第4話 ヴェスター2
連れられるがままに森を抜けるとそこには小さな村が存在していた。中へ入ると見渡す限り魔人種ばかりである。
「ここは、魔人種の村、、?」
「そうやなぁ、惜しいなぁ。村やなくてここは国やで。」
そういうと女はテトラから手を離しクルッとこちらに向き直し笑顔を見せる。
「ようこそウチ達の国"ヴェスター"へ!そんでウチがここの主、チャイカ=ヴェスターやで!」
周りを見渡せば魔人種たちがこちらに手を振っていた。どうやらチャイカは人望のある主人であることは間違い無いようだ。足音が聞こえその方に目をやると屈強そうな男が走ってくる。
「チャイカ様!ご無事でしたか!む?その方は、、人族?」
そういうと男は腰に下げた剣に手を置きこちらを睨み付ける。チャイカは手をテトラの前に出しテトラと男の間に割り込む。
「ゲルヒー、やめぇや。ウチを助けてくれたんやで?しかも魔人種の血も入ってるみたいやし。そんなことも見抜けないなんてまだまだやな」
キリリとチャイカはゲルヒーを睨む。ゲルヒーは片膝をつくとテトラに謝罪の意を示す。「気にしていないわ」とテトラは短く返す。
「それよりもなんで魔人種なのに強くもない人種にやられそうになってたわけ?」
テトラはチャイカを見据え問いかけるもチャイカは伏し目がちになる。
「知らんのか?せやなぁ。魔石のせいやで」
テトラは驚きの表情に変わる。確かに魔石は魔人種の力を失わせるしかし希少でもあるのだ。あのような一介の冒険者が持てるような代物ではない。
「そんなわけないでしょ。あんな冒険者が持てたら魔人種の存亡に関わるでしょう?」
テトラは言い合えると間髪もいれずにゲルヒーは答える。
「本当に何もご存じないようですね。なんでかは知りませんが。昔は人種と同じくらいの人口を誇っていた魔人種は今や3分の1以下となってしまいました。」
テトラはギョッとする魔人種といえば当時人種とは力の差があり間違っても人種が自ら相手をしようととは思わないだろう。
「鉱山やで」
チャイカの目からは光が失われ静かに答えた。「鉱山?」とテトラが聞き返す。
「魔石が採掘出来る鉱山が発見されたんよ。それからや魔人種の数が劇的に減っていったんは」
チャイカはテトラが封印されている間のこの世界にとって大きな転換期を話し始めた。
「あれは250年前くらいのことやウチもまだ生まれる前の話やな。人種が魔石が発掘される鉱山を見つけたんや。それから魔石は高価な物から安価な物へと変わった。そこまではまだよかったんや。人種は技術力を伸ばし始めそれを用いた武具を使い始めた。最近では魔法の中にその力を行使するようになったんや」
チャイカはなにか遠くを見るような虚な目をしていた。
「ウチのなぁ、親も弟も人種に殺されたんよ」
テトラはかける声を探して地面を眺める。しかしそこに答えはあるわけもない。
「ねぇ、チャイカ?"復讐"したくない?」
テトラはひとつ吸い込みチャイカの目を見据え問いかける。
「でも、ウチの魔法はもう人種には、、」
「関係ない。それを可能にする力が私にはある。授けることも。」
そのテトラ目は静かながらも熱く燃えていた。
「敵襲!!人種が攻めてきたぞ!」
誰かがそんなことを叫んでいる。その声はだんだん近くなってくる。そして"人種"と聞いて周りの魔人種たちの顔は青ざめる。
「ここも、これまでやな、、戦う気のある者はウチについてきぃや!!」
チャイカはそういうと走り去っていった。
(答え聞けなかったなぁ)
テトラも歩いてその方へと進む。
「おい、劣等種ども俺たちの者を可愛がってくれたようだな?」
そこには昼間の人種の仲間らしき者たちがいたその数およそ100。
「なんやって!?劣等種!?ウチたち魔人種の方が優れてるやろがい!」
周りの魔人種たちからチャイカを応援する声が聞こえる。しかし人種たちは皆その顔を笑いで歪ませていた。
「はーはっは、なに言ってんだこいつ?何百年前の話だよ。俺たちには力があるんだよ?かけろ。」
その言葉を合図に人種の魔道士たちは魔石を片手にし始めた。
「「魔を封じる魔石よその力でこの地をおさめたまえ!」」
その魔法は結界魔法であり中では魔人種たちが茫然としていた。
「くっ、、この石さえなければこなんやつらなんか」
魔人種は皆口々に呟く。
「魔人種たちはこのアーツが討ち取る!!」
長とおぼしき男は魔人種に斬りかかる、、
「時の審判の判決を下そう。お前ら全員"死刑(ギルティー)"」
人種に向かってゆっくりと近づくテトラ。その足音は断罪へのカウントダウンだった。
「なっ!人種だと!」
アーツの足は止まる。しかしそれは間違いだった彼は少しでも多くの道連れをするべきだったのだ。
「"次元魔法火刑(ディメンションマジックバーニング)。お前の罪は傲慢。」
押し寄せていた人種達の身体から火が上がる。慌てふためく者。転げ回る者。逃げていく者。様々な対応が見られたが皆一様に燃えつくされた。
「な、なんや!?その魔法は!?見たことも聞いたこともないで!?」
チャイカは驚きを隠せないようだ。そしてそれは周りも同じこと。それもそのはず1人によって100人という侵略者が駆逐し尽くされたのだ。
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