第6話 あこぎな商売

一角兎ホーンラビット】を倒してから三十分後。ようやく山頂にたどり着いた。僕は景気づけのつもりで七本目のポーションをがぶ飲みする。

山頂には様々な草花が咲き誇り、草原というよりかはお花畑のようだ。ここまでの疲れを癒してあげよう、みたいな感じで作られたのだろう。僕は勝手に考察すると、ゆっくりと草原を歩いていく。草原の中には小さな通りが作られており、草花を踏まないように、グネグネと曲がっている。


草原を超え、山を下り始めて三十分ほどで『ドーラの水源(上流)』に到着した。『ドーラの水源(上流)』にはちらほらとプレイヤーがいて、反対岸には水を飲みに来た野生の動物がちょこちょこと見ることができた。川辺には数多くの露店が開かれていた。その多くはNPCの露店だが、プレイヤーの開いている露店も幾つか見える。

そんな中で一番驚いたのが、ユウリさんが居たことだ。相変わらず悪目立ちをする外見をしているためか、ユウリさんの露店の近くにはほかの露店はなく、そこだけぽっつりと空いた空間ができている。悪目立ちする外観をしている割には、売っているものは『水差し』や『ポーション』などの普通な品ばかり。変わり種だと『薬草図鑑』なんて物も売っているようだ。


「こんにちは、ユウリさん。こんなの所に居るんですね」

「おー、リクくんか。昨日ぶり。あれから何か収穫はあったかい?」

「いえ、実はあの後……で死に戻りしたんですよ」

「そりゃ気の毒だったね。それなら商品、かわいそうだから少し負けてあげるよ?」


そういうとユウリさんは店に出ている商品を並び替え、価格を僕ように少し下げてくれた。やっぱりユウリさんは商売がうまいな。自然な感じで商売に持っていく。僕は感心しながら安くなった商品たちを値踏みしていく。いろいろな商品を見た中でやはり『薬草図鑑』に目を惹かれる。僕が手に入れた謎スキル『万物の創造』。その説明に薬草がなんちゃらってやつがあったせいか、自然と僕の手は『薬草図鑑』に伸びていた。


「『薬草図鑑』にするかい?」

「はい。それにします」


僕は元値が800Gの『薬草図鑑』を500Gまで値下げしてもらった『薬草図鑑』を手に入れた。


「まいどありー」


ユウリさんの露店を後にした僕は本来の目的である『ドーラの清水』を求めて、川べりで『水差し(6ℓ)』で水を掬い、アイテムボックスにしまった。これでやることはすべて終わったので後は帰るだけ。僕は帰還専用のポータルに向かった。


帰還用ポータルは大勢の人でごった返していた。周りの人たちの話を盗み聞くに、何やらトラブルがあったようだ。僕は人混みをかき分け一番前まで行く。その先には火の玉が飛び交い、剣と剣が交差するPvPが行われていた。対戦している人たちは、剣士が一人・魔法使いが一人・回復師が一人のパーティー対、剣士一が一人・魔法使いが二人・回復師が一人のパーティー。激しい剣戟が行われ火花が散り、火球がぶつかり合い爆発が観客たちに飛び火する。


「すみません。なんでこんなことになっているんですか?」


僕は近くに居た、大剣を背負った男のプレイヤーに尋ねる。男は渋々といった感じで説明をしてくれる。しかし、その説明は適当で、早く観戦に戻りたい気持ちが伺える。


「こいつらがどっちが先にポータルを使うかで揉めてな。それでPvPを始めちまったんだよ。これで満足か?」


僕はお礼を言って皆に混じって観客に埋没した。


僕が観客になってから数分後、ようやく決着が着きそうだ。魔法使いの残MPが減ってきたらしく火球の応酬が鳴りを静め初め、回復師のMPも無くなり初め、剣士のHPの回復も儘ならなくなり両者共に瀕死の状態だ。そして魔法使い二人のパーティーの剣士が相手に打ち勝ち、それを皮切りに魔法使いの魔法が相手の魔法使いと回復師に直撃し、長かったPvPは幕を閉じた。陰で賭けも行われていたらしく、賭けに勝った人たちはホクホク顔でポータルに向かい、負けた人はPvPをやっていた人たちに罵声を浴びせ、同じくポータルに向かっていった。僕もポータルに向かい数分待つと、『メイリーン』に飛んだ。




 

 

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