第3話 ヴェスター1
あれから400年か。とテトラはしみじみ感じていた。
「この時を待っていた。」
そう呟くと現状を確認するために森の中を彷徨い歩き続けた。ここがハルベルト国であることは間違い無いだろう。廃れており見る影もないがなんとなく見覚えのある物が点在していた。
(復讐する前に滅亡しちゃったかぁ)
テトラは一歩また一歩と大地を感動とともに踏み締めていた。
そしてテトラが復活できたことには理由がある。その前に魔人種の魔力を封じるための魔石であるにも関わらず封印が起きることは前代未聞である。実のところテトラにもよくわかっていなかった。「まぁ、そのうちわかるかな!」等と軽く考えていたものだ。そして封印されている間テトラはなんとも言えない空間にいた。目を開けると暗い。本当は瞑っているのではないかという感覚に襲われる程だ。しかし時の感覚だけははっきりしていた。それは何故かは分からない。そのまま30年の時が過ぎようとしていた時思い出す最後の仲間の顔を。
「ミッセン」
その時だった。どこからともなく声がしたそんな気がした。耳をよくすますと確かに呼んでいる。テトラの名だ。
「テトラ。ようやく気がついたかテトラ。」
なんとなく懐かしい声だ。子供の頃母と共に耳をすましたあの声。魔人種である父バサラーの声。
「え?パパ?なに、どうしたの?」
「いや、テトラを封印から解くべく助けてやろうと思ってな。テトラを封印した忌まわしき魔石に他の者が魔法を傾けた時、封印は解かれる」
バサラーはそういうと「私の力ではこれが限界だった」と静かに続けた。
「いや、十分よ!パパありがとね」
テトラの答えにバサラーから安堵の声をが漏れ出た。
「では。私はもう此処にはいられない。勇しく生きよ。我が愛娘よ。」
「ありがとう」とテトラは言うともうバサラーの声は聞こえなくなっていた。何年ぶりの父の声だっただろうか。
「あれ?、、あれあれ?」
なにも見えない視界が大きく歪む。なにも感じなかった頬に温かな雫が零れる。
「見える、、けど無い、、」
暗闇からそこは真っ白な空間に変わっていた。自分の身体が見える手を伸ばすも何かに当たる感触はない。試しに雷槍を放ってみる。そのまま突き進み何にも当たることなく効果範囲を超え消えていった。
それからと言うもののテトラはバサラーが可能性を残してくれたと復活に向けての準備を始めることにした。終わらが見えない修行が始まったのだ。
時には瞑想をしたり。新しい魔法を考えては放ち、修正し、放つ。そして気づいた時には400年が経っていた。
「マセキニタイシ、コトワリノショウメイヲカンチ、テンイマジックヲハツドウ」
空間に無機質な声が響く。そして足元に魔法陣が浮き出て光がテトラを包む。その瞬間目の前広がるのは森であった。そこに4人の人種。おそらく冒険者だろう集まりだ。
(皮肉だなぁ、人種によって封印され、人種によって解かれるのね)
そして今に至る。
テトラが森を歩いていくと声が聞こえてきた。争っているそんな声だ。音を立てないようにテトラはその方角に走る。陰から目をやるとそこには人種が5人と魔人種が1人。
(魔人種かぁ、あの冒険者たち死んだかなぁ)
テトラはそのまま素通りしようとしたが何かおかしいともう一度目をやる。
「やっぱり。あの魔人種魔法を使わない。剣も持ってないから、、あの子まける、、かも?」
そう思うとテトラの身体は勝手に動いた。
「肉体の鎧(ボディーアーマー)」
人種の奮った剣はまたもテトラに刺さることなくポキリと折れる。
「え?なんだこいつはぁ!ひとっ、、」
そのままテトラは"鋭利な身体"を発動しその手で相手の胸をひと突き。貫かれた手に持たれた心臓は抜かれたことに気づかなかったかのように二回ほど動き動きを止めた。
「な、なんだこいつは!!」
「人種じゃないのか!?」
2人は魔法の構えをし2人は背中を見せ逃げようとしていた。
「背を見せるなんて。なんで魔人種が負けそうなのか。"突然死(サドンデス)"」
ひとりひとりにテトラは人種たちに手を合わせると4人は順に倒れ始めた。全てを終わらせるとテトラは後ろを振り返る。
「な、なんやおまえぇ!」
魔人種の女はこちらをみると目を丸くして驚いている様子だ。髪は短く切りそろえた桃色をしている。赤い瞳がこちらを覗き込んでいた。
「助けてくれてほんまにありがとうな。でもお前ひと、、ちゃうなぁ魔人種も入っとんなぁ。ほひゃーめずらしいわぁ」
(何この人、よく喋る、、。)
テトラは呆気に取られているとその子はテトラの手を掴む。
「ここは危ないで。こっちや!ついてきぃ」
テトラはとりあえずついていくことにした。
その一歩一歩がこれからの人種の未来に関わる行進なのかもしれない。
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