第165話 ようやく全員

次に宗徳の元へと集まって来たモノに、沙耶、徹、征哉の目はキョロキョロと落ち着かない様子。


その内グルグル回りそうで怖い。しかし、紹介しないわけにはいかない。早く紹介してくれと、徨流達が宗徳と寿子の前に一列で並んでいたのだ。


よって、宗徳と寿子は、息子夫婦よりも徨流達を取った。


「それじゃあ、紹介するぞ。先ず徨流。本来はアレだ。龍神様ってやつ。普段はこうして小さくなってる。大きくなったら、この……コンテナを」

「「「っ!!」」」


宗徳は、分かりやすいようにと亜空間から取り出したのはコンテナハウス。飛べるのと同じで、魔力を使うことに慣れた宗徳達は、こちらでも普通にコレらを使うことができる。


目を丸くする三人には気付かず、宗徳は腕に巻き付いた徨流を撫でるのに忙しかった。


「引っ掛けて飛べるくらいの大きさになる」


寿子も、瞬きも忘れた三人の方を見ていなかった。コンテナハウスを見て、そう言えばと思い出したことがあったのだ。


「あなた。このままコンテナハウスは出しておいてください。中の掃除とか、模様替えとかしたかったんですよ」

「そうか。分かった」


そして、次だ。


「次が白欐と黒欐だ。色でどっちかは分かるよなっ」


そこでようやく三人を見た。


「おい。聞いてるか?」


一番初めに正気付いたのは沙耶だ。


「え、あ、す、すみません。えっと、そのふくろうさんですね。白い方がハクレイさんで、黒い方がコクレイさん」


沙耶は認識が遅かっただけで、聞いてはいたようだ。何より、架空の存在であった『龍』よりも、テレビや写真ででも見た事のあるふくろうの方が脳に優しい。


しかし、この梟もただの梟ではない。


「こいつらは、異世界の神だ。土地神みたいなものだな。大陸一つを守ってたんだが、人といざこざがあってな。で、まあ、一緒に居ることになった」

《くるる〜♪》

《ぐるっ》


挨拶というように、二匹は翼を広げて見せていた。


ここでも、沙耶が代表で呟く。


「……神様……」


今一度、宗徳の腕に巻き付く徨流にも目を向け、そっちも龍神様だし、神様だよねと自分の中で整理しているようだ。


「そんで、コイツ」

《みゅあ〜》


フワリと浮き上がり、宙を駆けてくる白い虎。丸くなると毛玉にしか見えない。産毛がふわふわしていて、撫でると気持ちがいい。


宗徳が手を広げてやると、そこに飛び込んでくる。


《みゅあっ》

「よしよし。コイツが琥翔ことだ。魔獣だが、賢くて人は食わんから心配ない。まだネコの子と変わらんしな」

《みゅ〜》


抱っこ好きな甘えん坊だ。


では次にと、場を整えているバトラーとメイドへ宗徳が目を向ける。寿子も気付いたようだ。


「次はこの家の執事さんとメイドさんね。家の中で迷子になったり、困ったことがあったら、名前を呼べば気付いてくれるから安心よ」


寿子がそう伝えると、二人が手を止めて近付いてくる。そして、先ずバトラーが胸に手を当てて礼をする。


「バトラーの桂樢けいとと申します。ご用命の際はいつでもお呼びください」


次にメイドが両手を腹の辺りで重ねて、優雅に一礼する。


「メイドの藜蘭れいかと申します。気になる事がございましたら、お気軽にお尋ねください」


バトラー、メイドと呼んでいた二人だが、是非とも名が欲しいとのことで、宗徳と寿子で付けた。



顔にはあまり出ないが、とても気に入っているらしい。


「以上が、俺らの家族だ」

「「「……そうですか……」」」


三人には、理解するのに時間がかかりそうだって。


「とりあえず、お茶にしましょう」


そうして甘い物でも食べながら、頭を整理してもらう事にした。


まだとっておきの魔女様がいるとは言えない雰囲気だった。








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