Nineth:

「おねえちゃん」


 いつも以上にたくさん甘えてきた妹が、眠たそうな目のまま抱きついてくる。軋んだベッドの音が、まるで彼女の身体があげる悲鳴のようだ。


「どうしたの?」


 柔らかい肌。


「おねえちゃんはかいしゃでなかのいいひといるの?」

「うーん。仲のいいわけじゃないけど、よく話す同僚はいるかな」

「そうなの?」


 同期の西口真緒。馴れ馴れしいタイプであまり得意ではないが、なんだかんだ憎めない素直な性格をしている。


「でも私は翔以外興味ないからね」

「わたしもおねえちゃんだけ」


 だいすきって言いながら、本日何度目だろうというキスをしてくる。


「そんなことしたらまたしたくなるでしょ」


 この子はずるい。こんなにも可愛くて、こんなにも儚い。


「してほしい。いっぱい」

「……」

「おねえちゃん、だいすき」


 ずっとずっといつまでも一緒に――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【百合】innocence 汐 ユウ @u_ushio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ