第077話 頼りになる孫達です
宗徳は、自宅へ向かう寿子と廉哉と別れ、少しブラブラとした後ケイタイを確認する。
美希鷹と治季からメールが入っていた。二人とも了承を伝えるものだ。
「鷹とは……駅の近くの喫茶店で待ち合わせるか」
善治の家の最寄りの駅で待ち合わせるとメールを送っておく。
良い感じに分かりやすい喫茶店を見つけたので、そこに入って待つことにした。
改めて考えると、一人で喫茶店に入るのは久しぶりだ。コーヒーを片手に、新聞を読む様はしっくりときて落ち着いている。年齢よりも若々しさが滲み出るようになった今、とても目を引いた。
美希鷹が見つけやすいようにと窓際に座ったために、外からの視線を知らず集めている。
宗徳も無意識だが、あちら側にいる時の若い者としての仕草が自然に出ており、少しヤンチャな印象と、年齢相応の色気がなんとも言えない絶妙な雰囲気を醸し出していた。
お陰で、客入りが良くなり、長居をしていることに迷惑顔をするはずの店側もそんな素振りを見せることなく、寧ろごゆっくりどうぞと豆菓子が追加されていた。
昼食の時間が遅かったこともあり、一時間を少し超えるくらいで美希鷹が現れる。
「お待たせ、
「おう、なんだ、律紀も一緒か」
美希鷹の後ろには、孫の律紀がいた。
「おじいちゃんもおばあちゃんも、なんで鷹君の方に連絡するかな……」
「ん? おお、そういえばそうだな」
「でしょ?」
美希鷹からメールが来て律紀は不満だったらしい。なぜ孫の自分ではなく、真っ先に美希鷹に頼むのかと。
しかし、やはり仕事の一環なのでこれは仕方ないのではないかと思ってしまう。
「ははっ、それにしても、徳さん目立ってたね」
「なんのことだ?」
「おじいちゃん……今日は特に若い格好してるじゃん」
「おかしいか? レンに見立ててもらったんだが」
ライトクエストを出る前、廉哉の服をもう少し買っておこうということになり、会社の売店で買うついでに、どうせならと寿子と宗徳もちょっと冒険してみたのだ。
向こうでの格好もあり、普通の年齢相応の服装に少し違和感が出ていたというのもある。
そこで廉哉に見立ててもらったのだ。会社の売店だというのに、服屋並みの品揃えで、選ぶのが楽しかったらしく、始終廉哉は興奮していた。
「全然変じゃないのが変」
真顔で言うのが孫娘。
「めっちゃカッケぇっ」
ヒーローを見るようなキラキラした目で拳を握りしめて言うのが美希鷹だ。
そして、二人揃って次の言葉を発した。
「「で、レンって誰?」」
「……」
一つも聞き逃さないとは、やるなと感心してしまった。
◆ ◆ ◆
喫茶店でとりあえずこれから向かう善治の家について話しておく。
他の客達は、なぜか遠巻きにしているので話は聞こえないはずだ。しかし、やはり気になるからと、美希鷹の頭の上、認識阻害の術をかけているらしいキュリアートが軽く遮音の術を張ってくれたらしい。
「それならさ、昔に善治さんに預けてた物ってことにしたらいいんじゃないのか?」
「なるほど」
クーヴェラルに、一応湖があった場所をもう一度見てくるようにとも言われている。家を訪ねるのは決定事項だ。
けれど、ただ行ったところで説明は難しい。こうして、治季と年の近い二人が一緒であっても不審に思われてしまうだろう。
「連絡先わかるんだよね? なら、電話してちゃんと知り合い感出しておいた方がいいかも。あっちで会ってはじめましてだと、親が居た時に気まずいよ」
現役の学生、現代の家庭事情を理解しているだけあって、親がどう思うかというのを律紀はよくわかっているようだ。
「そんじゃ、電話頼めるか?」
「うん。貸して」
そう言って、律紀が電話をするために宗徳からケイタイ電話を預かって喫茶店を出て行った。
「律紀を連れてきて正解だったろ?」
「確かに。ってかお前ら、デートどうだった?」
「っ、デートって……まぁ、デートだけど……久しぶりにすっげぇ楽しかった……っ」
「ほぉ、そりゃぁ良かった」
ひょっこり顔を出したキュリアートも、宗徳と美希鷹には見えるので、ちょっと自慢げに、ふんと頷いた。満足の行くものだったらしい。
「律紀の両親にも会ったんだけど、徳さんの血引いてんのって親父さんの方だよな? なんか母親の方が寿ちゃんに似てたんだけど」
「ああ、おれも常々思ってた。寿子に似てんだよな……」
「なんていうか、優しいけど、ちょい強引なところもあって……敵わないって感じが……」
「おう……尻に敷かれるんだよ……勝てねぇんだわ……その方が家庭は上手く回るって言うんだけどな……」
「そういうもんなんだ……」
律紀もそうなるんかなと、口には出さないまでも二人は同時に考えてしまった。
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読んでくださりありがとうございます◎
気持ちも若くなってきています。
また明日です。
よろしくお願いします◎
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