復讐行進曲
RinG
第1話 裏切り
「よくぞ参った!ピーリーナイツの諸君!」
ここはハルベルト国王宮。ピーリーナイツとはワールドランク冒険者フェアー=テトラ、S級冒険者ユラ=ミッセン、A級冒険者バララ=アイズワン、ヤーラス=ペルー、アラレー=ラッセンこの5名が所属する冒険者パーティである。世界中の各階級冒険者はピラミッド状の比率になっておりS級以上では15人。ワールドランクにおいては他に2人のみという具合だ。今回は王宮近くに出没したドラゴン。中でも伝説種と呼ばれるモンスターを討伐に成功したことによる召集である。
ドラゴン(伝説種)
ドラゴンは古代種、伝説種、地底種、近類種に分けられ伝説種以上は人種では太刀打ち出来ないとされている。
ピーリーナイツの面々はハルベルト国王ハルベルト=イグナスの前ということもあり片膝をつき頭を深く下げていた。周りの兵士たちも表情は崩さずともどこか祝福の目線をピーリーナイツに向けている。それもそのはず伝説種の討伐となれば前代未聞の大偉業を成し遂げたのだから。
「国王、私どもには勿体なきお言葉」
テトラは頭を下げつつ口にする。それを見たイグナスはうむうむと満面の笑みだった。
その夜王宮では国を挙げた式典が執り行われ、豪華な食事を前にテトラ達は心躍る気持ちを噛み締め式典の席ついた。
「ねぇ、テトラ私たち凄いね!こんなに祝ってもらえて!冒険者冥利に尽きるよぉ」
ミッセンは笑顔でテトラにといかける。
「ミッセンはいつもより食う量抑えろよ?憧れの勇者が口の周りベタベタにするとかダセェからな」
アイズワンは指を指しながら大きく笑った。もぉと言いつつ顔を赤らめるミッセン。そこを見ると普通の冒険者パーティなんだとテトラは安心した。
「あのドラゴンは、、大変だった、、」
「ペルーはスピーチの時くらいは普通に話せよな」
「ラッセン、、ハルスタイン、、踏み潰されろ、、」
ペルーはラッセンに冷たい視線を送る。
ハルスタイン
平原に生息する。最大級の草食モンスター。その肉は臭みが多く食用には向いていないが皮膚が硬いため防具に使用されることが多い。
温厚な性格ゆえに踏み潰されることは新米冒険者くらいなもの。そのためこのペルーの発言はベテラン冒険者に対しての冒険者ジョークに他ならない。テトラはその攻防を見てうっすら笑いを浮かべていた。
「この度は我らがハルベルト国冒険者パーティピーリーナイツのドラゴン伝説種討伐につきまして式典を始めさせて頂きます。皆さまごゆるりとお過ごしくださいませ。尚、ピーリーナイツの方々はこれより王接間までお越し下さい。」
式典進行の男が話し終えると静まり返っていた室内は爆発的な称賛による歓声で包まれた。
「テトラ!いこ?」
ミッセンの問いかけにテトラは「うん!」と相槌を打つと先に席を離れていた男共3人の後に続き式典の部屋を後にした。主役のいない式典とは?と思いつつテトラは王宮の通路をカツカツと歩く。王接間の前に着くと5人全員で扉を叩き中へと足を踏み入れる。
国王との謁見が終わるとピーリーナイツのメンバーは神妙な顔つきをしていた。
「まさか、バレていたとは、、な」
口を開いたのはアイズワン。そして皆一様にふしめがちである。
「ごめん、みんな。」
テトラは低く短くそう告げた。
「テトラ、、せい、、違う」
ペルーは急いで取り繕う。テトラにとってそれは嬉しくもあり同時に申し訳なさに満ちてしまっていた。
遡ること1時間前の事。遅れて王接間に現れた王はその眉間にシワを寄せていた。
「主らを呼び立てたのは他でもない。ワールドランク冒険者テトラ。いや、テトラよ」
その真っ直ぐな目でテトラは射抜かれていた。その額には汗が滲んでいる。
「な、なんでしょうか。お話を聞きに参りまし、、」
「たわけめ!!まだ謀りおるのか!!」
皆分かるイグナスは激怒している。テトラに対して怒るということの意味をテトラは考え正解に至る。
「私は、私は、ハルベルト国冒険者フェアー=テトラです!」
テトラは吠えるように言い放つとイグナスはそのまま部屋の外へ出て行ってしまった。
今に至る。
「テトラ、外で話そ?」
ミッセンはテトラの手を繋ぐと走りそのまま王宮を出た。立ち止まるとそこは人気のない街の外れ辺りは暗く月だけがその罪を照らしているかのようにテトラは思えた。
時にワールドランク冒険者とは3人しか存在せず女性はテトラただ1人であった。その中でもテトラはずば抜けての戦闘力を持ち合わせていた。しかしそれには裏があることを忘れてはならない。それは人種の敵対戦力である魔人種の存在だ。稀にその間で子供が生まれることがある。その多くは優勢種である魔人種の血を大きく継ぎ通常の人種の数倍の魔力を保有している。その中でもテトラは魔人種の形質を大きく継ぎ大きな魔力を保有していた。そこで思い出してほしいことは人種と魔人種は敵対しているということだ。魔人種優勢のこの地において魔人種をよく思わない人種は多く存在する。そしてイグナスもその1人だ。
「それでね、テトラ。今私S級なんだけどさ。テトラいなくなったらワールドランクに推薦してくれるんだって」
そう言うミッセンの目には光がなくどこか遠くを見つめていた。
「え?なに?ミッセン?やめて?よ?」
気づくとミッセンの手には石が握られていた。その石は魔石。魔人種が唯一嫌う魔素のこめられた物質。
別名魔封じの奇石。
「テトラ、ありがとうね。」
テトラにはミッセンの顔は笑顔でクシャクシャに潰れて見えた。
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