第164話 子ども達の紹介

子ども達は、メイドと共に、庭でお茶会の用意をしていた。


こちらでは、こちらの服をということで、子ども達はそれぞれ気に入った現代服を着ている。


この屋敷の外から、誰か覗いたとしても、招いていない者には、その姿が見えなくなっている。幻惑の術が張り巡らされており、更に、興味を失くすようにもなっているらしい。


美しく、珍しい花々が咲いている庭の姿も見えず、寂れて蔦草まみれになった廃墟に近いものに見えるという。


よって、子ども達は耳や尻尾を隠すことなく、伸び伸びと過ごせていた。


空を飛べる徨流や白欐、黒欐、琥翔は、結界をきちんと認識できるため、外に出ないよう言い聞かせている。


高い位置までしっかり範囲を確保してあるため、特に不自由はないようだ。


そんな彼らが居る庭にやって来た一同。未だ、息子夫婦と長男は受け止めきれていないらしい。


しかし、だからといって、止まる宗徳ではない。そのうち慣れるだろうと寿子も思っている。


「それじゃあ、紹介するぞ。いいな」

「「「っ、は、はい……」」」

「「は〜い」」


戸惑う三人とは違い、律紀と治季は嬉しそうに返事をする。これに合わせることにした。


「よし。先ずは、廉哉の下、次男になった悠遠ゆうえんだ」

「ゆうえんです。七さいになりました。よろしくおねがいします」


悠遠はしっかり者で、灰色の狼の獣人だ。


「次、三男の石火せっかだ」

「セッカ、六さい!」


石火は真っ白な猫の獣人だ。ちょっとおっちょこちょいな男の子だった。だが、明るくて笑顔の可愛い子だ。


次が黒い熊の獣人。


「長女の須臾しゅゆ

「シュユ。もうすぐ六さ〜い」


この子は、少しいつも眠そうだ。タレ目な所が可愛い女の子だった。ちょっと食いしん坊なところがある。


「次が次女の刹那せつな

「っ、セツナ……です……もうすぐ五さい……」


恥ずかしがり屋で怖がりな所のある狐の獣人だった。きっと将来は切れ長の目の美人さんだろう。もう少し自分に自信を持ってくれればと思う。


「最後が三女の久遠くおんだ」

「くおん、えっと……さんしゃいっ」


元気に宣言。三を指で人差し指、中指、それと親指で作って示す。よく出来たと宗徳は小さな頭を撫でた。


「おっ、よく言えたな。3も上手だ」

「えへへ」


褒められたのが嬉しいと、黒い尻尾をフリフリしながら宗徳の足に抱きついていた。彼女は、次男の悠遠の実の妹で、黒い狼の獣人だった。


「廉哉君を入れた六人が、私達の新しい子ども達だから、よろしくね。徹はもう独り立ちしてるし、歳も離れてるから気にすると思って。だから、兄弟としては数えないけどいいわよね?」

「え……あ、いや……え?」


徹が大混乱状態だった。宗徳と寿子の子どもということは、徹の弟や妹ということだ。しかし、自分の子どもとしても幼い子達を弟妹と思うのは難しいだろう。


だから、あえて宗徳と寿子は徹を切り離して考えた。別に意地悪をしているわけではない。あくまでも、徹や子ども達のためだ。


廉哉や悠遠達からしても、徹を兄とは呼びにくいだろう。


徹の子どもの征哉や律紀を兄や姉と呼ぶのではないかと思う。


「次行って良いか?」

「「「……はい……」」」


律紀と治季は、既に顔見知りということもあり、子ども達の方へ行って、一緒にお皿を並べたりしている。


次は自分たちの番だと、徨流達が紹介を待っているので、三人の戸惑いを感じながらも、宗徳は続けようと咳払いをするのだった。








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