第158話 とんでもない家でした

宗徳達は広い屋敷を案内されて驚いていた。


廉哉や子ども達も圧倒されている。


「外から見ても、ホテルかなって思えるくらい大きかったんですけど……本当に広過ぎませんか?」

「まよいそう……」


悠遠が冷静に、その心配を指摘した。すると、バトラーが答える。


「ご心配には及びません。お呼びいただければ、すぐに私かメイドのどちらかが駆け付けますので」

「いつでもお呼びください」

「あ、うん……ならだいじょうぶかな」


本当だろうかという少しの疑いに首を傾げていた。


だが、そこでバトラーが察して笑顔で補足する。


「もちろん不安はあるでしょう。その場合利用できるものがございます」


笑顔でバトラーは壁の方を指差した。


「お気付きかもしれませんが、屋敷の至る所に、ああした水晶があります」

「電球かとも思ったが、違うのか」


壁にある炉台とは別に、薄紫の野球のボールより二回りほど大きいサイズの水晶が掛けられていた。


その下にある壁が一面だけ黒いのも気になった。統一された柄でも無さそうだ。他は白で、時折黒が混ざるという感じだった。


「先程、屋敷に入る所で、水晶に魔力登録をいたしました」


宗徳だけでなく、子ども達も全員、屋敷に入ってすぐにあった水晶に触れていた。


「アレは、この屋敷の住民のみ、我々立ち会いの下に登録するものです。それにより、屋敷内で転移が使えます」

「転移?」

「はい。行きたい所をこの水晶の下の黒い壁に手を突いて、口にするか、思い浮かべてください。そうですね……先程ご案内した食堂にしましょう。食堂と小さな声でも大丈夫です。言ってみてください」


どうぞと、悠遠に手を差し出し、その壁の前に連れて行く。


宗徳と寿子を振り返る悠遠に、二人は頷いた。頷き返した悠遠は、小さく呟く。


「『食堂』……っ」


すると、丁度悠遠の顔がある辺りに、食堂の様子が楕円形の画面が現れて映し出された。


「そのまま、進んでください」

「え? あっ」

「おおっ」

「まあっ」


壁に、悠遠の手が入った。そして、そのまま壁に体も吸い込まれていく。


「先に私が一緒に参りますので、ご主人様方もどうぞ同じようにしていらしてください」


そして、バトラーも壁の中に消えた。


残ったメイドが促す。


「どうぞ」

「ああ。先に俺が行く」


宗徳が悠遠と同じように食堂と呟くと、今度は宗徳の目線に合った場所にその情景が浮かぶ。そこには、バトラーと悠遠が居た。


どうやら、向こう側の映像らしい。


手をグッと突くと、そのまま吸い込まれるように進んだ。


すると、そこは間違いなく映像で見えていた食堂だった。


「本当にさっきの食堂だ……」

「ご主人様。後ろがつかえてしまいますので、こちらに」

「お、おお。なるほど。水晶がここにもあるのか。逆も出来るってことだな?」

「はい。ですので、この水晶のある壁の前には、物は置かないことになっています」

「大事だな。了解した」


そうして、全員が食堂に転移した。


「このように、屋敷内は水晶のある場所で移動できます。水晶が赤くなっている時は、この場所に転移される可能性がある時なので、近付かないようお気を付けください」

「「「「「は〜い」」」」」

「分かりました」

「おう」

「分かるのは有り難いわね」


そうして、また屋敷内を歩き、案内されたのは温室だった。庭もよく見える。鳥籠のような形をした可愛らしい温室。その中央に、なぜか扉があった。


それも、五つ。上から見れば五角形になっているだろう。扉の色がそれぞれ違い、赤、白、黒、青、緑だ。


その扉の前にバトラーとメイドが立ち、同時に口を開いた。


「「こちらは、外と繋げられる扉でございます」」

「外と?」

「はい。対になりますこの水晶を設置した扉に繋がります」

「外に別の家をお持ちの場合、その家に繋げることが出来るのです」


それが可能と聞いた宗徳は、寿子と手分けして自宅とライトクエストに飛んで行った。ライトクエストで借りられる部屋があれば、そこを使えば良い。


宗徳がライトクエストの方に飛んだのだが、移動の最中に魔女の一人に連絡すると、同じように家と繋がる扉を持っている者もいるとのことで、専用の部屋を用意してくれることになった。


そうして、宗徳と寿子が水晶で繋げて無事屋敷に転移すると、そこに客が待っていたのだ。


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読んでくださりありがとうございます◎

二週空きます。

よろしくお願いします!

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