12話 チームメイトその3、加入!

 「タッグ名、マジでそれで行くんスか・・・?」


 ゲーム内タッグは、タッグ名を書くところがある。今までは『No Name』のままだった。


 「じゃあお前、これよりいい名前を出してみたまえ」


 「さっきから言ってるじゃないッスか。『宵闇切り裂く無音の先駆者』でしょ!かっこいい!」


 「何の名前を付けたんだかわからん。私たちのタッグ名であり、チーム名なんだぞ」


 「てか、さっきからチームチームって、何の話ッスか。」


 「今にわかる」


 今日もサークルフィットの一角。午前十時の誰もいない時間帯、 "Battle Surmount Reality"の筐体の前にいる。

 二人しかいないのに何がチームなんだろう。ああ、店長のおじさんがいた。でもこの人、専門違うゲームらしいよ?


 「言っとくけど僕、ゲーム内で忍者のコスプレしてるからって、分身の術とか使えないッスよ」


 「分かっとるわ。まあ待っててくれって。それよりも私達には時間が無い。無駄口叩いてる間に1、2戦やるぞ」


 「わかってるッス!」


 レートは日々上がっており、対戦相手は見る見る高いレベルになってきている。しかし、気合の入った須賀さんの動きは、そんなものを軽く上回っている。

 一発目の矢は敵の頭に吸い込まれていく。どれだけ敵が強かろうが、人数差ができてしまえば負ける道理は無い。タッグゲームは人数差が生まれた場合、勝率が10パーセントを切るシビアなゲームだ。遠距離武器の真骨頂が、そこにはあった。

 結局、僕が翻弄する間に二人目にも放たれた矢が貫いていった。


 「いやー、今日のラッキーショット当たりましたねー! 今日は何かいいことあるかもッスよ!」


 「ラッキーではない。実力なんだなあ、これが。丁度いい、時間のようだ。ヘッドセット外してみろ」


 まだ1戦しかやってないのに。言われた通りヘッドセットを取り外すと、客のいなかったフロアに会話が聞こえる。


 「うーん、須賀さんは相変わらずだよなー。理不尽?非情? 近接戦闘こそ、このゲームの華なのになあ」


 「私は須賀さんの戦闘スタイル、好きですよ。やっぱりゲームなんですから、相手のやりたいことやらせないってのは綺麗な勝ち方ですよ」


 振り返ると、相変わらず机に書類を並べている遠野店長。そして、会話相手の・・・誰だろう。ツンツンとした髪型にサングラス。あまりお友達になりたくないタイプかもしれない。


 「あ、こっち向いたな。始めまして、お嬢ちゃん。俺はシャイン・ラヴ。よろしくー」


 「あ、はい。よろしくッス。YUNOKAッス」


 「いやあ、スピードはめっちゃいいんだけどねー。あとは丁寧さね、丁寧さ。もっとちゃんと相手の動き見たほうがいいよ。」


 「あ、ええ?」


 「平井、あまり詰め寄るな。タダでさえ怖いんだから、お前は」


 「須賀は相変わらず冷たいなー。弓矢しか使わないゲームセンスも冷たい! 凍り付いている!」

 

 「須賀さん。この人誰ッスか?」


 「こいつは私が呼んだ。チームメイトその3だ。優しくしてやってくれ」


 「ちょっとちょっと、その紹介は無いでしょうよ! GaCC、テッペン目指すんだって?聞いたよ。俺はアナリストとして、お前たちを引っ張って行くから、よろしく!」


 「そうそう、そんなんだったな。こいつがチームの頭脳として、バリバリ働いてくれるそうだから」


 「須賀さん、そんなツテあったんスか?」


 「私を誰だと思っている。只の無職だ」


 「こいつとの付き合い長いんだぜ。学生のころから人間味無いやつだとは思ってたけど、彼女ができたなんて、おじさん感激だわー」


 「彼女ッス! よろしくッス!」


 「戯言はその辺にして。とりあえず、頼んでおいた情報収集の結果を頼む」


 「早速人使い荒いなあ。まあいい。俺の優秀さを知らしめるいい機会だぜ。耳の穴かっぽじってよく聞きやがれよ」

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