第149話 再会を約束して

宗徳と寿子で空中での追いかけっこを楽しんだ後、ユマ達に別れを告げるために、城跡地に程近い広場へやって来た。


「元の世界にお帰りになるのですね……いえ、勇者様方も元の世界に帰れるのは、喜ばしいことです。それに……我々は誘拐犯でしかありませんので……」


イザリや魔女達は、廉哉達とコンテナハウスの中で、優雅にお茶をしている。


今後はもう召喚術は使えないよう、資料も焼き、細かな繋がりやすくなる場所の調整も行ったらしい。よって、もし資料が残っていたとしても、以前のようにはいかない。


ライトクエストでも管理する世界の一つとなっているため、次にそのような動きがあれば、分かるように警報装置のようなものも用意されていた。


可能とするのは、神のみ。だが、召喚術は世界を壊す恐れのあるものだ。理性ある神はそれを望まない。もちろん白欐や黒欐もだ。


「もう頭下げてくれただろ。それで、あいつらも許した。なら、いいさ。ユマさんや宰相さんがもう気に病むことじゃねえよ」

「……ありがとうございます」

「この度のことも、感謝しております」


二人は改めて頭を下げた。


寿子と苦笑して顔を見合わせる。そして、寿子はユマの手を取った。


「復興は大変だと思うわ。けど、諦めないで。また私たちも様子を見に来るわ。単独飛行も修得したから、すぐよ!」

「……」


宗徳の目がものすごく泳いだ。確かに今の寿子ならば、大陸までひとっ飛びで来られるだろう。空はもう寿子のものだと言ってしまってもいいほどだ。


「ヒサコさん……っ、ありがとうございますっ……」


ユマは、ただの冗談だと思ったようだ。見た目は寿子の方が若いのだが、ユマは姉か母親のように寿子を慕い、信頼している。


「ユマさんなら、そうやって、誰にでも誠意を見せて付き合っていくことができる。だから、そういう国にしていってほしいわ。そうしたら、きっと手を貸してくれる人たちもたくさんいるから」


ユマと宰相には、獣人族のような魔物寄りの魔人族と命名した者達が暮らすダンジョンのことを話しておいた。


あそこでは、神である白欐、黒欐の加護が効いており、作物も無限に生えてくるようなことになっていた。


だから、彼らにお願いすれば、食べ物も分けてもらえる。もちろん、自分達だけでやって行く努力は必要だ。


「まだあんたらは神に許されたわけじゃねえ。過去のやつらが悪いってのは分かってるが、その考えのまま来ちまった。意識は変えなきゃなんねえ」


そういう時代だったのだと言えるならまだ良い。その時代によって認識が違うのは仕方のないことだ。そうしなければ、生きていけなかったのだから。だが、そこから何も考えず、反省すべきことを指摘されても反省できないのは問題だ。


神は明確に反省を促してきていた。それなのに、人々は神が悪いとしたのだ。これによって、余計に拗れた。


先人の行いを肯定も否定もせずに、そして、良くしようとする努力もしなかった。ただ、乏しいことを恨んでいただけ。それでは何もできない。


「だがまあ、漠然と見たこともない『獣人族』ってのを避けてきただけで、実際は平気だったろ?」

「あ……はい。お二人のお子さん達も、可愛らしいと、町の人たちも言っていました。少し姿が違うだけ。話も出来るし、考えも持っている……追い出すほど避ける理由はないと思います」

「そう。それでいいんだよ。見た目の違いってのは、避けやすいけど、追い出すほどじゃねえ。人を食べるわけでもねえんだ。理由もなく襲うこともないなら、一緒にやっていけるだろ」

「はい」


実は、イザリ達に言われて白欐と黒欐の力で、ダンジョンとレヴィア達の居る海底の土地とを繋げる扉をダンジョン内に作った。


よって、会話が出来る者も用意している。あのダンジョンから、ゆっくりと交流を持ってもらうことになるだろう。


「交渉担当もあっちには用意してもらったからよ。食べ物とか、きちんと交渉すればいい。それに、あいつらの方が魔術も達者だからな。色々教わるのもいいかもしれん。くれぐれも仲良くな」

「自分達だけ得しようとか考えちゃダメよ?」

「もちろんです。争おうなどと考えた者は、私が、必ず沈めます!」

「……鎮めるだよな? なんか、意味合い違うように感じたのは気のせいだよな?」


今は大人しく王女として指示に回っているユマだが、彼女は十数年、一人で町の外で生きてきた実力者だ。武力行使に出たとしても勝てそうだ。


「騎士達も躾けておりますので」

「鍛えるじゃねえの? 躾ける?」

「躾けるのも必要よね。ええ。おかしくはないわ」


寿子もうんうんと頷いたので、宗徳も納得する方で落ち着いておく。


「そ、そうか……まあ、いいや。頑張れよ」

「はい!」


そうして激励もしながら、宗徳達は王都を飛び立った。


同じようにアルマを教会に預けて町の人々にまた来るからと、そこでも別れを告げ、大陸を後にした。


当然のように白欐と黒欐はついて来ており、新たに仲間になった白い魔獣の子どもも連れて、竜守城へと帰還する。


そして、ようやく律紀達も地球へと帰ることになったのだ。


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