第5話 ヴェスター3

テトラ、チャイカ、ゲルヒーの3人はチャイカの家にいた。2人はどうしてもテトラの力について聞きたいとのことだった。

「うーん、2度も助けてくれてほんまにありがとうな」

テトラは「気にしなくていい」と短く返すとゲルヒーは首をブンブン横に振り少し前のめりになる。

「テトラ様、この度は助けて頂き言葉もない。してあの魔法はいったい、、」

様付けで呼ぶことに関しては触れないでおこうと決め伝えられる限りの事を話した。


「うひゃー!じゃあなんや?テトラは400年も封印されてたんか。想像つかへんなぁ。ウチら魔人種は大体寿命が200年ちょいやろ?ん?まってほんならテトラは400歳以上なん!?」

チャイカは相変わらずよく喋る。生きてたというのかはちょっと肯定出来ない自分がテトラの中にはあった。しかしながら魔石に対応できる十分過ぎる時間も確かにあったのだ。

「次元魔法というのは私が編み出した魔法なんだよね。人種に、、復讐するために、、」

テトラは目尻に少しの涙を含ませ言葉をつまらせる。

(この涙は流さない、、絶対に。パパのことも気になるし)

テトラが今のように復活出来たのはバサラーのおかげだろう。そして言うまでもなく魔石は魔人種にとっては天敵だ。そこに干渉出来るほどの力を保有していたのだ。そしてその力の反動。デメリットは如何程なのか。

テトラは"次元収納"を発動し中からひとつの腕輪を取り出した。

「ハーフでも流石にあの結界の中だと50%くらいの力しか出せないみたいなの。あれくらいの敵ならなんとでもなるけど人種の中には魔人種に匹敵する強者もいるはず。その時この腕輪が役に立つの。これは私の400年が作り上げた産物よ。魔石の力を無効化する"反発魔法(アンチマジック)"が付与されてる。」

チャイカは目を丸くしながらその腕輪を手に取り上から下から舐めるように見渡す。

「ほー、すごいやん!魔道具ってことやんなぁ。てかあれで半分の力なん?ほんまに化け物やな。これがあればウチも同じ土俵で戦えるんやな」

と不敵な笑みを浮かべる。チャイカが驚くのも無理はない。仮にもひとつの魔人種の国をおさめる長なのだその魔法の力は魔人種でもトップクラス。本来の力が出せれば人種100人などひとつの魔法で消し去ることは造作もない。しかしテトラのように人種のみを対象とし、その辺りに被害を出さないようにすることは難しいだろう。それはテトラの魔法の威力の高さと同時に高い精度を保持していることに他ならないのだ。

チャイカはその腕輪をはめてみたりして手を開いたり閉じたりしている。その目は夢見る子供のようである。そして腕輪を外すとテトラに返しテトラはまた次元収納を発動し腕輪をしまう。

「テトラお願いがあるんやけど。王になってや。ウチたち魔人種の王。魔人ロードになってや!!」

あまりの前のめりにチャイカは寄ってくるためにテトラは一歩後退する。

(魔人ロード。私に務まるのかな、、)

テトラは魔人種を支配する前に不安によって頭を支配される。それはチャイカやゲルヒーにも伝わったようでゲルヒーはその場で片膝を付きその目を真っ直ぐにテトラへと向ける。

「僭越ながらに申し上げますと。あの腕輪の力が真であれば全くの問題はなく魔人種をおさめ、導いていけると確信しております。」

「そうやテトラ!問題ナッシングやでぇ!」

チャイカもゲルヒーに負けじと真っ直ぐにテトラを見つめる。確かに悪い話ではない迷った末にテトラは。

(とりあえずあやふやにして後でしっかり考えよう)

と決めた時だった。ドアをノックする音が聞こえ声が聞こえてくる。それはテトラにとって大きな助け舟であったに違いない。

「チャイカ様お話があります」

「あいよー。はいれー」

チャイカの声を合図にひとりの魔人種が部屋の中へと歩みを早める。

「はい、先程の人種跡を調査していたんですけどこんなものが」

彼が持っていたものは何処かの国家が描かれたピンバッジであった。テトラはその国を知らないのでこの400年で出来た新興国だろう。そこでふとテトラは思う。人種を復讐するとは言っても今の人種の情勢を全く知らないのだ。そしてはそれは大きな誤算を生む可能性があることを今この時テトラは懸念した。

「チャイカこれはどこのか分かる?」

まずは目先の問題へとテトラの頭はシフトする。

「これはここより一番近いダステル国の王宮戦士のピンバッジやな。」

どうやらテトラは勘違いしていた。着ていた服装も統一感が無かったからこそ冒険者の集まりと思い。国ぐるみであることに気づかなかった。そして100の戦闘力が1も帰ってこないのだ。国を傾けて総力を尽くすのはきっと確実だろう。テトラはいち早くダステル国という国の力を調べる必要がある。

「チャイカ。ダステル国に行きましょう。」

「え?」と心のない声がチャイカから漏れる。そして「それは復讐しに行くってことなんか?」と続けた。

「いや、復讐ではなく"偵察"よ。遠からず私たちはダステル国と衝突することになるわ」

チャイカは"私たち"と言ってくれた事に驚きつつ頷く。

そして今から最初の国への復讐の行進が始まろうとしていた。

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