第1話 この幸薄そうな娘とパーティーを!
「なるほど。時間移動の神器を使ったのですね」
「へぇ~。すごい魔力の塊の宝石ねー」
「間違って封印するなよ」
「まったくカズマは私を何だと思ってるの?そんなミスするはずないじゃない」
アクアがまじまじと宝石みたいな神器を見ている。
というか、あれ、どう見てもソウルジェムだろ。
日本からこっちに来たまどマギのファンが頼んだチートアイテムに違いない。
「それにしても、ゆんゆんがリッチーになるなんて未だに信じられません」
めぐみんが不思議そうに聞く。
そりゃそうだ、俺だって未だに信じられないしな。
あのめぐみんと同じ紅魔族で、同級生のゆんゆんがリッチーになるなんて……。
「うん。色々あってウィズさんやバニルさんと友達になって、それで……その……友達と一緒に生きていたいなーって思って」
うん、わかってたけど、ゆんゆんちょろすぎ。
ダクネスは苦笑いしながら問いかけてきた。
「そもそも、リッチーというものは簡単になれるものなのか?」
「そうですね。そもそもリッチーは、魔法を極めた人が行なう禁断の儀式で成れる存在です。ゆんゆんがなれるなんて信じられませんね」
「えぇ!?私、紅魔族随一の魔法の使い手めぐみんのライバルだよね!?随一の魔法の使い手のライバルなんだから、それくらいなれるよ!」
「『自称』ライバルです。『自称』を忘れないでください」
「そんなぁ!?」
そんな二人を視界にいれながら考えていた。
こいつなんでわざわざ未来から来たんだ?
でも、それを聞くとまた面倒なことになりそうだしな……。
「ねえねえ、なんで未来から来たの?旅行?」
アクアが意気揚々として聞く。
あぁ……、なに?こいつ俺の心が読めるの?というか旅行のわけねーだろうが!
「はい。最近時間旅行をやってまして。その長く生きると暇で……」
「いやいやいやいや、旅行とかダメだろ!時間旅行って知っているか!?
簡単に過去とか変えれるんだぞ!タイムパラドックスって知ってるか!?」
初めて俺の方を向いたゆんゆんが嬉しそうに指を立てて言い出した。
「その点は大丈夫です。私が来た時点で、この過去は別の平行世界になってますので」
なんでこいつ嬉しそうなの?ドヤ顔なの?頬を微妙に染めてるの?
そんな様子を見ていためぐみんが不機嫌そうに。
「おい、未来で何があったか知らないが、私の男に色目を使うのは止めて貰おうか?」
「なっ!?い、いつのまに、カズマはめぐみんの男に!?」
「へぇ~。知らない間にそんな関係になっていたのね。いいわ。女神の私が祝福してあげるわよ」
ダクネスが驚愕し、アクアが天に向かってお祈りを始めた。
慌てた俺は。
「ち、ちちち違うぞ!まだ俺はお前の男になったつもりじゃ」
「カズマ!?『まだ』とはどういうことだ!?」
し、しまった!心にもないことを……。
い、いや、思ってるし、めぐみんルートに入っている以上、そういう関係になるのを夢見ているというか。
って、違う違う!そういう事じゃない!ああ!なんでこんな展開に!
「ふふっ。あはははははは」
ゆんゆんが急に笑い出した。
あ、あれ?そんな笑い方をする子……だったかな?といかちょっぴり泣いてるし。
ゆんゆんの涙に気付いためぐみんが心配そうに近寄る。
「ゆんゆん?どうしたのですか?お腹が痛いのですか?あれほど拾い食いをするなと散々注意していたというのに」
「違うよ!?それは私がめぐみんに言ってたよね!?」
深呼吸して落ち着いたゆんゆんがめぐみんをじっと見つめて。
「その久々で、本当に懐かしくて……。だから、ごめんね。今日だけは泣くのも許してね。めぐみん」
「え?あなたいつも泣いてるじゃないですか?『今日だけ』ってそんな見栄を張らなくても」
「泣いてないよ!あれ?泣いてないよね!私!!」
涙を拭うゆんゆんを見ながら俺は考えていた。
『本当に懐かしくて』……か。
ゆんゆんはどれくらい生きたんだろうか?
ウィズとバニルが友達と言っていたけど、ウィズとバニルとアクアぐらいしか長生きして友達になれる人がいなかったのかもな……。
それにしても長く生きるか……。どんだけ大変なんだろうな……。周りの知っている人はどんどんいなくなっていくし……。
きっとゆんゆんは、俺が想像する以上の大変な日々を送って生きてきたんだろう。
「では、今晩はご馳走にしましょう。まだ滞在するのでしょう?」
たぶん、俺と同じ事を考えていたんだろう。めぐみんがそんな事を言い出した。
こいつ、なんだかんだ友達想いだよな。
「ああ、そうしよう。せっかく来てくれたんだ。ご馳走にしようぜ」
せっかく遊びに来てくれたんだ。これくらいはしてやらないとな!
「そうね。私はとっておきのお酒をだすわ」
「ああ、私も何かおいしいものを用意するとしよう」
「ありがとう。めぐみんにカズマさん、アクアさん、ダクネスさん。本当にありがとうございます。
うぅ……今度は本当に泣きそう。それにめぐみんがご馳走してくれるなんて、実をいうと初めてで……。
いつも私が奢っていたから」
うんうん、いい話だなーと思っていると、めぐみんが不思議そうに。
「え?何を言ってるのです?ご馳走を用意するのはあなたでしょ?」
俺は紅魔族随一の魔法使いの頭を思いっきり叩いてやった。
* * *
「す、すごい!」
ゆんゆんが喜びの声を上げた。
今晩のメニューは最近宴会の時の定番となってきた霜降り赤ガニだ。
「みんなからの奢りよ!たくさん食べてよね!」
「アクア!お前は1エリスも出してないだろうが!」
「ふふふふふ。甘いわねカズマ!私は今からとっておきの宴会芸を披露してあげる!」
アクアが意気揚々と暖炉の前に飛び出した。
「さあ、変哲もないただの箱ですが、なんと中には」
「そういえば昔から思っていたんですが、アクアさんの宴会芸の種を教えてほしくて」
「そ、そんな!未来とはいえ、ゆんゆんがアクアの宴会芸を見る機会が来るなんて……」
「私もたまには一緒にご飯食べたりしてたんだよ!?」
と、嬉しそうに喋っていたゆんゆんの笑顔が止まった。
いや、全員の空気が止まった。
「じゃじゃーん。なんと初心者殺しが現れました♪」
このトラブルメイカーのせいで!!!!
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