第2話 復活

 400年後、ハルベルト国があったとされる場所。そこに男女4人の冒険者が歩いていた。クエストを受けているのであろう。

「ねぇ、知ってる!?ここらへん大きな国があったんだってー!」

その中の女性が飛び跳ねて3人の前へ跳ねて出た。

「ミリスは元気だな。」

「もうタリスぅ!ほんとだって!」

「ほんとにお前ら兄妹は仲良いな」

「「よくないよ!」」

「私たちも負けてられないね!」

ミリス、タリス、オーグナ、サイレン4人は和気藹々と歩いていた。

「あれ?なんだろうこれ?」

ミリスは立ち止まるとかがみ込む。その目と指した指の先には手のひらサイズの小物入れが落ちていた。オーグナはその小物入れに歩み寄ると手に持ちおもむろに開け始める。3人は心配な眼差しを向けているがオーグナはお構いなしだ。

「おい、オーグナ。何か入ってたか?」

タリスは焦ったくなったのかオーグナに近づき声をかける。が、オーグナはその声に応じない。

「おい!オーグナ!」

タリスは嫌な予感を覚え急いで肩を揺する。

「うお、すまんすまん。ぼーとしてた」

オーグナは苦笑いを浮かべ頭を掻く。タリスはほっとしたように肩を撫で下ろす。

「それよりもこれ!見てみろよ!」

オーグナは3人に見せるように小物入れを前に出す。

「これって、、間封じの奇石、、?ちょっと見せて!」

サイレンは間封じの奇石に両手を向けて目を瞑る。

「感覚魔法(センスマジック)、理の証明」

サイレンは光に包まれ頭に集まってゆく。

「はっ!だめよ!今すぐそれを捨てて!!」

サイレンは突如として目を見開きオーグナに指摘する。それを聞いてオーグナは慌てながらも地面へと小物入れごと放り投げる。

「え?どうしたの!?」

ミリスはまたも心配そうに見つめる。

「その石、封印されているわ」

「え?」

3人は声を合わせ聞き返す。間封じという名前がつくが封じるのは"魔人の魔力"であり、それ以外ではない。そのこともあって3人は意味がわからないというようだった。

「ふふ、ありがとうね若き冒険者たちよ」

どこからともなく響く声。4人は目を合わせ小物入れからこぼれ落ちた石を見据える。

その瞬間、奇石から光がこぼれ落ち魔法陣を地面に描く。

「これは、、転移魔法、、?」

サイレンの魔法はその魔法陣は転移魔法だと見破る。魔封じの奇石から転移されるもの。前例は聞いたことがないがおよそ人族ではないのだろう。サイレンの額にはひとつの汗が滴り落ちる。やがてその転移は終わりを告げ魔法陣は跡形もなく消え去る。

「ご機嫌よう。よく寝たわ。本当にね。」

その魔法陣から転移されたものを見て4人は目を丸くする。

「ひ、人族、、?」

サイレンは言葉を捻り出し呟いた。そしてその言葉の先の女は不敵な笑みを浮かべる。

「ひ、人族なの、か?」

オーグナは恐れつつも少しほっとしたように笑った。そこでサイレンは考える。

(魔封じの奇石に絡む者が普通の人族?いや、そんな訳はない。これは魔法で姿を変えている?)

答えの見えない思考をとめようとした時腰の剣を握りタリスは動く。

「人族な訳がないだろう!!」

タリスは雄叫びをあげながら女に切り込む。

「はぁ、人族はもう捨てたわ。肉体の鎧(ボディアーマー)」

切り込んだタリスの剣は女の身体に触れると同時にパキンッという音と共に折れる。タリスは不可解という表情を浮かべ、剣を捨て拳を握る。

「鋭利な身体(シャープネス)」

女は手刀で横に振る。その拳が女に触れる前に血飛沫が飛びタリスは地面に倒れ込んだ。

「「タリス!!」」

その3人の問いかけに応える声は無かった。その赤い水溜りはミリスの目から光を奪った。そしてその場に座り込む。

「ちくしょおお!雷槍(ライトニングランス)!」

オーグナの放った雷槍は女の放った雷槍によって打ち消されそのまま一直線にオーグナへと突き刺さる。サイレンが気づいた時には泣きながらタリスに意味もなく治癒魔法をかけようとするミリスと2人の亡骸が転がっていた。

「ダリズゥ、、おぎでよぅ、、」

サイレンはミリスにともに逃げようと声を出そうとするも声は口から発されず足もベタっと地面についたままだ。一瞬なんらかの魔法かと思ったほどであったがその答えは簡単に導き出せた。サイレンの身体を支配していたものは"恐怖"に他ならない。触れてはいけない禁忌。覗いてはならない深淵。そんなことが頭に過ぎる。

「ミリ、、」

サイレンはミリスの名前を呼ぼうとしたがやめた。もうそこにミリスは居なかった。いや身体は確かにあったのだが既に手遅れである。サイレンは後ろを振り返り持てる力を出し切りながら走り出す。誰かいないかその事だけを考えて。

突如サイレンの視界は駆けていたはずの地を見る。

「わた、しの、からだ」

視界に自分が着ていた装備を纏う身体を確認する。それがサイレンの生涯最後の記憶である。



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