宿屋でログアウトするとステータスボーナスが付くって言ってたけど、どのくらい上がるんだろう。僕はメニューを開いてステータスを確認する。
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■STR【ストレングス】21(+3)
■VIT【バイタリティ】20(+3)
■INT【インテリジェンス】20(+3)
■MND【マインド】20(+3)
■AGI【アジリティ】21(+3)
■DEX【デクステリティ】23(+3)
■LUK【ラック】25(+3)
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(おぉー、ほんとに上がるんだ!)
僕はステータスを見てガッツポーズをする。
◆ ◆ ◆
今日は何をしようか?昨日ので薬草をほぼ無限に創れるのはわかったけど、これって完全にレアスキルだよな?今日帰ってきてから気になってネットで調べてみたけど【万物の創造】なんてものは一切載ってなかった。
このスキルで創った高価な薬草を売ってお金を稼いでもいいけど、他のプレイヤーに売るとなると問題になるよな?僕は手に持った【カサブランカの霊薬】を弄びながらこの花の使い道を考える。ずっとアイテムボックスに死蔵していてもいいだろうけど、それだと勿体ない。やっぱりNPCの店に売るしかないのだろうか。僕は宿を一旦出て、反対の通りにあるNPCの雑貨屋に足を運んだ。
「いらっしゃいませー」
店主がドアベルの音と同時に迎える。
店の中はかなり広く、端には商品棚が並び、どの棚も商品でいっぱいになっている。
「薬草を売りたいんですけど」
「はい。こちらに置いてください」
ポーリンさんの時と同じ手順で僕は【カサブランカの霊薬】を売る。その他にも興味本位で創造した薬草たちを売っていく。合計で36000Gを手に入れた僕はほくほく顔で雑貨屋を出て、宿に戻っていった。
僕は部屋に戻ると『調合セット(中級)』を取り出し、ポーション作りに没頭し始めた。部屋の中にはゴリゴリという、薬草を磨り潰す音が響いていた。
◆ ◆ ◆
ポーションを作り始めて一時間が経過した。今日は昨日作れなかった『ハイポーション』や『マナポーション』なども作り初め、合計で『ポーション』を5本、『ハイポーション』を2本、『マナポーション』を2本作ることができた。『ポーション』は作り慣れたせいか全て品質:S。『ハイポーション』と『マナポーション』は初めてだったが品質:BQになることなく、失敗することはなかった。
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『ハイポーション』☆
■HPをかなり回復する
□回復アイテム/HP回復
□複数効果/なし
■品質:LQ
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『マナポーション』☆
■MPを少し回復する
□回復アイテム/MP回復
□複数効果/なし
■品質:LQ
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調合を続けていたおかげで【調合】スキルのレベルが3まで上がっていた。
★なしのスキルはレベル30まで育てると、そのスキルが上位スキル(★一つ)にレベルアップすることができる。【鑑定】スキルの上位スキルは【薬師】だ。【薬師】スキルになると作れるポーションの幅が広がり、色々とできることが増える。まぁ、【薬師】スキルになるにはまだまだ先の話なのだが。
この出来上がったポーションは他人に売るもよし、自分で使うもよし。ポーションは消耗が激しいためプレイヤーには重宝されるし、ポーションは何気高いため自分で作って作る人も多い。とりあえず僕は自分で使うことにしてアイテムボックスに作ったポーションたちを仕舞っていく。
◆ ◆ ◆
僕は『メイリーン』のポータルから『始まりの森』に飛んだ。ポーションを作るのに必要な『ドーラの清水』が足りなくなってしまったのでまた汲みに行くのだが、またあの山を登ると思うと億劫になる。そのためにもまずはレベルアップだ。ポーションは以前より良い物かもしれないが苦さは変わっていないからね。
僕は『始まりの草原』を広大で、その中でもネットで検索したおすすめの狩場を目指した。
◆ ◆ ◆
ネットで勧められた狩場にはちらほらと先客が居て、いずれも魔物と交戦中だ。交戦中のプレイヤーを除けて先に進むと魔物の数が増えてきた。僕もどれかと戦おうかというとき、近くの林の奥から交戦する音が聞こえてきた。僕は少し興味を持って少し近寄って見てみることにした。
戦っているのは以前僕が負けたマッドウルフと、昨日宿屋の前ですれ違ったお姉さん?だと思う。お姉さんは両手に片手剣を構え、マッドウルフと交戦している。お姉さんの体には所々傷を負っているようだが、どうやら優勢のようだ。両手に持った剣が徐々にマッドウルフにダメージを与えている。僕は戦いが終わるまで近くの岩場に腰を掛けて観戦することにした。
しばらく戦いは続いたが、お姉さんの片方の剣がマッドウルフの首筋を切り裂き、無事戦いは終わった。
お姉さんもこちらに気づいていたようで手招きをしている。僕にだろうか?僕は岩から腰を離し、お姉さんの方に歩み寄る。
「なんで助けてくれなかったのよ」
「え、でも他人の得物は手を出しちゃダメじゃ……」
「いや、それはそうだけど。見るからに劣勢だったんだからさ」
どうやら苦情を言うために呼んだらしい。っていうか劣勢だったのね。僕の見る目はまだまだなようだ。
「そうだったんですか、それはすみませんでした」
「まぁ、いいわ。あなたポーション持ってない?私が持っていたのは使い切っちゃって。ちゃんとお金は払うからさ」
僕は今日作ったばかりの『ハイポーション』を取り出して、お姉さんに手渡す。
「別に『ハイポーション』じゃなくてもいいんだけど」
お姉さんは少し愚痴を溢しながら僕の渡した『ハイポーション』を一気に呷る。
「うぇ、にがぁ。……で、いくら払えばいいかな?」
「別にお金は良いですよ。僕が助けに入っていればそのポーションを飲むこともなかでしょうから。それに自分で作ったやつですから」
「へー、あなた【薬師】スキルでも持ってるの?」
「まだ【薬師】じゃないですけど、【調合】スキルを持っているので」
「へー、でもタダっていうのも悪いからさっき倒したマッドウルフの爪と交換っていうのはどう?」
別にポーションはいくらでも作れるのでタダでもいいのだが、貰えるものは貰っておこう。僕はお姉さんから貰った『マッドウルフの爪』☆☆をアイテムボックスにしまった。
「あんたさ、私と
別に断る理由もないのでお姉さんに送ってもらった
ポロンッ『プレイヤー名:グリーンが
お姉さんの名前はグリーンというのか。本名はみどりさんとかかな?
「へー、ミカエルを選んだんだ。珍しいね」
「これからちょっと時間ある?少しだけお姉さんと一緒に狩りしない?初めての
「まぁ、いいですけど」
グリーンさんは結構男勝りな感じがする。
狩りのお誘いも断る理由もないのでもちろん受ける。
「じゃあ、パーティー組むから入ってね」
―――――――――
グリーンからパーティーの
招待が届いています。
拒否|承認
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パーティーに参加するとステータス画面の名前の下に、新しく「所属」という項目が増え、そこに「グリーンのパーティー」と表示された。
「じゃあ、行こうか」
僕はグリーンさんに連れられて草原に向かった。
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