第2話

「どうする?春樹後輩。責任重大だぞ」

と仁先輩が僕をからかうように言う。僕も自分がどれだけ酷い状況に陥ったか理解をしている。

なんで、言っちゃうかな、井川さん。

「責任重大なのは、僕だけではありません」

と仁先輩に言い返す。仁先輩は深々とため息をつく。

「それは、この場にいる、皆理解しているよ。で、どうする?春樹後輩」

仁先輩の質問に僕は考え込む。しばらくして、僕は言葉をまとめることが出来た。

「この事件は、警察が動いています。だから、僕たちはこの事件以外の悩み事、頼みごとを優先します。ですが、全く触れないわけではありません。隙があれば、事件の真相を調べましょう。これは地域を不安に震わせる事件です。警察は解決に事件を進めていると思います」

僕はまとめた言葉を並べて言う。

仁先輩と拓斗先輩、詩穂先輩、清水、詩織は納得をしたように頷く。

「一つ、思ったのだけど、マスコミ、住所を特定して、張り込みに来ないかしら?」

と母さんは僕たちがあえて言わなかった事を、空気を読まずに言う。

そして、リビングの空気は凍り付くように、みんな硬直する。

「プランAだな」

父さんは言う。この言葉に詩織と僕以外は理解が出来ていなかった。

「何年ぶりだ?Aを使うの」

僕は父さんと母さんに聞く。二人は考え込む。

「分からん、でも、だいぶ昔なのは分かる」

「それは僕でも分かっている」

僕は父さんの言葉を当然かのように言い返す。父さんは何事も無かったようにしていた。僕は少し考えこむ。

何を考えているかと言うと、先週と今週の天気を思い出していた。

最近はずっと晴れだ。来週も晴れで、再来週になって、雨が降り始める。

「助けてください!吉田君」

と玄関から入って、リビングのドアを盛大に開けて、叫ぶ先生。

「家に帰ろうとしたら、家にマスコミ?が沢山いて帰れそうにないし、仁君たちの家にも沢山の人でって、みんななんで吉田君の家に?」

とまだ、状況がつかめてない、先生。

そしたら、仁先輩がスマホを触りながら先生に近づき、スマホの画面を先生に見せた。

「こういう事です」

とスマホはさっきのニュースを見せた。

「だから、家にマスコミにいたのね、ってなんで私の家知ってるの⁉」

「何かしら情報で知ったんだろう。僕たち何て世界でも名が通じる。情報何てバカみたいに流れているよ」

と仁先輩は先生に言う。先生は体をガクガクと震わせて

「世界は怖いものばかりです」

と言っていた。

仁先輩は振り返って、僕と目が合う。いや、合わせてきた

「それより、プランAって何のことだ?」

と聞く。話が戻り、本題の話が進行した。

「皆さん、制服、部屋着、私服を三セットカバンに詰めて、また、リビングに集合してください。話はその後です」


十分後


みんなが大きなカバンを持って、リビングに集まった。詩織と僕は手ぶらだ。

「じゃあ、行きますか」

僕はそう言って、勝手口から家を出た。

勝手口から出たところは、畑の隣だ。

僕は勝手口の扉の右の壁を触る。

その間にみんなが靴を履き、プランAの実行準備が出来たみたいだ。

僕は壁を一部分をパカッと開けて、そこにあるボタンを押す。いわば隠しボタンだ。

そして、地面が割れ、半径一m以上の円の穴が開く。

「隠しボタンに、隠し通路だな」

と仁先輩は穴を覗き込みながら関心をしていた。

これは僕は政府から隠すために作られた、自作隠れ場。

「行きましょう」

僕はそう言って、穴の中にある梯子を使って、下りていく。

その後に詩織、清水、先生、詩穂先輩、仁先輩、拓海先輩と続いて、下りてきている。僕はみんなが無事か、確認をした。

見た感じ、大丈夫そうだ。

「ちょ、お兄ちゃん、パンツ見ないで!」

と変な勘違いをする詩織。

「見てないと言うのは嘘になるが、僕は見たくて見ているわけではない」

僕は淡々と言葉を返す。

「よ、吉田君、フレンチですよ!」

「いや、だから破廉恥だって」

僕は先生にも言葉を返す。

僕は気にせず、下へ降りる。

途中で梯子が無くなったが、床が見えたので僕は手を放して、床へ落ちた。

「お兄ちゃん⁉あれ、次の梯子がない!」

と梯子がないのは知っている詩織は「どうしよう、どうしよう」と焦り始めて、足と手を滑らす。そして、僕の上に落ちてくるが、僕は詩織はキャッチした。

「え、え⁉あ、そうか、梯子はないんだ」

と思い出したように言う詩織。

「なら、僕から下りてくれる?」

僕は詩織に言う。詩織はキョトンとして、自分の身の回りを見た。

そして、顔を赤くして

「ご、ごめんなさい」

と僕からすぐにはなれる詩織。たかが、お姫様抱っこで何顔を赤くしているのか僕には理解が出来ない。

「途中で梯子は無くなっていますが、床は二m下にありますので、飛び降りてください」

と僕はまだ、梯子を下りているみんなに言う。

そして、清水、先生、詩穂先輩、拓海先輩と順に下りてきた。

僕は一様点呼代わりに、みんながいる事を確認して、前へ進んだ。

梯子があった穴は自動で閉じた。

僕は少し警戒しながら前へ進む。

「ここはどこですか?」

と先生が、聞く。僕はその質問に

「ここは、山にある、貯水池の水位を調節する、排せつ道です」

と簡単に答える。

その答えに先を理解した仁先輩が

「ていう事は、俺たちは山の方、つまり岸高に向かっている、っていう事になるな」

と言った。

さらに、清水が

「雨の時は使えない」

と言う。さすがずば抜けた才能を持っている人たちだ。

「その時はプランBだね!」

と詩穂先輩が言う。

「そういう事です」

僕はそう言った。

「何をしてる!」

と荒々しい男性の声が聞こえた。

「しまった、管理人だ」

僕は急いで、その管理人の元へ走った。

管理人は二人いるが僕にかかれば、一回蹴るだけで気絶はできるだろう。

だから、僕は二人まとめて蹴ってやった。

もちろん、気絶で済むように手加減をした。

二人はあっさり気絶をした。

「何なの?」

と不安そうに僕に聞く先生。

「この道管を管理している人です。僕の警戒が甘かったです」

僕はポケットから二本注射器を取り出し、二人に打つ。

「何をしているんだ?」

と僕に尋ねる拓海先輩。僕はその質問に答えようとした。

「記憶を消しているんです。私たちがここに居たら、おかしいからですからね」

と詩織が代わりに言う。

僕は二人に注射を打ち終えたので前へ進んだ。

それから、十分くらいだろうか。歩き続けて道管の行き止まりまで来た。

「行き止まりだよ」

と詩穂先輩が言う。

僕は行き止まりの檻に垂直にある、右側の壁に手を置く。

そして、行き止まりだった、道管は見事に道を作っていった。

「もうすぐ、目的地に着くのか?」

と勘のいい仁先輩が言う。

僕は頷くだけして、前へ進む。さっきまで明かりがなかった道に明かりが見えてきた。

そして、目的地に着いた。

皆はその広い空間をきょろきょろと見渡す。

「ようこそ、秘密部屋へ!」

と僕は声一杯出して言った。

「ここは僕やその関係者が日常生活に支障が出て、晴れの日が続いた時に使用される部屋です。水、電気も流れています。部屋は全部で八部屋あります。少し汚いですがゆっくり過ごせますよ」

と簡単にこの部屋の紹介をした。

「ていう事は、ここは秘密基地だね!ワクワクするよ!」

とテンションが上がる詩穂先輩。

確かに、秘密基地と呼ぶと響きがよく、ワクワクするかもしれない。

いや、するだろう。そして、きっと楽しいだろう。

「ここからだと、誰にも気づかれずに学校にも通えます。利点は沢山あります。しばらくはここで過ごしましょう」

僕の提案にみんなは賛成してくれた。

「なんか、中学生のころを思い出すな」

と仁先輩は懐かしそうに言っている。

「確かにね」

詩穂先輩もだ。

みんな、中学生の時に秘密基地でも作っていたのか。俺はあの頃も今と変わらず、秘密基地とかに興味はなかった。

それも当然だ。家にこんな隠し部屋があると、そういう事に僕以外の人でも興味はなくなるだろう。

「まあ、俺は陽那花の家に泊まらしてもらえるし、ずっとはあっちにも迷惑だから時々だけどな」

拓斗先輩は言う。陽那花と言うのは、拓斗先輩の恋人、木村先輩の事だ。

「家にしろ、ホテルにしろ、ゴムは忘れずに」

と仁先輩はみんなに聞こえるように拓海先輩の耳元でささやく。

仁先輩は初めから何も隠す気はないようだ。

二人の間にはあんなことが有ったのにそれを言える、先輩は別の良いですごい人だ。尊敬以外の文字しか思いつかない。

「誰がするか!」

と拓海先輩は仁先輩に大きな声で言う。

いや、でもするとか言ったら逆に引くわ。

「ねえ、ここって防音?」

詩穂先輩が僕に尋ねる。

「はい、いくら叫んでもいいように防音にしてます。もちろん部屋もです」

僕はそう言うと詩穂先輩はすぐに

「ありがとう!後輩君!」

と言って、仁先輩の腕をつかんだ。

「お、おい。何をする」

と二人は一つの部屋に入っていった。部屋は防音なので何も聞こえない。

だが、ドアをドンドンと叩く音、部屋で暴れる音は地響きで分かる。

何をしているのか、嫌な事に一通りしか出てこなかった。

しばらくすると部屋の中は静かになった。

「みんなさんは部屋で荷物をまとめて今日は寝ましょう」

僕が言うとみんなは部屋に入っていった。


翌日、詩穂先輩、仁先輩、拓斗先輩、が部屋から出て広場にいた。

「おっはよー!後輩君!」

と朝からありえないテンションで挨拶をする。

詩穂先輩の奥を見ると、仁先輩はありえないテンションの暗さで、椅子に座って、いた。魂は口から半分以上出ていた。

それを慰めるように拓斗先輩はそばにいた。

この状況なら、大体状況は予想が付く。それに詩穂先輩がこの、おかしなテンションなのも、分からない事はない。

「僕は何をしたらいいですか」

僕は何をしたらいいか、自分では全くわからないので本人に聞くことにした。

仁先輩は腕から手まで震わせていたが、親指を立てて

「大事な事を聞いてくれ。そして、元気が出る、美味い飯を頼む」

仁先輩は、今、残っている気力で精一杯言うようにすかすかした声だった。

僕はそんな仁先輩に重要なものを聞く。

「大事なものは守れましたか?」

僕が聞くと先輩は親指を立てて

「ああ、何とかな」

とだけ言って、腕の力が全て失う様に腕は重力に逆らうことなく、下へ肩からつるされていた。

僕はそんな仁先輩のために元気の出る美味しいご飯を作るために、基地の台所に入った。家とはだいぶ狭いが、料理はしっかりできる。

仁先輩は和食派。和食と言えば、白ご飯、みそ汁、焼き魚で、卵焼きは洋食も食べる。定番すぎると飽きてしまう。

だから、とりあえず冷蔵庫から卵を四つ、取り出した。

そして、ボールの中に卵を割って入れ、菜箸でかき混ぜる。

「そういえば、なんか寿司が食べたいな‥‥‥」

今度、作ろう。寿司と言えば、マグロ、サーモン、アナゴ、アジ、イカ、タコ、イクラ、ホタテ、いろいろ種類が浮かんでくる。

「寿司かぁ‥‥‥寿司‥‥寿司‥‥‥あぁ、元気の出るやつがあった」

僕はひらめいた。寿司で元気が出るのはあれくらいだろう。

僕は冷蔵庫に何が入っているか見た。

「な、なんでこんなにラッキーな食材が揃っているんだ‥‥‥」

冷蔵庫には沢山の魚たちが発泡スチロールの中の氷に包まれていた。

寒いだろう‥‥‥。今すぐ、美味しく料理してやるよ。食材として、美味しく、元気の出るご飯に。喜べ魚たち。そして、加工品たちも。

そして、ボールの中にあるかき混ぜた卵にさらに、卵の量を増やした。

そして、フライパンに油を引いて、ガスを付け、換気扇をまわした。

そして、油を引いたフランパンにかき混ぜた卵を入れる。

卵はジュ―と焼かれる音が鳴る。だが、僕にはこの後を聞いてしまうとにやけてしまう。

朝から楽しい朝食が始まる音が台所にだけ、響く。


何分料理に時間をかけただろうか。

僕は七人分の受け皿を持って、出来た料理と一緒に運んだ。

「お待たせしました」

僕はそう言って、広場へ入った。

見たところ、みんな起きていた。

ん⁉、見間違いか。みんな起きているのか?あの、あの清水が‥‥‥起きてる‼

これは関心の文字しか出てこない。

いやー、よくよく見たら詩織が起きていない。

みんな起きているのは見間違いだった。

「すこし、待っていてください。詩織起こしてきます」

僕はそう言って、詩織のドアをノックする。

「詩織、入るぞ」

向こうからの声はない。だが、僕の声は聞こえているはず。

僕は詩織の部屋のドアを開ける。

「起きてるか?朝食だぞ」

「ちょ、お、お兄ちゃん!」

と詩織の声が僕の耳に響く。何か詩織は焦っている。それは声を聞くだけで分かる。

「なんだ?」

「や!はいって、て、きゃあ!」

と僕に向かって転んできた。僕は反射的に詩織を支える、だが、その反射速度が遅かったみたいで、僕は力を入れ損ねた。

詩織を何とか支えている状態になった。

僕は頭から腰まで串刺し状態で膝がほぼ九〇度くらいにまで曲がり、太ももと床がほぼ平行だ。

まだ、力が入ってない状態でこの体勢、力を入れることが出来ない。

僕の足は後ろへ下がっていく。

このままだと、確実に僕は床に頭を打ち付けるだろう。

足はどんどん後ろへ歩いていく。

そして、ついに僕は足を滑らし、頭から転ぶ。

頭を打たないように最善を尽くしたのにも関わらず、後ろのベットに僕たちは転んだ。

まあ、頭を打つリスクは確実に無くなったからいいが‥‥‥全く、朝から冷や冷やすることが起きるよ。

「おい、なんか地響きがあったぞ‥‥‥って」

と拓海先輩はスマホで連射を始めた。

事故だと分かっていながらそんなことをするなんて、修正部の部員らしい。

いや、そうじゃなくて、今すぐこの状況を何とかしないといけない!‥‥‥気がする。

拓斗先輩は連射をすぐにやめ、すぐに部屋を出て行った。

僕と詩織はしばらく硬直していた。

今、自分は何をすべきか。それは、どんなに頭をまわしても分からない。

まあ、良いか‥‥‥。

「詩織、退いてくれ。動けない」

詩織はまだ、硬直してしていた。

これもまた、重傷を負った感じだ。

「もう‥‥‥」

言葉を漏らす、詩織。僕は最後まで聞くことにした。

「お嫁に‥‥‥いけない‥‥‥」

あー、やっぱり重症だ。今月で何回目だ?あの人たちは、詩織に心の重傷を負えさせば気が済むのだろうか。

僕はその傷に包帯を巻き、癒す係になってしまったようだ。もう、何も言えない。考えれない。

恐るべし変態修正部員。

「拓斗先輩は、事故だとちゃんと気づいている。気づいているから写真を撮ったりしたんだ」

詩織のここに包帯を巻く、言葉を掛ける。今回の重傷は幸い、軽めの終章だった。

その証拠に

「そうだと、いいよ」

と言葉を返す詩織。

詩織はそのまま、僕から離れた。

僕は詩織の重さが無くなるのを感じて、すぐに起き上がる。

誤解を招くかもしれないので、言っておくが決して詩織がデブで重いっていうわけではない。

「着替えたら、広場に。その間に、一様誤解を解いとくよ」

僕はそう言って、部屋を出た。

僕が詩織の部屋のドアを閉めた瞬間

「春樹、ちょっといいかな」

と言って、僕の背中を押す、そして広場の真ん中の机を囲う椅子に座らせられた。

仁先輩は僕に拓斗先輩のスマホを渡された。

僕はスマホの画面を見た。

「これはどういう事だ?説明をしてくれ」

仁先輩は拓斗先輩はスマホに指をさす。

これと言うのは、拓斗先輩のスマホの画面に映っている写真の事だ。

その写真には、僕がベットに寝て、詩織が僕の上を馬乗り状態の事だ。普通に見れば、僕が押し倒されたことになるだろう。

しかし、先輩は僕の事を真剣に鋭い目つきで見ているのにも関わらず、さっきの声は違和感しかない。表情と声が合わないって、なんか不気味な感じがするが気にしないでおこう。

まあ、この写真の事が事故だと知っていているなら別にかなわないが、それは僕だけの話で、詩織にとってはこまることだろう。

「それはただの事故ですよ」

「ならなぜ、詩織ちゃんは顔を赤くしている!」

拓斗先輩はスマホの画面に写っている詩織の顔を指す。

そして、仁先輩同様に拓斗先輩も顔は真剣だが声が高揚感溢れた声だ。

「分かりました。証明しましょう。誰だってこんな状況になったら顔が赤くなると」

僕はそう言って、椅子から立つ。そして僕は先生の前に立ち

「先生すいませんが立ってもらって良いですか?」

「ええ、いいわよ」

先生は僕に言われるがままにその場に立ってくれた。

僕は先生の左手首を右手で握り、左手は先生の腰に手を回して、先生を机に押し倒した。

「え、ちょ、な、何をされるの?よ、吉田君?」

先生は僕に何をされているか理解をして、混乱し始める。

僕は気にせず、詩織との時と同じように先生の顔に自分の顔を近づけ距離を縮めた。

「ふぁ⁉か、かお、顔が、ちちちち、ち、ちかい‥‥」

先生は顔を赤く染めた。僕はそれを確認すると、すぐさまスマホを取り出し、

パシャと写真を撮った。

「これで証明できますよね。仁先輩、拓斗先輩」

「「チッ」」

今さっき、二人して舌打ちしましたよね。完全に僕の心は傷ついた。‥‥‥多分。

まあ、そんなことは気にせずに、誤解の方が解けたのでよかった。

これで、詩織は安心するだろう。

「お兄ちゃん、誤解解けた?」

詩織がちょうど部屋から出てきた。

「うん!後輩君、先生を押し倒して誤解を解いたよ!」

詩穂先輩は僕の代わりに言う。

僕は詩織を見た。詩織は部屋の時とは違い、制服だった。

そういえば、もうすぐ梅雨になるな。

「押し倒したの?」

変なところに食いつく詩織。僕はいろいろな意味で嫌な予感をした。

「うん!すっごく大胆だったよ!見てよ京子ちゃんを!まだ、真っ赤だよ」

詩穂先輩は今も顔を真っ赤に染めている先生を指す。

僕もつられて、先生を見て、詩織に視線を戻した。

「お、鬼のようだ‥‥‥」

と拓斗先輩は詩織をみて、言葉を零す。

「いや、もう、鬼だろ‥‥‥まさか!俺にしか見えないのか」

「よかった。俺にも多分それが見えるぞ。背後霊だよな?」

「ああ、詩織君の背後に角を二本はやした黒鬼が見える」

「しかも、滅茶苦茶、でかい。三mくらいか?」

「ああ、それぐらいあってもおかしくない」

と二人は詩織の背後霊を見て、怯えている。

二人の言う通り、僕も詩織の背後に大きな黒鬼が見える。しかも、詩織自身にも頭に角が生えているように見える。

もう、幻覚でしかない。

「お兄ちゃんー!」

詩織は僕に飛び込み、胸ぐらをつかみ、上下に揺らされた。

その、上下の下の時に僕の頭は微妙な痛みだが、机に打ち付けられる。

「どれだけ、女の人に手をだしたら、気が済むの⁉それとも、先生と行き過ぎた関係なの?ねぇ!どうなの」

僕は何度も何度も机に打ち付けられて質問に答えることが出来ないが、詩織が喋り終わると、詩織の腕の動きが止まり、詩織自身は「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」と息を荒げていた。

「落ち着いたか?ていうか、なんで詩織が誤解をするんだ?最近変だぞ。詩織はどんな性格なのか、僕は分からなくなったよ」

僕は言う事をとりあえず、言いたいことを言う。

「もともと、こうです!高校までお兄ちゃんが私を避けてきたんでしょ!」

「そうだっけ?」

僕には全く記憶がない。中学の頃何て、僕にはだいぶ昔に感じる。そこまで楽しい日々でもなかった。ずっとボッチ生活を満喫していたのだけは覚えている。

「そうです!」

詩織は僕の胸ぐらをまだ、離さない。

「で、なんで怒っているんだ?」

「怒ってない!ただ、しっ‥‥!」

「し?」

「な、なんでもない!」

と言って、僕の胸ぐらを放して、僕から距離を取った。

僕はくしゃくしゃになったカッターシャツを伸ばし、歪んだネクタイを綺麗に結びなおす。

「とりあえず、飯にしようぜ」

「そうそう、今回のいつもと違うから、速く食べたいんだよ」

とお腹の合唱を始めた二人は、すでに食べる気満々のようだった。

「これ、寿司だね」

詩穂先輩は良いところに食いついてきた。

「はい、今回は寿司です。それと卵焼き。卵焼きはいつもと変わりません。

そして、この寿司。テレビとかで見たことが有るように何個かは大量のワサビが入っています

朝からハラハラ、ドキドキの朝食ですよ」

僕は説明をしていると、声が嬉しそうな感じな声になっていた。

「一五貫もあるのか⁉」

「終わったな」

「六〇貫中、一五貫だから、四分の一の確率で大量のワサビを食べてしまう」

「四分の一って事は、二〇%ね」

「唱ちゃん、計算が間違っているよ。四分の一は二五%ね。数学はしかっりしようね」

「でも、唱たんこの前、満点だったよ!」

みんなが言葉を零す。さっきまで元気だったみんなは冷や汗をだらだら掻き始めた。みんな怯えているのだろう。

「じゃあ、せーので行くぞ」

拓斗先輩の声にみんなが反応して頷く。そして、みんなばらばらの位置の寿司に手を付ける。

僕も寿司を取った。

僕も参加したかったので位置が分からないようにシャッフルしてある。だから、もしかしたら、この寿司はワサビが大量に入っているかもしれない。

「せーのっ!」

拓斗先輩の声で、みんな寿司を口に入れる。

「ん!おいしー!ワサビが多くない」

「私もー!」

「冷や冷やするよ」

「美味しいわ」

「セーフ!」

「僕も大丈夫です」

とみんなが言うが一人、ずっと黙っている人が居る。

「あー、引いちゃったな」

「だ、大丈夫?」

「仁!ドンマイ!」

「お茶入れてくるよ」

とみんなが心配の声を仁先輩に掛けるが、僕はそれより、もっと気になることが有る。それは

「鼻!いてー!あー!いってー!」

と良い反応を見せる仁先輩。

よっし、朝から良い反応を見れて僕は最高に気分がいい。でも、苦しそうだ。

「あー!鼻ー!」

と今も叫ぶ先輩。僕は何も声を掛けることはできなかった。

「お茶です」

と詩織がお茶を仁先輩に渡した。そのついでにみんなの分のお茶も持ってきてくれた。詩織はやっぱり、気が利く。

将来は、信頼された大人になるだろう。楽しみだ。

おっと、今は関係ないことは考えないでおこう。

それより、あの殺人事件、気になることが多すぎる。

女性の部屋からは大麻が発見された。でも、女性が使っていたとは言っていた。それはなら、事故死と警察が見てもいいはず。

もしかしたら、大麻が検出されたのは、最近、それこそ、死ぬ直後だけ飲んだものだけで、事件当日に強制的に飲ませれ、中毒で死んだ。それなら、大麻が犯人のものになる。なら、なぜそんな重要な証拠を女性の部屋に忘れる?自殺と見せかけるためか?

「春樹後輩。食事中だよ」

仁先輩の声で、僕は我に返る。

無意識の世界に入ってしまったみたいだ。その証拠に呼吸が止まっていた。

そのせいで咽た。

無意識って意外と怖いな。気を付けないと。

「そうだぞ後輩君!今は、食べよう!」

とバクバクと口に寿司を放り込む詩穂先輩。

しかも、全てワサビが大量も寿司ではない。奇跡にもほどがある。

ピロン!ブーブー、ピロン!ブーブー

と僕のスマホからメールの着信音とバイブ音と共に聞こえた。

僕はすぐにポケットから、スマホを取り出して、メールを見た。

誰から何てもう、分かっている。

坂本だ。

『みんなにプレゼントウイルスだ』

「「「はぁ⁉」」」「「「「えぇ⁉」」」」

みんなスマホを開いて驚きの声を上げる。ただ、清水の「えぇ⁉」と言う割に顔が無表情だ。なんか、微妙に怖い。

そして、沈黙が流れた。みんなはどんなウイルスかスマホをじっと見る。その沈黙が続いた数秒後

『おっはようございます!皆さん』

「わっ!びっくりした。俺じゃないのかよ」

「なんだ、春樹後輩だけか」

「焦ったー」

とみんなは胸をなでおろしていた。

『いえ、皆さんのスマホにも入れますよ!ほら!』

と僕のスマホの画面を左側に行って、拓斗先輩にスマホに移動したみたいだ。

『私は、太助様によって作られた、AIです。名前は皆さんで決めてくださいと太助様が言っておりました』

「すげぇ、こんなAIは初めて見た」

「さすが、太助後輩だな」

拓斗先輩と仁先輩の二人は坂本に関心をしていた。

「って事は、坂本がずっと実現させたがっていた、自動返信メールなのか?」

僕は拓斗先輩のスマホにAIの女の子に聞いた。

そして、女の子は僕のスマホに戻ってきて、

『いえ、残念ながら、まだそれは。ただ、それを実現させるために私は必要だったんです。私はいろいろなプログラムによって組み込まれています。ですので私の中身はとても複雑なんです。そこから、改良、追加のプログラムを組み込んでやっと、自動返信メールの一歩手前まで来るのです。

それで私は何なのか、そういう疑問が出来るでしょう。

説明すると、私は、修正部専用のAI、共有、情報収集、クラッキング、プログラムを組み立てたり、などなど、簡潔に言うと、皆さんのお手伝いをするのもです。

でも、まで未完成すぎなんで一般の考え、応用した考え、ひねくれた考えはできますが、皆さんのように、ひねくれすぎた考えはできません。ご了承ください』

女の子は頭を下げる。

微妙に僕たちの事を傷つけにきている。

でも、一般の考えは必要だから、ちょうどいい機会だ。

「でも、なんで制服なの?っていうか、故意で喋っていない?」

と詩織が女の子に言う。詩織の言う通り、女の子は岸高の制服を着ていた。

ブラウスにネクタイ、スカートは膝より上で、太ももが少し見える。

これは誰でも恋をしてしまうだろう。しかし、彼女は二次元だ。

どれだけ、美脚で、容姿が良くても、二次元だ。

僕以外の感情のある人に言おう。彼女は二次元だ。決して恋をしてはいけないぞ。

って、恋って何だろう‥‥‥。

「ほう、美脚で容姿も完璧、胸は貧乳気味だな。でも、脱がせてみれば、見た目より大きいだろうな」

「う~ん、いや、陽那花の方が可愛いな。胸も大きい。足は同等ってくらいかな」

と二次元の彼女にいやらしいことを言う二人。僕は呆れる事しかできない。

「二次元に負けるなんて‥‥‥」

まだ、胸の事を気にしている詩織。本当になんで胸ばかり気にするんだ?どうでもいいだろ。

「それより名前どうする!」

言葉は疑問形なのに、なぜか語尾の「?」がないような気がする言い方をする詩穂先輩。修正部のみんなが彼女の名前を考える。

そして、数一〇秒ほど沈黙が流れる。

「坂本智菜(ちな)でどう?可愛いくて、ぴったりと思うのだけど」

「いいね!今日から、智菜っちだよ」

「それいいな。呼びやすいし」

「俺も賛成だ」

「じゃあ、智菜も修正部ね」

「これからよろしくね」

「歓迎するよ!智菜っち!」

『はい!よろしくお願いします!皆さん』

智菜は僕のスマホからみんなに返事をした。

「じゃあ、早速、聞きたいことが有るのだけど」

と仁先輩が智菜に尋ねる。智菜は僕のスマホから先輩のスマホに移動して

「何でしょう」

と聞く。

僕は何の事を聞くのかなんとなく気になった。

事件の事でも聞くのだろうか?他に聞く事なんてあるだろうか?

「今日のパンツ何色?」

だー!ダメだこの先輩。僕が完全に油断して、予想できない事を聞くなんて、だから尊敬と言う文字がたまに薄れるのだよ。

「お、それ気になるねぇ」

と拓斗先輩も興味を持ち始めた。なんで二次元のAIのパンツ何て聞くのだろう。僕には全く理解できない。

『お二人は太助様から聞いていた通り、変態さんですね』

『『グサッ』』

智菜の言葉に心に何かが刺さる心の音が僕の耳には聞こえた。

自分で蒔いた地雷を踏んだようだ。

「Of course you're told」(言われて当然よ)

と当たり前のように、そして、呪う様に言った先生。

珍しく英語で言っている。だいぶ、英語を話せるようになっているようだ。

『仕方がありません。今日は特別ですよ。今日は高橋先生と同じ、ピンクです』

「な⁉な、な、なんでー!なんで知ってるの⁉なんで言うの⁉」

と天罰を食らうかのように先生にAIの言葉が襲い掛かる。

「Such a thing Because I'm telling you」(そんなこと、言うからだよ)

合っているのか間違っているのか微妙な英語を言う拓斗先輩。本人は自信満々のようだった。まあ、通じない事がないから良いか。

「You're very motivated doctor」(先生やる気満々ですね)

意味が違ってくるような気がするがでも、確かな事は、仁先輩は先生をからかっている事だ。

「I won't do with anybody!」(誰ともしませんよ!)

珍しく先生が仁先輩と拓斗先輩と張り合っている。

先生もやるときはちゃんとするんだ。

僕は珍しい先生を見て、関心をした。

「Is it true?」(本当かな?)

「It's true!」(本当です!)

日本人の科学の教師が国際科の生徒と普通科の生徒と張り合っている。

普通科と張り合うのはなんか普通なような気がするが、国際科と張り合うのは結構凄い。僕でもそこまで会話は続かないと思う。

『I promise you to talk.with Dr.Mori」(森先生と話をする約束をしてますよ)

余計な一言を言う智菜。だが、AIなのがすぐに分かる。英単語の並べ方が違う気がする。はっきりとは分からないが、でも、何かピンとこない。

「Don't say anything unnecessary!」(余計な事を言わないで!)

先生の方はしっかりしている。

凄いなAI。確かにウイルスでしかない気がする。スマホのデーターを全て把握されるのは何か嫌なような気がする。

このトークは三〇分以上続くのであった。

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