第153話 間違いなく才能あり

イザリを先頭にし、子ども達は魔女達の箒や杖に乗せてもらって、ライトクエストのビルを飛び出す。


文字『通り飛び出す』だ。


飛行機訓練をした四十階には、魔女専用の出入り口があり、そこから獣人の子ども達も連れて外へと飛び出した。


「ゆっくり行く。飛行ルートを覚えておくといい」


イザリが少し振り向きながら宗徳と寿子へ伝える。


ライトクエストのビルがあるのは、多くのビルが立ち並ぶオフィス街の中。当然、ビルの高さも同じくらいで、空を飛んでいても、木立の中を行くようなものだ。


だから、飛行ルートを覚えると言われて、納得する。だが、宗徳と寿子は、とても気になることがあった。よって、はっきりとした返事ができなかった。


「はい……」

「わかりました……」

「……どうした? 何か不可解なことでもあったか」


いつもの二人ならば、もっとはっきりと返事をするはずだ。魔女達も、付き合った時間は短いが、二人のことを分かっているため、不思議そうだった。


「なあに? 聞きたいことあるなら言って?」

「そうそう。気になったこととか、あれば聞いてくれていいよ?」


これが宗徳と寿子でなければ、魔女達は何か話したそうな素振りに気付いたとしても、気付かなかったふりで上手く誤魔化しているだろう。質問など絶対に受け付けない。


けれど、宗徳と寿子には違う。


「私たちは先輩だからね〜」

「何でも聞いて〜」


新たな魔女仲間、魔道士であっても、本来はこんな親切にはしない。それだけ、宗徳と寿子が気に入っていた。


不安や分からないことがあれば、誰よりも先に教えてあげたい。あわよくば、尊敬されて親しくもなりたいと思っている。


「あ、すんません。そうですね……少し聞きたいことが」

「私も……恐らくこの人と同じことですけど……」


二人で目配せ合いながら、頷いた。


魔女達はイザリも含めて、その言葉を待つ。


そして、意を決したように同時に口を開いた。


「「この線を辿ればいいんですか?」」

「「「「「……」」」」」

「……」


最初、何を言っているのか分からなかったのうだ。イザリも絶句している。しかし、すぐにそれを理解した彼女たちは、宗徳と寿子に詰め寄って行く。


子ども達が驚いているのにも気付かない。


「っ、もしかして……魔力線が視えるの……?」

「「魔力線?」」


恐る恐る、まさかとの思いで魔女の一人が問いかけるが、『魔力線』というものが宗徳と寿子にはわからない。


「この青とか赤とかの光ってる線のことっすか?」

「これが飛行ルートの線なのかなと思ったのですけど……?」

「「「「「……視えてる……っ」」」」」


そんな本来は視えないものなのかと二人は顔を見合わせる。


「視えているな……私にも調子が良い時にしか視えぬのだが……」


イザリも驚いていた。


「これは何なんです?」


宗徳の問いかけに、イザリが答えた。


「……飛行ルートで合っている。私達魔女が飛んできた道には、魔力が微かに残ると言われている。それが線となっているのだ。風の流れが整い、一本の線になるのだが……視える者は少ない」


それは、魔力を敏感に感じ取れるということ。風に紛れた魔力をも感じ取れるということだ。


「……本当に……素晴らしい才能だ……二人揃ってというのがまた……」


いつも表情を変えないイザリまでも、目を丸くしていた。それほどのことなのだ。


「これはやはり……師匠に早く会わせなくてはな……」


そう呟きながら、治季の家の上空までやって来たのだ。


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